聖剣ですけど、ちょっと困ります。
久しぶりの聖剣です。
すっかり寒くなりましたね。
よろしくお願いいたします。
あの細胞再生術すごいです。
でもするたびにファリシア巫女が死にそうなんですけど…。
今日もファリシア巫女かけてもらって豪華な皇宮の与えられた部屋でうつらうつらしていた。
この間からギダシア神官が皇宮に滞在してるから私もここにいるんだ。
「いい加減にしていただけませんか?」
麗しいエウリール神の神官長がやっぱり麗しいギダシア神官に詰め寄る。
うーん、神官なのにどうみても二人とも戦士みたいな身体つきだよね。
「ウエニアが起きる。」
ギダシアが不機嫌そうに言った。
「セリカが死んだら恨みます。」
麗しい神官長がすごい顔でにらんだ。
「ふん、お前の恨みなどオレの妄執に比べれば赤子のようなものだ。」
ギダシア神官が腕組みしていった。
「セリカが死んだら私もあなたの大事なものを壊します。」
シュースル神官長がどこか狂気に満ちた顔で言った。
「そうすれば、邪神誕生でもか?」
ギダシア神官が静かに言った。
「ええ、どうせ私はセリカの後を追いますから…。」
シュースル神官長が言った。
邪神誕生?邪神はルートシルじゃないの?
「ならば、今すぐ逝けばいい、ファリシア巫女を上手く自分だけのものにするためなら先に逝かねば取られるぞ。」
ギダシア神官が危険な眼差しで腕を解いた。
「まだ、逝けません…セリカが死ぬ日は近いですが…取られるつもりはありません。」
妙に爽やかにシュースル神官長が笑った。
部屋に緊張感が高まる。
どうしよう、なんとか止めないと!
…セリカさんって誰さ?
「ギダシア神官。」
私はモコモコのソファーから起き上がった。
「ウエニア、すぐ片付ける。」
ギダシア神官が微笑んだ。
「あなたが最強でもすぐに片付けられるつもりはありません。」
シュースル神官長が剣に手をやった。
「エウリール神の神官戦士ごときがオレにかなうとでも?」
ギダシア神官が虚空に手を伸ばした。
わ…不味いよ!
「やめてください!」
あれ?私言ってないよ?
入り口に息を切らしたファリシア巫女がいた。
「セリカ、大丈夫なのか?」
シュースル神官長が駆け寄る。
「あのさ、シュースル皇子お兄ちゃんは私を殺す気なの?」
ファリシア巫女さんが崩れるように座り込んだ。
その後ろから神官戦士らしい出で立ちの体格のよい男性が入ってきてファリシア巫女の横にしゃがみこんだ。
「神官長、セリカは…」
男性が優しくファリシア巫女の背中を撫でる。
「ケイアス、お前が教えたのか?」
シュースル神官長が危険な眼差しで言った。
「ケイアス神官お兄ちゃんは関係ないよ!エウリール様から聞いたの。」
ファリシア巫女が顔をあげて荒い息で言った。
「余分な事を…一番の障害はあのお方ですね。」
シュースル神官が呟いた。
「それで…どうするんだ?ファリシアはまだ役に立つから生かしておくが…お前は先に逝くのか?」
ギダシア神官がシュースル神官の首元に槍をつき付けた。
「あなたが殺さなくても、セリカは死にます。」
シュースル神官が静かに言った。
「ギダシア神官!やめて!」
私はギダシア神官にすがりついた。
やっとエンジンがかったよ、このヤクザ身体。
「ウエニア?」
ギダシア神官が私をみた。
「セリカ、逃げなさい、殺される前に!」
シュースル神官長がそういって剣に手をやった。
「やる気か?」
どこかめんどくさそうにギダシア神官が呟いた。
「シュースル皇子お兄ちゃん、ギダシア神官様?それ誤解だから…。」
疲れ果てた様子でファリシア巫女が言った。
「誤解?いつも死にそうに私の腕の中に倒れこんでいる癖に!おかげで筋力がついたぞ!肥巫女!」
シュースル神官長が言った。
「だ、か、ら、誤解なの!私、職場で走り込みしてるからいつもヘロヘロなだけなの!」
ファリシア巫女が言った。
「は、走り込みだと!人騒がせな!」
シュースル神官長が叫んだ。
「セリカ、だから真実を話すのやめようって言った。」
ケイアス神官が遠い目をした。
「だって、シュースル皇子お兄ちゃんが死んじゃったら、私。」
ファリシア巫女が言った。
「セリカ、お前。」
シュースル神官が呟いた。
「怖いもん!絶対に化けて出るに決まってるよ、痩せろって。」
ファリシア巫女が少し振るえながら言った。
「つ、ま、り、死なないと言うわけだな…わかった…一緒に道連れにしてやる。」
シュースル神官長が妖しいことを言い出した。
「ええ?困るよ!新作キャラメルソフトクリーム食べてないもん。」
ファリシア巫女がそういいながらケイアス神官にしがみついた。
「セリカ、オレまで巻き込むな!」
ケイアス神官がそう言いながらもファリシア巫女をかばう位置に行った。
なかがいいんだな…。
「……アホらしくなってきた、もういい。」
ギダシア神官がそういって槍を消した。
「申し訳ございません、処分はご存分に。」
シュースル神官長がギダシア神官の前に伏せた。
「もういいと言っただろう、お前も同じ穴のムジナだということがわかった、さっさと現世でものにしろ、オレとちがって制限はないんだからな。」
ギダシア神官が偉そうにソファーに腰かけて言った。
「…セリカ…いくぞ、そのからだに言い聞かせてやる!」
シュースル神官長がファリシア巫女をかつぎ上げた。
「ええ?お仕置き?いたいの嫌だよ~!」
ファリシア巫女が言った。
「し、神官長、ほどほどにしとけよ。」
ケイアス神官がおろおろ言った。
筋肉隆々の神官戦士がおろおろするのってなんか面白い。
「ウエニア、どこ見てるの?」
ギダシア神官が私の顔を自分の方に向けさせて言った。
ついでにキスされたら答えられないんですけど…押し倒さないで~。
「あやつが羨ましい、ウエニアの身体さえなんとかなればすぐにでも…。」
ギダシア神官が呟いた。
「そういえば、どうしてそんなに上から目線なの?」
私は思わず聞いた。
シュースル神官長って皇族で神官長なんだよね。
ギダシア神官は一般神官な格好しか見たことないし…。
一般神官は虚空から槍何て出さない。
「聞きたい?」
ギダシア神官が真剣な眼差しで見つめた。
「……いいよ、別に。」
聞いたら終わりの気がする。
「じゃ言わない。」
ギダシア神官がそういって私を抱き締めてまたキスを長々とした。
私、いつまで生きてられるんだろう。
今回は誤解ってわかったけど。
ファリシア巫女があの術のあと明らかに疲れてるのはわかるんだよね。
人の命を削って生きてていいのかな?
隠居聖剣がさ…。
でももう少しだけ生きていたい。
キノウエシにも帰りたいし、カスリダ神官にも会いたい…。
私はギダシア神官を抱き締め返した。
それに強いけど不安定なこのギダシア神官をほっていけないよ。
どうしてそう思うかはわからないけど…。
読んでいただきありがとうございます♪