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プロローグ 聖剣ですけど、良い天気です。

調子にのって連載版はじめてしまいました。

申し訳ありませんが不定期更新ミニコーナーです。

よろしくおねがいします。

天気がいい日は気持ちが晴れるよ。

ハーブにいこうかな?


「ウエニアさん、クッキー売りにいきますよ」

カスリダ神官がさっきまで袋詰めしてたクッキーを背負子籠に詰めた。


相変わらず剣使いが荒いなぁ。

本人も働き者だけどね。


私はウエニア、地母神オーラダー様の聖剣です。

まあ、もう引退して何百年ですが。

オーレウス帝国の片田舎ギーアイア市キノウエシ町の

オーラダー神殿キノウエシ支社に間借りさせて貰ってます。


「働きざる者食うべからずです、行きますよ」

カスリダ神官が背負子籠ショイコカゴを背負った。


相変わらず力持ちだな。

白い髪の性別不詳な人で筋肉なさそうなのに……


ハーブクッキーは神殿の活動資金の一部になります。

まあ、支社なんぞたいしてお金ないんですよ。

都会の大神殿じゃあんまいし。


「ギダシア神官様は今日はいらっしゃらないの? 」

喫茶店の看板娘キラノーヌちゃんが両手を頬に当てて可憐に嘆いた。

「ああ、大神殿に呼び出されてしまって」

カスリダ神官がクッキーの試食を差し出した。


あのエロ神官何気に正体不明だよね。


そうか……だからここ数日、あのエロエロ神官に会わなかったのか……

大神殿はここから当然オーレウス帝国の帝都オーダウエにあります。

あの、変態勇者の名前がついてるその首都は、マジ遠いです。


「残念だわ…ギダシア様から買いたかったのに……」

雑貨屋の若奥様ニアスさんも寂しそうだ。


あのエロ神官、どんだけ女性を惑わしてるのさ。

たしかに色気たっぷりの細マッチョの美青年風だけどさ。

正体不明だよ。


「誰から買っても、味は一緒だよ、まったく、近頃の若いもんは」

魚屋のキーエおばあちゃんがクッキーの袋を沢山つかんだ。

わーいおばあちゃん大好き〜。

「いつも、ありがとうございます」

私は紙袋にいれてコインを貰った。


代金は心付けなのでその人しだいなんだけど、大体相場より少し多いくらい払ってくれる人が多い。


まあ、ぶっちゃけ、ただでくれといわれても、カスリダ神官ならニコニコ渡すだろうけどね。

土の恵みはすべての人のものだからね。


「ウエニアちゃん、クッキー、美味しかったよ」

キーエおばあちゃんがニコニコ言いながら相変わらず貧相な腕だねぇと私の腕を撫でた。

本当に優しいよね、おばあちゃん。

本当は私の方がだいぶ年上だけど、寝ていた分はノーカンウントでお願いします。

「キーエさんだってウエニアちゃんが居なければがっかりの癖にな」

デイアイルさんが笑いながらクッキーを手にとった。

本当に貧相だな……大丈夫か、ウエニアちゃんと心配してくれるデイアイルさんからコインをもらって大丈夫ですと微笑んだ。


デイアイルさんは鍛冶屋さんで、たまに刀身のメンテナンスしてくれるおっさんだ。


私の隅々まで知ってる。

ナゼか嫁の来ない哀愁のおやじだ。

わざわざ帝都から来たのにねぇ。


「調子はどうだ、ウエニアちゃん」

デイアイルさんがそう言いながら腕を叩いた。

おばあちゃんがこのムッツリすけべとペチペチと杖でデイアイルさんをはたくのをいててと言いながらも真剣に見てくれている。

「うん、まだ、今いちかな?」

私は少しだるいなぁと思いながらつぶやいた。


わ~奴に滅ぼされるーとデイアイルさんがつぶやいてるの聞こえたけど……奴って誰さ。


何百年か前に勇者オーダウエに地母神オーラダー様が与えた聖剣な私は。勇者のおかげで、特に邪神も邪族も倒すことなく血痕ひとつつけないままあの旅は終わった……らしい。


所々、記憶が抜けてるんだよね……


ただ、旅が終わったとたんにあの男が……勇者オーダウエが


私の事を連れ去ってどこかに引きこもろうとしたことだけは……なんとなく覚えてるんだけどね。


私は逃げたらしい……勇者はハイスペックだから本当に頑張ったみたいだ……それもよく覚えてない。


それで今も田舎だけど、もっと辺境だったキノウエシのオーラダーの神殿に逃げ込んだんだ……あれ誰かに助けてもらったような……ともかく記憶があやふやでさ。


そしてその直後力を使い果たしてこの間まで寝てました。

うん、ほんの何ヶ月前までね。


「本当に、満身創痍だったからな」

デイアイルさんがよく俺直したよなとしみじみ私をみた。


このすけべーとますますおばあちゃんが叩いた。

いたいよばあちゃん、おれは聖武具師として見てるだけだとデイアイルさんがぼやいた。


本当に全然活動してないはずなのに刀身はボロボロだったみたいだ。


時間がたってるからかな? それをあのエロエロ神官が邪神討伐500年祭に合わせて聖剣も綺麗にってデイアイルさんに頼んでくれたんで目覚められたんだよね。


だから、本当ならもう、朽ち果ててたかもしれない。


平和な社会に生きて戻ったんだから隠居生活でしていきたい。


「まあ大祭までもう少しだしなんかあったらメンテナンスするからな、ばあちゃんはやめてくれ」

デイアイルさんはまとめ買いしたハーブクッキーをもっておばあちゃんの杖から逃れるように退散していった。


「大丈夫なのかい? ウエニアちゃん? 」

キーエおばあちゃんが心配そうにでも心持ち少し胸をはった。

ムッツリすけべは撃退したよと誇らしげに笑った。

誤解だけど、経験豊富なお年寄りにしつれいだけど可愛いなぁ……

「うん、大丈夫だよ、まあ、基本隠居生活だし」

「そうかい?じゃあ、うちの売れ残りだけど」

キーエおばあちゃんが紙包みを出した。

「もしかして魚コロッケ?わーい、ありがとう」

セダルカ魚店の魚コロッケ美味しいんだよね。

芋と牛乳をねって塩焼きしたそのときの旬の魚を包み込んで揚げたので

トロトロホクホクなんだよ。


うれしいなぁ、ああ、生きててよかったと騒いでおばあちゃんの手を握ると栄養つけるんだよとおばあちゃんが可愛く笑った。


「すみません、キーエさん。」

ニコニコとカスリダ神官がニコニコした。

酒に合うと思ってるな。この酒豪!


「カスリダ神官にやったんじゃないよ、ウエニアちゃんにやったんだよ」

キーエおばあちゃんが経験豊富の勘ふんっと釘を刺した。


受け取った包みは温かかったから……多分残り物じゃないんじゃないかな?


「キーエおばあちゃん、ありがとう、美味しいから大好きなんだ」

本当にうれしいなぁ。

「本当に栄養つけるんだよ、むりしないでね」

キーエおばあちゃんは私の腕をなでて店の方に戻った。

「さて、もうひと頑張りしますかね」

カスリダ神官が本当にお年寄りに人気ですよねとニコニコ包みをみた。

取られないようにするぞ〜

「うん」

包みを抱え込んで答えた。


まあ、結局酒のつまみにされるんだけどさ。


オーラダー神殿の庭はハーブと木々に覆われている。

深い森のようにも見えるけど人工的な森だ。


一画に薬草の温室があってオーラダー神殿施療院で使う薬草を栽培してるんだ。


「えーと、血止めと熱ざましの薬草か、まったく、先生も剣使いが荒いよ。」

私は頼まれた薬草を摘んだ。

ハーブは詳しいんだよね。


昔もつんだ覚えがあるし、町に医者はあるけど、民間療法の方がいいって言うお年寄りも多いんだよね、キーエおばあちゃんもその口です。


医者は敷居が高いんだってさ、そんなことないと思うけど。


施療院の先生はまさにその医者なんですが?


「ウエニアさん、ただいま」

後ろから覚えのエロ声がして抱きつかれた。

「ギダシア神官? 」

気配なかったんだけど?


「うん、つかれた……」

ギダシア神官が私の頭に顎をもたせかけた。


私の頭はあんたの顎置きじゃないんですが?


「じゃ、もう休みなよ、そういえばみんなギダシア神官からクッキー買いたかったって、キラノーヌちゃんとかニアスさんとか、エーアゼさんとかが言ってたよ、大モテだね」

そう言いながらなんとか逃げようとするんだけど抜け出られないよ。

力ありすぎる、この無駄細マッチョめ。


「うーん別に俺はウエニアさんがいればいいんだけどね、休むから一緒に寝ようか? 」

ギダシア神官が私の顔を上にむけて額にキスした。


うーん、無駄に色気のあるいい男だ、みんなが夢中になるのはわかるよ……私にとってはたんなるエロエロ神官だけど。


キスしないでほしい。


「私は忙しいからさダリアちゃんに添い寝してもらいなよ、アウル神官、大喜びだよ」

うん、アウル神官の娘のダリアちゃんの世話してくれれば一石二鳥だよね。


ダリアちゃんはチビ幼児ですが、ギダシア神官がお気に入りのおしゃまな女の子です。


「つれないな、こんなに愛してるのに」

ギダシア神官が今度は唇にき、キスしやがった。

「ギダシア神官のアホ」

私は長いキスの後涙を浮かべて抗議した。

「うーん、癒されるウエニアさんは俺の元気のもとだよ」

ギダシア神官が唇をエロっぽく舐めた。


隠居な聖剣をもてあそぶんじゃない。


「ウエニアさん、遅いですよ、先生が早くと……おや、取り込み中でしたか? 」

カスリダ神官がやってきてきびすを返した。

「すぐ、いきます! ギダシア神官、離してください! 」

私はなんとか出ようともがいた。

「仕方ないな癒されたいのに」

ギダシア神官はそういいながら離した。

カスリダさん大変そうだし、次の機会にしようかとエロく微笑んだ。


つ、次の機会なんてないですよ。


逃げようとしてずっこける私をギダシア神官がささえてくれた。

ありがとうと言う前に唇をふさがれる。


「慌てると転ぶよ」

ギダシア神官が笑った。

「ギダシア神官のバカ〜」

私は涙ぐみながら腕から出て走った。


転がるよとギダシア神官が笑いながら言ったような気がしたけどしらないよ。


なんであんなにエロエロしいのさ。

帝都でなにしていたかなんてしらないけどさ。


私は隠居平穏無事な生活を送りたいだけなんだよ。

おもわせぶりな態度やめてほしい。

だからあのエロエロ神官に関わってるひまはないんだよね。


キノウエシのオーラダー神殿で平和にのんびりカスリダ神官にこき使われながらのどかに余生を送りたい。

それだけが、私の願いなんだから誘惑もどきを受けてる間なんてないんだからね。


案の定転んだあと起き上がった空が青くてぐちゃぐちゃ悩んでるより平穏無事な生活を送る方がいいって思った。


遠くでカスリダ神官の声がした。


うん、エロ神官はこの際置いておいて今日の食い扶持を稼ぐんだ。

働くさるもの食うべからずだもんね。

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