背中ばかり見てる
ぶっきらぼうで、無愛想で。
口下手で、目つき悪くて。
気の利いた台詞なんて、ちっとも言えないお前だけど。
頭悪くて、不器用で。
勉強できないし、脳味噌筋肉族だし。
何か言うと、とんちんかんな受け答えばかりでいらいらするお前だけど。
何かあったときには真っ先に駆けつけてくれる。
犬のように忠実で、でも盲目的に従うばかりではなくて。
落ち込んでいるときには静かに佇み、
怒っているときにはすぐさま参戦する。
俺みたいに要領よくなくて、周りから恐れられてる事も気にせずに。
俺より弱いけれど、背中を任せられる程度には強いお前。
おい。
そうだよ、お前俺より弱いんだよ。
だから、俺を庇おうとすんのはやめろ。
さっさと逃げろよ。
踏んでやった足を引っ込めようともせずに、ぽつりと一言。
痛いんですが。
分かってやってんだよ、こっちは。
いいか、俺がピンチになったらさっさと逃げろっていつも言ってんだろ。
馬鹿みたいに守ってんじゃねえ。
嫌です。
俺があんだけ喋ったってのに一言だけで返すなっ。
ああ、もうっ。
さっさと行け。
病院行くなり、家で布団被るなりしとけよ。
自分はそんな臆病じゃありませんよ。
やっと長文喋ったと思ったらそれか。
もうふらふらな癖に。意地張るな。
後は俺が片付ける。
頼みます。
少しは休めたし。
さあいっちょやってやりますか。
お前はおとなしくそこで休んでろ。
こくり、と穏やかな顔で頷いた。
倒れる直前だったんじゃねえか。
ふと違和感を感じて、ようやく気づく。
そういや、こいつの顔を見たのは今日では始めてかもな。
俺も含めて、どいつもこいつも。
誰かを庇う馬鹿ばっかりだ。




