聖剣ですけど、まあ、普通です。
もうすぐ、秋ですが、日中はまだ、暑いですね。
最近、なんか思い出せそうな気がするんだよね。
まあ、良いんだけどさ。
「ギダシア神官はいらっしゃるか?」
神殿の門ふきんで草むしりをしていたら
なんか、きりっとした感じの男性がきた。
紫の短い髪に緑の瞳か…。
後ろにいるのは天竜だな…今も竜乗るんだね。
「ギダシア神官ですか?お待ちください。」
私はそういって立ち上がった。
「大丈夫か?」
男性はよろけた私を支えた。
あ、足腰が弱ってる。
「オレの前でウエニアさんを抱き締めるとは良い度胸だ、メイーセント。」
ギダシア神官がごみ袋を持ってやって来た。
「ご、誤解です、ギダシア神官。」
メイーセントさん?がたじろいで私をそっと離した。
いい人だな、ギダシア神官に威嚇されてるのに。
「もちろん、冗談だ、メイーセント・キリヌア・チリアエシ、なんのようだ。」
偉そうにギダシア神官が言った。
「ハブータエ皇女殿下にアイルパーン竜騎国から、縁談がありました。」
メイーセントさんが言った。
「それで、オダーウエ聖騎士団、副団長なぜここに?」
ギダシア神官が私を抱き込みながら言った。
オダーウエ聖騎士団って神聖皇帝の直属の騎士団じゃなかったっけ?
良家の子女がメンバーなんだよね。
その副団長ってある意味究極のお坊っちゃまかな?
「皇帝陛下は、一度、お戻りをとのことでございます。」
メイーセントさんが言った。
「断る、ウエニアを離したくない。」
ギダシア神官が言った。
「…皇帝陛下からの伝言でございます、聖剣様の体調不良を直すにはオーラダー神を下ろせる巫子と話すのが良いのではないかと、最近覚醒した、巫子が素晴らしい力の持ち主だそうです。」
メイーセントさんが言った。
巫子?そんなんのこってるんだ。
大昔、ウソっぱちの似非巫子なら、会った事あるけど…勇者に暴かれてたな。
ん?細かいこと覚えてるのに…勇者の顔がわからないや。
「ふん、それなら、なぜ、カスリダさんを迎えに来ない。」
ギダシア神官が言った。
カスリダ神官?巫子だっけ?
「カスリダ神官?なんのことです?」
メイーセントさんが言った。
「いや、メイーセントは知らん、まあ、奴らは自分の権力とやらが大事なんだろうよ。」
ギダシア神官が笑った。
「ハア…それで、帰っていただけますか?」
困った顔をして、メイーセントさんが言った。
「…ウエニアと離れたくない。」
ギダシア神官がさらに抱き込んだ。
ち、ちょっと苦しいんですが?
「おや、こんなところでラブシーンですか?」
向こうから庭ぼうきを持ったカスリダ神官がやって来た。
「カスリダさん、さすがだ、この天竜を見ても動揺しないなんて!」
ギダシア神官が言った。
「…天竜?…お引き取りを私はなにも語りません。」
カスリダ神官が固い表情なった。
「カスリダさん、オダーウエ聖騎士団の副団長だ、神官騎兵の天竜じゃない。」
ギダシア神官が言った。
「………ああ、そのようですね、ここに天竜がいると町の皆さんに迷惑なので中へどうぞ。」
いつもより、若干固い表情でカスリダ神官が言った。
なんかあったのかな…。
あ…なんか意識が遠退く…。
「ウエニア?ウエニア!?」
ギダシア神官の声がして私は意識を失った。
抱き込みし過ぎだよー。
「大丈夫なのか?デイアイル。」
ギダシア神官の声がする。
「大丈夫だ、天竜で迎えに来るのはやめてくんないか?ウシオダのおっさんが腰抜かしてたぞ。」
デイアイルさんが言った。
「ウシオダさん、腰抜かしたの?」
私は目を開けた。
また、ギダシア神官にお姫様ダッコされてるよ。
なんか、諦めた。
「ああ、しりもちついてたぞ、よかった世界が救われたぜ。」
デイアイルさんが大袈裟なことを言った。
「そうですね、あの若者も救われます、今度結婚するそうです。」
カスリダ神官がニコニコして言った。
「…メイーセントは悪くない、悪いのは皇帝だ。」
ギダシア神官が不敬的なことを言った。
「まあ、許してやんなよ、たよりになる叔母さんが嫁入りしちゃうんだしさ。」
デイアイルさんが言った。
「…ともかく、帝都にウエニアと行ってくる、カスリダさん、お守りをウエニアに作ってくれないか?」
ギダシア神官が言った。
「え?私もいくの?」
帝都なんかはじめてだ。
昔のあの辺って、荒野だよね。
ペンペン草くらいしかはえてなかったような…。
「もう、離したくないんだ。」
ギダシア神官が言った。
離したくないって、勇者みたいなこといわない…ま、まさかね…。
「私、キノウエシの町で待ってるよ。」
その方がいい気がする。
真実何て知らない。
知りたくもない。
このまま、静かに余生を送りたいんだ。
「ウエニア、帝都には美味しい料理もたくさんあるから行こう。」
ギダシア神官が優しく言った。
「良いけど…。」
私、なんて、食い意地がはってるんだろう。
行きたくない。
ギダシア神官が勇者でも
もう逃げられない気がする。
「ギダシア神官は勇者…違うよね。」
私は呟いた。
「ウエニア、大丈夫だよ。」
ギダシア神官が私にキスした。
ああ、もう、この人から
逃れられない。
でも、逃れる以前に
きっと、何かあれば私は壊れてしまう。
そんな気がする。
もうすぐ、終わりが来るかもしれない。
ギダシア神官ともう、会えない。
カスリダ神官が言うように結婚しちゃおうかな?
でも、想いだけのこして去りたくないんだよね。
ギダシア神官が壊れそうで怖いから。
もう少しだけ、この世界にいさせてください。
メイーセントと結婚相手は短編小説『ふすまをへだてて半同棲』に出ております。
よろしくお願いいたします。
読んでいただきありがとうございます。