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翌日。
真衣は再び、秀平の病室にやって来たが
病室に秀平はいなかった。
『何処に行ったのですか?……』
真衣が近くにいた看護婦さんに秀平のことを訊くと
外出中と言う答えにがっくりと肩を落とし、落ち込んだ。
真衣が渋々、病院から戻っているとその帰り道の
小さな公園に秀平がいた。
『いた!……』
真衣は喜んで、秀平がいる小さな公園に入った。
真衣のことなど気付かず、秀平は桜の木の前の
ベンチに座り、真剣な顔でスケッチブックに
何かを描いていた。
そんな真剣な秀平に真衣は声を掛けることが
出来なかった。
真衣はそんな真剣な秀平に刺激をされて、
秀平のことを邪魔しないように桜の木の脇で
モデルの練習を始めた。
真衣のことに気付いた秀平に
「何をやっているの?……」
という声にびっくりし、その場に立ち止まり、固まった。
「えっと…… あなたの病室にわたし、
何か落とさなかった?」
真衣は少し困った顔で秀平にモデル募集が書かれた
紙切れの事を訊いた。
「知らないなぁ……」
秀平の素っ気ない言葉に
「ええぇ…… そうなんだ……」
真衣はがっかりした。
「うそだよ!…… これだろう?」
秀平はにっこりと微笑むと真衣に病室に落ちていた
紙切れを真衣を返した。
「うん!これこれ…… ありがとう!」
真衣は秀平から紙切れを受け取るとその紙切れを
ポケットに入れた。
真衣は秀平が描いていたスケッチブックを
横目で見ながら
「ここで何をしていたの?……」
秀平に訊いた。
「いや…… 別に……」
秀平は少し悲しい顔をし、慌てて、スケッチブックを隠した。
「そう……」
真衣は秀平のスケッチブックの中が気になって、
しょうがなかった。
でも、真衣はそれ以上、秀平にスケッチブックの中を
聞くことが出来ずにそのまま、家に帰った。
桜の公園で秀平と別れた真衣に直ぐに幸運が訪れた。
真衣は秀平の病室で落とした紙切れに書かれていた
モデルのオーディションを受け、合格したのだった。
『え?うそ! 合格しちゃった……』
受かるとは思っていなかった真衣は
モデルのオーディションに合格して驚いていた。
『もしかして、あの子【秀平】のお陰?……』
真衣は秀平の顔を頭に浮かんだ。
『アイツ【秀平】に遭いに行こうかな?……』
真衣はモデルに合格したお礼も兼ねて、
秀平が入院している病院に秀平に遭いに行くことにした。
だが、真衣は色々なことが重なり、直ぐには秀平のもとに
行くことが出来なかった。
やっと、真衣が秀平が入院している病院に秀平を
見舞った時にはすでに秀平の病室に秀平の姿はなかった。
『あれ? もう、アイツ【秀平】、退院しちゃった?』
真衣が秀平がいないことに少しがっかりしていると
「もしかして、真衣ちゃん?……」
秀平からスケッチブックを預かっていた看護婦さんが
秀平がいなくなった病室にいる真衣に声をかけてきた。




