子猫って木に上って降りれなくなるよね?
ニャ。(今日もいい天気だ。)
窓から入ってくる太陽のポカポカ加減に寝転んでいると、
ーーガシッ!
「ペケりん、お外行こ!」
首根っこ掴まれて、少女に拉致られた。
ニャー!(オカアサマ~!)
俺の声に同じく寝転んでいた母親は薄目を開けて、
ナゴ。(逝ってこい)
ニャッ!(ごむたいな!)
そして、手足をプラプラさせたまま外へ連れていかれた。せめて、抱っこしろよ!
ニャー。(よいっす)
耳と耳の間から“川”っていう感じの黒い線が額にある灰色子猫が前足を上げる。
ニャー?(どこかで会いましたか?)
ニャガー!(そう言う頭はかち割ってやる!)
助走を着けて飛びかかる子猫。
ニャッ。(あまい)
後方に避け、落ちてきた所を両前足で押さえつける。感情も行動も短絡な奴はチョロい。そんでもって、耳をカプカプカプカプ。
ニャー!(耳は止めて~!)
さらにカプカプ。アーンド、ナメナメ。
ニャガー!(止めろ!)
反転しての猫パンチ、猫キックいただきました。
ニャー。ニャ?(良いパンチもってんじゃねえか。俺と世界を目指さないか?)
フガー!(いつもいつも、訳のわからん事をー!)
毛を逆立てて怒っとります。
ニャ。(カウルちゃん)
ニャ?(何?)
ニャー?(ここで何すんの?)
可愛らしく小首をかしげる。
ニャ。(知らん。しいていえば、日向ぼっこ)
そうだろうな。お嬢さん達はあっちでガールズトークに花咲かせてるし。
ニャー?(なら、その辺の木陰で眠っててもOK?)
ニャ。(OK)
トコトコと歩くカウルの短い尻尾がピョコピョコと動く。そんなん見てると……。
ニャガー!(野生の目覚め!)
尻尾に猫パンチ。
あわてて逃げるカウル。その逃げる尻尾を追いかける俺。
ニャガー!(いい加減にしろ!)
追いかけられているカウルが反転。すかさず猫パンチ。ニクキューが鼻っ面にジャストフィット!
ナー。(我々にはご褒美です)
そうして、カウルと追いかけっこしていて気がつけば……。
ニャー!(降りられないでゴザル!)
調子にのって木に登ったのが悪かった。カウル君。助けて!
ニャー。(降りれない)
後ろにいたのかよ! そうだよな。後ろから追いかけてきてたし……。
ガールズトークしてる少女達は我々の状態に気付いた様子もない。気付いたとしても手もとどかない。
ニャー!(助けて!)
助けを求めながら後ろからグイグイ押してくるカウル君。
ニャッ!(押すな!後ろに下がれよ!)
ニャー。(怖くて下がれない)
ニャガー!(だから、押すなって!)
この先はもう幅がない! 落ちるから。マジ落ちるから!
ニャー!(ヘルプ!)
ニャー!(助けて!)
カウルと2匹泣いていると、首の後ろをつままれて持ち上げられる。
ニャッ!(助かった!)
力が抜けてプラーンとしていると目の前におっさんの顔があった。
ニャー。(この度は助けていただき誠にありがとうございます)
そう言った俺の頭をおっさんはなで回した。
ニャッ。(ちょっち、手がゴツゴツしてるから)
更にあごの下にも。
ニャ。(手慣れてますな。ゴロゴロ)
そして……。
ニャー!(お腹は止めて~!そこは弱いの)
弄ばれ、泣いていると、
「あっ、お父さん」
少女の声が聞こえた。
えっ? おっさん、お父さんなの?