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始まりの妖育師《フェアリー・テイマー》  作者: 吉寺 真
第三章 永劫の挑戦者
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第五十一話 ――『終わり』を告げる者――

「新聞は間に合ってるし、テレビはねぇし、電気も水道もガスも使ってねぇから帰れ」

 あばら屋と言うか、廃屋の扉をノックし続けた結果、帰ってきた答えがコレだ。


日高 昇(ひだか のぼる)、彼は戦いの後少し変になってしまってね……」

 物部は、彼の答えを聞くと、扉を蹴破り、中に入る。その過程で、遺産を展開し、殺す準備をしていたが、俺は黙ってそれを見送る。

「ぐわー」

 数分もすると物部が窓を突き破って、吹き飛ばされてきた。


「俺とティアの愛の時間を邪魔するんじゃねぇ!! 次来やがったら『喰う』ぞ!!」

 そうして出てくる、青年。黒いその髪もっさりとした感じを受ける。綺麗に切り揃えられているはずだと言うのに、決してそうは見えない。髪と同じ色の眼は、まるで食卓に並ぶ焼き魚のように濁っていた。

 顔立ちは決して悪くは無い、悪くはないが、他人に不信感を抱かせる。

「これが、アポロン(理想の青年像)の適合者……?」


「もう辞めたんだよ、そんな馬鹿らしいのは」

 何よりも、彼を一番信用出来ないと思わせるのは、ずっと小脇に少女を抱きかかえている点だろう。幼女と言っても良いかもしれない。彼は、常に少女から手を離さず、時折その髪を口に居れ、頭皮の匂いを嗅いでいる。


――変態だコイツ。


 だと言うのに強い。物部が、完全にノサれている。俺だって面倒臭いのに、コイツは神格の力を開放するでもなく、物部を追い返した。


「テメェも俺に面倒くせえ戦いをしろだとかそんな話か? だったら帰れ!」

 そう言いながら、今度は幼女を抱きかかえ始める日高。怒りながらそんな事するのはやっぱり変な奴だよコイツ。と、見ていると、無気力状態で抱きかかえられていた幼女が、日高の首筋をペロペロと舐め始める。


――うわぁ、二人して変態かぁ……。


「いや、すみませんでした。帰りますんで。ご迷惑おかけしました」

 本当に関わりたくないですコイツと。俺は物部を引摺り帰ろうとする。ソレを見て日高は部屋に戻る。

「駄目だ! 奴らは『組織』で管理しなければ!!」

「いや、無理だって! あんなの管理したって良い事ねぇよ!?」


「負けてられませんよ有悟さん!! 私達夫婦も愛を魅せつけなければ!!」

「え? 変な妄想が聞こえた気がするわ、何だって?」

「訂正――私達夫婦の愛を魅せつける」

「黙らっしゃい! (残念)属性! 時代は清らかな水です!!」

「あらあら、大変ですね、ユウちゃん」

「そこの脳味噌ピンク(うふふキャラ)も何本妻顔してるんですか!? メインヒロインは私ですよ!!」 

「皆何か楽しそうだねっ!」

「……サラ、お前はいい子だなぁ」

 何か、涙が出てくる。何でこんな俺の周りはやかましいんだろうか……。八割以上がウィンのせいだけど。



 騒いでいると、目覚まし時計が投げつけられる。頭に当たったソレ。よくよく見てみれば、電池もない、動いても居なかった。


「うっせぇぞ!! 喰われてぇのか!?」

 叫びを上げる日高。そんな彼に抱きかかえられた少女が、やっとその口を開く。


「のぼるぅ……」


――その一言だけだった。

「……確かに、ティアの言う通りだな」


 それで、彼は何かを理解したようだ。凄いね、人類。

「ティアは『彼らにも何か理由が有るのかもしれない、話だけでも聞いてあげたら?』との事だ。優しいティアに感謝し、永遠の忠誠を誓え。ソコがスタートだ。出来ないのなら帰れ」

「どう解釈したらそんな結論になんだよ!?」

「君達の力は危険過ぎる! 国が責任をもって管理する! 従え!」

「物部! 何でテメェは火に油を注ぐようなセリフしか出てこない!?」


 人の話を聞かない奴しか居ない。助けてくれよ……。妖精達も話を聞かないし。癒やしはセラだけだ。話を理解できてないけど……。



「なんだよ、誓えねぇってか……ならサヨナラだな」

 そう言い、彼の有り様が融ける――抱きかかえたティアと呼ばれた少女とともに、融け合い、混じり合い、新たなる『神』を形作る。


 漆黒の全身鎧。紅く燃える二つの瞳。その顔はまるで馬のようでもり、蝗のようにも見える。その威圧感は、間違いなく――ゼバオトと同格!!


「――『アバドン』、『アポロンと呼ばれた者()』と『アポロンに伐たれた者(ティア)』の成れの果てだ」


 その異形が、つまらなそうに呟いた。


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