第四十六話 ――『学園』へ行こう――
『組織』に着いてみれば、ソコは綺麗なビルだった。
金持ちが雁首揃えて、金をゴロゴロさせて、儲けを得るような、そんな感じのビル。
「成金趣味って感じだな」
「悪いが、色々都合が良い場所だからこそ、値が張るし、そう言う場所になる」
そうして、応接間のような場所に座る俺達。少し、席を外していた物部が、対面に座る。
「さて、君たちが求めているのは『手駒』、だったね」
そう切り出す物部。俺は静かに頷くと、彼は小さく笑いながら口を開いた。
「妖育師、君たちが創り出した、新しい異能体系に興味は無いかい?」
そうして、俺達の目の前に出されたのは、高校のパンフレットだった。一見普通、差し障りの無い情報が書かれているだけ。しかし、魔術か何かの力によって、妖精と契約した人間にだけはその一文が読める。
『君のその力、自由に行使したくは無いか?』
随分な落とし文句だことで。
「悪くない」
そう言い、手渡された資料、契約書にサインする。
「はぁ~!? このタイミングで学園編!? 正気ですか!?」
「役立つようならそのままで良い。力が足りないようなら発破をかけてやる。そう言う意味でも、見ておく必要はあるだろう?」
そして、何より学歴が欲しい。今のままでは俺は小卒、中学中退と言う状態だ。そりゃ、中三の夏に突然海外旅行に行ったのはアレだけど、気がついたら一年過ぎてたんだぞ?
「質問、私達は?」
「なるほど、君たちの立場を考えなくてはならないか」
確かに、普通の妖精達は、二~三頭身くらいのマスコットキャラクターだ。こんな人間サイズの妖精は他に居ないだろう。そんな四柱を妖精扱いで連れて行くのは問題か?
「あらあら、皆さんで学生さんですかぁ」
頬に手を当て、困ったように笑うシィール。皆が一様に学生服を着て、通学する姿を想像してみるが、……如何わしいコスプレみたいだなシィールは。堪え切れず鼻で笑う。
「あらあら……なんですか? その笑いは」
随分と『圧』が強い。俺は「何でもないです」と、謝る。
「学校って勉強する場所なんだよね。んー……」
サラが随分と難しそうな表情をする。コイツ、勉強とか苦手そうだもんな……。
「まぁ、妖精の使い方、ようは『力』の使い方を学ぶ所だろ?」
「そうなるね」
「なんだっ! だったら大丈夫だねっ!」
そうかな……一瞬大丈夫な気がしたけど、コイツ『強火』か『昇華』しか選択肢なかった気がする……。
「まぁ、話が纏まって良かったよ」
物部が、随分と疲れた表情を見せる。
「随分とお疲れだな」
「……君達のせいだよ」
また、深い溜息を吐く物部。さて、俺には何のことかわからないな?
「さて、編入手続きやら諸々で、時間がかかる。その間、やる事は有るのかい?」
「特には無いな……」
良く考えたら今は夏休みだ。だらだらとクーラーの効いた家で横になると言うのも十分やることだったな。
「ならば、悪いが少し、僕の仕事を手伝ってくれないかい?」
「嫌だね」
そんな面倒に巻き込まれるのはゴメンだ。
だが、どうしたって逃げられないと言うのもわかっていた。
面倒なことになってきた。




