硝子のような君
脅えたように辺りを見回す まるで子兎のようだと思ったのが第一印象でした
照れた時に 目が細くなる笑顔を見せてくれるのが好きでした
笑った時に 達観したように静かに輝く瞳が好きでした
怒った時に 二度と口を利いてもらえないのではと思うくらい迫力ある君が好きでした
泣いた時に 何もかもを拒絶して寄せ付けない姿が好きでした
考える時に 必ずこちらを見つめてくる癖が好きでした
こちらを見るときに ふわりと笑うのも
落ち込んでいるときに お疲れさまって言ってくれるのも
疲れているときに 黙って傍らに座っていてくれるのも
全部好き
たまらなくなって 我慢して
純粋な君を何かの色に染まらせたくないと
自分を叱咤しながら
でも ひっそりと泣く姿を初めて見た時に
自分だけが慰めたいのだと
自分だけが癒す存在でありたいのだと
主張し始めた 厄介な心
結局 隣に座るくらいで
大したことは言えなかったけれど
その日からずっと焼きついてしまった君の顔
それから目で追ううちに
抱きしめたくなることも 気に障ることも目にして
とても力強いのだと気づいた 支えなんて必要ないほど
それでも脆いのだと気づいた 時折困ったように目線をどこかへ彷徨わせる
付き合おう
そう先走ってしまった一言を 恐れていたように目を見開く君
ごめんね それだけのやり取りだったのに
襲った衝撃
当たり前だろう? 君も好きでいてくれたなんて確証はない
当たり前だろう? 何故今言ってしまったかが分からない
当たり前だろう? 断られるなんて決まりきった事だった
それなのに 何故此処まで泣けてくる
誰も踏み込めない 誰も慰める事の出来ない
甘い痛みを抱えて時は過ぎていく
関わりあえない日々が辛くて
友達と一緒に話しかけた
苦しそうにしながらも いつもの通りに反応を返してくれる君にほっとしたけど
やっぱり痛い
皆で星空を見上げながら
小さな声で囁いた
未練がましくて 本当にごめん
将来の夢はなあに?
笑顔を意識しながら 脅えさせないように言った
罪悪感なんて間違っても 浮かばせてはいけない
戸惑う君に 泣いていたあの脆い君を思い出して
また要らない一言が飛び出す
俺はね 好きな人と一緒に転ぶことなんだ
気障だなんて分かっているさ
格好つけたがりで はたから見れば滑稽だ
それは自分が一番分かっている
それでも諦めきれずにはいれないだろう?
だって失敗するのが前提なんだ
喧嘩して 転んで 泣いて 互いに怒ったとしても
ずっと一緒にいて もっと君を知っていく
それが夢なんだ
他にも夢はある
それでもずっと一緒にいたいっていうのが一番強い
好きで好きで 仕方ない
聞いてもいいだろうか
これは本当に純粋な興味だよ
君の将来はどうなっていてほしい?
沈黙が襲う
やっぱり余計な事を言ってしまったな
反省した時にはもう遅い
暗闇に目が慣れて 頬を滑っていた雫に今更気づく
慌てて何か言おうとしたら 言葉が紡がれた
貴方と一緒に転ぶ事
たまらなくなって
逃げださないように 捕まえながら口付ける
ごめんなさい 許してください
それは俺の台詞だろうに 本当に敵わない
最初から君に怒れるはずがないでしょう?
気持ちを受け入れてくれて本当に
ありがとう
ぴったり言葉が重なって
どちらからともなく笑い出した




