Side B-3
「レックスさん、お子さんおいくつになったんですか?」
市街地から森へ入り、前方に一つ目の山が見えてきた頃、レックスの提案で休憩を取ることになった。
アレフが持ってきたサンドイッチとお茶を取り出し、木の根元に座りながら三名は一息つく。
ふと話題を出したのはケビンだった。
「今年で6歳だよ、絵本も卒業して今は家の周りを走り回っているそうだ」
サンドイッチを摘みながらレックスは答える。
はぁ……とため息を吐いたアレフはそんなレックスを見てさらに恨めしそうに見つめ
「いいなぁ……ほんとにいいなぁ……軍階級もあるレックスさんも羨ましいし、なにより奥さんのクラリスさんがすごく綺麗でうらやましい、どうやって落としたんですか?」
「アレフ、少しは自粛してください」
お茶を飲み終えたケビンは咳払いをしながらアレフを制止する。
そんなケビンに突っかかるようにアレフはチラッと視線を向け
「なんだよケビン、お前だって女に興味ぐらいあるだろ?」
「アレフのような下品な興味はありません」
「なんだとー!お前男ならだれだってそういう考えを……もふっ」
ケビンは食べかけのサンドイッチをアレフの口に突っ込むとパンくずを払うように手を叩き深くため息を吐いた。
食べ終わったレックスはやり取りを見て笑うと、ふと思い出すように視線を上に向けてぽつりと呟いた。
「クラリスは昔出征した街で出会ったんだよ。」
すかさずアレフは身を乗り出して食いついた。
「おぉ、任務中のナンパってやつっすか?」
「さすがにそれはしてないよ……でも任務中が初対面で、休日に再会したんだ」
「本部勤務だと、ご家族との時間がとれないのではないですか?」
いつの間にか興味深げにケビンも話に参加してきた。
空になったカップに2杯目のお茶が注がれ、レックスは一口飲み込む。
「もちろんレイチェルが小さいうちはなるべく居よう思ってね、3年間の地方配属が受理されてよかったよ」
「いいなぁ……俺も帰りを待ってくれる誰かがほしい」
「まずはその性格をどうにかしないとですね」
お茶を飲みきるとレックスは立ち上がる。
服についた汚れを落とすように腰をはたくと片付けを始めた。
「それと仕事に真剣に取り組むのも好印象のポイントだ。というわけでそろそろ再開しようか」
あたりを見回しながらアレフは片づけをはじめる……そして
「こんな人っ子一人いない場所でがんばってもなぁ」
誰にともなくぼやいた。
***
ロル村
村の中は騒々しさに溢れ、村の中央に集まった数名の男たちが口々にまくしたてる。
「あいつさえいなければ」
「急げ、軍が来るって話だ!」
「あいつのせいだ」
「そうだ!あいつのせいだ」
「あいつをとらえろ!!!」
「とらえろ!」
辺りは夕焼けが終わりに近づき藍色の空に星が輝きだしている。
男たちは手にした松明を振り上げ、武器を片手に村から森へ入っていった。
残された女子供は身を寄せあい、1人の老人を囲むように集まっていた。
「村長様、この村はどうなるのでしょうか」
「あの綺麗な泉と自然豊かなこの村を追われて暮らすことなどできません」
「皆よ……落ち着きなさい。男たちが忌々しい”元凶”をつれてくる。この地に根付くことがないようその体もろとも焼き払うのだ」
女たちがざわめく。子供たちは集められた理由も分からず灯された火のまわりを飛び跳ねて遊ぶ。
「男たちが戻る前に準備をするぞ、さぁ中央に木材を集めてくるのだ」
女たちは言われるまま準備にとりかかった。