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始まりの妖育師《フェアリー・テイマー》  作者: 吉寺 真
第三章 永劫の挑戦者
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第四十七話 ――『仕事』の手伝い――

 さて、「暇だろう?」の暴力的な言葉により、俺も仕事とやらの手伝いをする事となった。

「働かざるもの食うべからず、だろう?」

 良い車に乗り、どこかに向かう俺達。高級車のリムジンだぜ、国家公務員の一種らしいが、税金の無駄使いじゃねぇか?

「俺は十六、なんだろう? もう少し優しくしてくれたって良いじゃねぇか」

「悪い子だね、甘えん坊さんめ」


 ムカつく。顔立ち(フェイス)がお姉さん系なせいで、知らなきゃドキッとするような感じで言うなオカマ野郎め。

「有悟さん、負けてます! 負けてますよソレ! ホモ堕ちなんてサイテーですよ!?」

「しねぇよ!?」

 最低最悪な想像をするウィン。アルゴと違って俺はホモじゃない。……ショタがロリった場合ってホモなのか……? もう何だよアイツ。俺と同じ顔辞めて欲しい。


「質問、『仕事』の内容は?」

「あぁ、悪いね教えていなかったか」

 物部は幾つかの紙の束を寄越す。調書か。


――奏弦そうげん 明代あきよ

 黒の長髪をし、何処かオドオドとした弱々しそうな、幸薄そうな少女だった。資料によれば、中二、背丈も低く、馬鹿みたいに軽い。肉食え、肉。


「なんだ、こんなのが好みだったのか」

 良い趣味してるぜ、加虐性癖持ち(サディスト)にはたまらねぇだろうさ。

「『四騎士のペスト医師』、何度も会ってるだろう?」

「アイツ女だったのか……」

 結構びっくりだ。ドモりの酷い、弱々しい女……一部には大人気だろうよ。


「名は体を表す……。冗談で調べたらこの結果だ、勘弁して欲しいよ」

「それってどういう意味?」

 サラが尋ねる。俺もよくわからんから解説が欲しいもんだ。

「【奏=蒼(そう)】、【弦=玄(げん)】、【明=赤(あか)】、【代=白(しろ)】、それぞれが世界構成色(全ての色)に対応している」


 四騎士の色も同じく、蒼、黒、赤、白。名前が先と言うに、能力に対応してしまった、と。

「キラキラネームの奴とかヤバイんじゃねぇの」

天使(エンジェル)ちゃんが、天使を従える事態は本当に起こりそうだから、勘弁して欲しいよ」

 苦笑いで応える物部。俺は楽しく笑って返す。


「しかし、足取りは掴めてるのかよ」

「あぁこの間、ね」

 そう言う物部の手には、革製のベルトが握られていた。おそらく、ペスト医師のコスチュームの一部だろう。手癖の悪い男だなコイツ。


「コレのおかげで、足取りは簡単に掴めるわけだ」

「で、このカワイコちゃんの所に行くのは良いが、目的は何だ?」

「ナンパ、って言ったら信じるかい?」

 物部の悪い笑顔。辞めろよ、本当に

「勧誘って事か、だがアイツは別の組織の人間じゃないのか?」

 そういえば、俺のことをアルゴと最初に言ったのはアイツだったな。読み間違いかとも思ったが、もしかしたら、俺の事(ユウゴ)アイツの事(アルゴ)も、両方のデータを持っていた可能性がある。

「あぁ、その組織は潰れたよ」

「はぁ……? マジで?」


「あぁ、破滅主義者の集まりでね、彼女が四騎士を従えるようになった時に、「世界の滅びは目前だ」と言い出して、集団自殺を決行した。彼女はその目的(世界の破滅)の為に意思を継いで動いているらしい」

「傍迷惑な奴らだな」


 まぁ、良い。『組織』の中に組み込めるなら、手駒が増えるだけ、アイツも磨けば永劫の挑戦者(アイオーンに挑む刃)になりうるだろう。


 しかし、まぁ。疲れてきた。俺は横になる。すると、丁度合わせてきたのか、シィールの太ももに頭が乗る。

「あらあら、お疲れですか?」

「……寝る。着いたら起こしてくれ」

「はい、わかりました。ゆっくりと眠ってください」


 物部は、まだ仕事があるのか、ノートパソコンを開き、キーボードを打ち込んで居る。大人ってのは大変なんだな。


 周囲の音が消える。騒がしく叫んでいるであろうウィンの声も聞こえない。ジト目で俺達を睨むノゥの視線を、目を瞑りシャットアウト。サラは元気よく、俺の上に乗ってくる。それほど重いわけでもないし、クーラーの効きすぎたこの車の中では丁度いい湯たんぽだ。



 俺はゆっくりと眠りに付いた。







 目覚めたのは、この車が高速で奏弦 明代(ペスト医師)を轢いた瞬間だった。

 女の甲高い悲鳴と、何かを挽肉(ミンチ)にする音は、目覚ましに向いていないと思った。


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