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少女の小さな願い事  作者: Marimo
Side.B
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Side B-2

夕食を済ませたレックスは自室に戻り、ベットへ寝転んだまま昨日届いた娘のレイチェルからの手紙へ目を通す。

文面にはおてんばな娘らしさが出ている。


「ベリーのケーキか。クラリスの味はなかなか真似できないぞ」

妻のクラリスはレイチェルとともに離れた場所に暮らしている。

そら豆の形をしたホルン国のほぼ中央に陸軍本部はあり、二人が暮らす村は北部に位置している。

今回の任務が終われば夏期休暇を取り、二人の待つ家へと帰ることができるため、レックスは返事を書くか悩んでいた。

数日後には帰ることができるが、今手紙を書いたとしても同じ頃に到着するのではないかと思うが、レイチェルに催促されていることもある。


「どちらにしても早いほうがいいのなら、書いておくか」

ベットから起き上がると紙とペンを取り出しテーブルに向かって返事を書き始める。

夏の予定については考えていなかったことを素直に書くわけにも行かず、しばらく頭を悩ませていた。



***



まだ薄暗い空の下、寮の玄関先ではケビンが待っていた。

「おはようございます」

「おはよう、アレフはどうした?」

「昼用に食堂からサンドイッチとお茶を持ってくると言ってました。」

「遠足がどうとか言っていたのは誰だったかな」

クスクスと相変わらずの部下に笑っていると当人が嬉々とした表情で戻ってくる。

玄関先で二人を見かけると、慌てた様子で走ってきた。

「おはようございます!待たせてすみません、ちょっと食堂で……」

「サンドイッチはなににしたんだ?」

「え?あ、へへっやっぱレックスさんも楽しみなんすね!えっとチキンとーカボチャサラダとー」

「6時になりました、行きますよ!」

「あ、おいケビン、まだサンドイッチの説明が、」

「うるさい、行きますよ」


陸軍本部第三部隊には、3名のチームが複数ありその内のひとつがレックスをリーダーとしたアレフとケビンのチームである。

真面目の模範であるケビンとムードメーカーであるアレフは同い年の同僚で、正反対の性格がうまくつりあいを取っている。

チームになってから数年経った今では第三部隊の中でも一目置かれる3名となっていた。



寮から市街地へ抜ける道の途中で、レックスから今回の目的と道順を簡単に説明される。

市街地から森へ入り、山をひとつ迂回した所にローレルの山があり、その山の中央部に今回の目的であるロル村がある。

「今回の調査対象は、そのロル村に伝わる宗教だ。資料によると火を讃える宗教らしいが詳細は不明。森で捕まえた動物をその生贄にしているとも言われているが、そのあたりも確認をする予定だ。それと今回の調査日程をロル村に伝えた情報部からの指示で注意してもらいたいのが……」

レックスは二人の服装を見る。

深緑とベージュを合わせたズボンと同じ柄の上着は、課外活動の際に着用する軍の決まった服である。

「軍に対して、良い印象を持っていないことだ。今件が少人数なのは警戒されないこともあるが俺たちが指名されたのはそれだけ危険もあるということだ。穏便に済ませたいがもし身の危険を感じることがあれば村人であっても容赦しないようにと指示が出ている」

「うへぇ……だからこれ持って来させたんすね」

上着に隠れるようにズボンのベルトに付けられた小銃を叩きながらアレフは苦い顔をする。

実践の使用は何度もあるが、民間人への対処には使用したことがない。


「それから、カールベルテの少年兵たちの課外講習の時期でもある。ローレルの山の一部は対象となっているようだ。予定している通り道とはすこし離れた場所でやっているようだから、調査が予定より早く終われば少し様子見くらいはしようと思っている。未来のお前たちの部下になるかもしれないな」

「カールベルテ……私の出身校です。夏期講習では山ではなく海を選択しましたけど……」

ケビンはふと当時を思い出したらしく眉間に皺を寄せてため息を吐いた、あまり良い記憶はないようだ。

「軍人の親を持った子供がいるとかいう頭の良いお坊ちゃま学校だろ?あーぁ落ちこぼれのオレには程遠い場所だぜ」

「それでもこうして一人前の軍人になっているのだから、出身はあまり関係ないんじゃないか?」

「ですよね!さすがレックスさん、的確なコメント!」

「そうですよ、そんなに落ち込まないでください」

「うるせー!お前が言うと意味が違うっての!」

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