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始まりの妖育師《フェアリー・テイマー》  作者: 吉寺 真
第三章 永劫の挑戦者
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第五十五話 ――神に『通』ずる力――

「遊ぶ? 私も舞人(まいと)も暇じゃないのだけど」

 興味なさそうに、褐色の少女が言う。

「スジャータ、言い方ってのがね……」

 困ったような表情で話す舞人と呼ばれた男。


「物部さんよぉ、アンタより強いのかよコイツらは」

「……今まで見てきた中では彼らは『無敵』だ。『終わりが無い』(無限)であり、『ルール強制』(概念)。《世界の守護者》を全員連れて来ても勝てないだろうね」

 そうとは思えないんだよなぁ……。


 本当に、どこにでも居そうな影の薄い無個性な男。その横に立つ褐色銀髪紅眼の少女。ファンタジーのような、洋服か? フリルの多い、絵で書くのであれば手間取りそうな面倒臭いデザインだ。しかし、妙にエロいと言うか、性癖が見え隠れすると言うか……。


「……ロリコン?」

「そうね、舞人は間違いなくロリコンよ」

「違うよ? 違うからね?」


 違うとは言われてもなぁ……。

「類友。有悟、そう言う事」

「まッ! しょうがないよね、ユーゴもそうだしッ!」

 うわぁーい。何言ってんだ土属性に(ロリ体系)火属性(どもが)


「良かったわね、舞人。お友達が増えて」

「ねぇ、スジャータ。何時もそうして、僕を異常性癖者として紹介するのは何でなの?」

 あぁ、アイツも似たような奴か……。急に親近感が湧いてくる。友達になれるかもしれない。


「かぁーっ! フテー奴等ですよ! 有悟さんをロリコンとして紹介しようとは! 有悟さんはおっぱい大好きな好青年ですものね!」

「それはそれで風評以外というか、人聞きの良くない紹介だな……」

「あらあら」

「それで全部解決しようとするなよシィール?」



「まぁ、こう愉快な五人組なんだが、腕試しをしたくてね。ぜひ手合わせ願いたい」

「……良いですけど。『絶対』に勝てないですよ?」

 こいつ、人畜無害そうな顔で随分と大口を叩く(ビックマウスだ)

「そんなことよりも、えぇと……」

「有悟、穂村 有悟だ」

「ご丁重にどうも。布袋(ほてい) 舞人(まいと)です」

 ペコリと頭を下げる舞人。コイツ、腰が低いのか頭が高いのかわからなくなってきた。

「随分と上から目線ね……貴方よりも彼は長く生きているというのに」

 スジャータがジト眼で俺を睨みながら呟く。なんだって俺の考えが読めてんだ……?


「それよりも、僕と一緒に魔導書(グリモワール)を見ないかい? 歴史的に価値ある物がココには沢山あるんだ!」

 髪の下に隠れた眼が、キラキラと輝いているのがわかる。しかし――

「――魔導書(グリモワール)? 本なんてないだろう?」

 目の前に広がるのは石碑や、木の板を紐で纏めたような物。ギリギリで理解できるのは巻物(スクロール)くらいか。

「あぁ、基本的に魔導書は歴史が古ければ古いほど力を持つ。紙媒体は歴史が浅いんだ」

 そう言う彼の手には竹? を纏めた巻物のような物が。

「これは竹簡(ちくかん)と言ってね。中国の方でよく使われた札なんだ。紙の普及後も結構な間使われてね……」

「舞人……」

 終わりの無い(マシンガン)会話(トーク)を続ける舞人の語りを、ピシリと止めるスジャータ。


「私以外の魔導書()に触れると言う事は、覚悟は出来ている?」

 眼が、怖い。先ほどの俺を見たジト眼のなんて感情の載っていなかった事か。人が死ぬぜコレ。


「……スジャータ、舞人くんも悪気があったわけじゃないんだ、許してあげてくれないか?」

「物部、これは私と舞人の問題だわ。部外者が出てこないで」

 その言葉と、空気を確認し、物部は――時折見せる悪い顔で――笑う。


「まぁ、言うことも聞かない、役にも立たない魔導書()との専属契約(エンゲージ)なんて、やってられないだろうね」

「物部!?」


「……いいわ、続けなさい」

「いや、悪いねぇ。その嫉妬深さ、わからなくもない。彼を縛れる物が無いものなぁ。だから社会的地位を脅かして、やっと自分を見てもらえて居るんだろう? 可哀想だねぇ自分に自信の無い――否、力のない女性と言うのは」


 一息で言ってみせる物部。その上、吐息、声色、男だというのに、ゾクゾクとするような色気を魅せる。完全に、煽っている。


「……良いわ、『手合わせ』だったわね。良いわ、舞人、準備なさい」

「あの、スジャータ?」

「気にしなくて良いわ、気にしてないもの。ただ――気に食わないだけよこの男が」


「悪いけど、僕は戦わないよ、まずは有悟くんだ」

 て、テメェ!?


「まずは、貴方をノして、その次は物部。覚えておきなさい」

「おう、怖い怖い。ぜひとも有悟くんには頑張って貰わないとね」


「……先に話しておく、僕の力は『神通力』。説明できないけど、まぁ強い」

「そうかい。で、会場はドコだ」

「付いて来て下さい。ソレ用の設備もありますんで」


 多分俺より年上だと思うけど、敬語で俺に話すんだな……。暮らしづらそうだ。そんな事をぼんやりと考えながら、俺は彼に続いた。



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