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始まりの妖育師《フェアリー・テイマー》  作者: 吉寺 真
第三章 永劫の挑戦者
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第四十九話 ――『覚醒』――

「貴様が、【永劫の(アイオーン・)挑戦者】(チャレンジャー)である以上、殺しはしない。だが、どちらが上か、その身体に刻み付けてやろう」


「悪いが、勝てないのなら、戦いはしないさ」

 そう言い、逃げの手を打つ物部。確かに、状況判断能力は優れている――しかし、甘い。


 《草薙剣》を振るい、空間を裂き、その切れ間に入り込もうとする物部。俺も、手刀により、世界を切り裂き、空間を繋げる。俺の目の前に『跳んだ』事が信じられないのだろう、驚愕にその表情が染まる。


「それが、手の一つか」

「……そうだ」

 衝突のダメージを、内より出た骨により守護する。強固な鎧であり、力を増幅させる骸骨格(エグゾスケルトン)

「……随分と、『穢れた』力だな」

 そして、強力だ。なるほど、勝てると大口を叩くのもわかる。

「《731》の負の遺産(レガシー)だ、小綺麗な遺産とは訳が違う」

「だが、弱い」


 指を鳴らし、理解する。もう一つ鳴らし――破壊する。硝子細工のように、粉々に砕ける骸骨格。固有振動数と共振によるちょっとした手品だ。固体であれば、これに対応する手段はない。


「くっ……!」

 それでも再度肉体より骨を出し、鎧を構築する。そうして、構築された左腕には、銀のガントレットが。胸には古びた時計が、一種のデザインのように掲げられる。両手に握るは《草薙剣》、《天羽々斬》。空中には五つの刃が舞う――《布都御魂》だ。



「それが最高の戦闘形態か」

 今一度、手品を試す。二度目、音を鳴らしてやれば、全てが砕けた(これを否定)――逆再生のように、(こちらを)修復される()物部の道具達(実  に)


「なるほど、時間操作か」

「――はぁ、疲れた」


 溜息を吐く物部――疲れた? 声の調子は、全てが終わったかのようだ。戦いはこれからだと言うのに……


――消し飛ぶ己の四肢。見えなかった、防げなかった、耐え切れなかった。


「攻撃の威力は、ただ一つ、ただ一点を伸ばすだけで最高の一撃を生む」

 骸骨兜の下で物部が嘲笑う。


『速さ』(スピード)だ」


 知ってるさ、そんなこと。俺は肉体を一瞬で回復させると、もう一度物部と向き合う。


「第一ラウンドはくれてやるよ」

「そうかい、じゃあストレート勝ちで帰らせて貰う」


 そう言い、俺の四肢を今一度切り裂く物部。今度は、ゆっくりとスローモーションのようにその挙動が見える。俺は、絡み付く空気を引き裂きながら、ゆっくりとした動きでその一撃一撃を避けて見せる。


 驚愕に染まる物部。知らず知らずのうちに笑みが浮かぶ。


「《妬む神》。一度でも俺を貶めた相手の全てを理解し、全てを超える」


 つまりは――


「お前は『俺達』(ゼバオト)に、勝てはしない」


 これが、アルゴに全力を出せなかった理由。アイツは、ゼバオトを恐れていた、故に《妬む》事が出来なかった。


 時間操作により、世界を《減速》させ、自らを《加速》。擬似的な時間停止を行う。左の腕より、剣を強化し、耐性無視の一撃を与える、か。全て理解した。


 俺は、物部を超えるスピードで、その後ろに回りこむと、光を纏った右腕で、その左腕を叩く。種々の防護や障壁を突き破る感覚。まるで、薄い紙を貫くように、それらを突き抜け、物部の腕をもいだ。



 そうして、理解したなら、再現ができる。



「さて、まだやるか?」

「……降参は、最初にしたはずなんだがね」

「逃げる奴は追って倒す主義なんでね」

「悪い奴だ」


 そう言う、物部の目に余裕はない。減らず口は癖のような物か。


「……ぇ?」


 自らの身体を、『両の眼』で食い入る様に見つめる奏弦。ゼバオトであればこその力で、『戻した』。全能の神を舐めて貰っては困る。目についた人間に一生では受け切れないほどの絶望と、災いを与えることも、病や傷を癒やすことも簡単な事だ。


 と言うか、害を与えるほうが簡単なぐらいだ。


「性格を、奇行を矯正しないとな」

 溜息が漏れる。出来るだろうか、全能とはいえ、コレは骨が折れそうだ。


 最初に、物部の骨を折ることから始める事にした。苦痛に表情を歪ませることも、叫びも上げなかったので、少しつまらなかった。






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