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永遠には程遠くても、できるだけ長い時間を一緒に



木の枝が頬を掠める。

痛みが走ったが、足を止めて待っている痛みの方が勝っている事は、百も承知。

握っている手をきつく握り締めると、相手も強く握り返す。


夜空の月は雲に隠れ、星明りもほとんど見えない。

こちらにとっては好都合と、木々の陰に身を潜めながらも走り抜ける。

気配を消しながらも、一刻も早くこの場から、遠く、遠く逃げなければ。



「貴方を殺す」

「ならば、お前を殺す」


にらみ合った途端、すうっと背筋が冷えた。

お互いに看取った仲間の顔が浮かんでは消える。

それと同時に、互いを想った瞬間も気持ちも思い出してしまう。


構えた銃身を下ろす。

相手も腕を下げ、ホルスターに戻す。

潜ませておいたナイフも、取る気になれない。


殺気が消えて、二人見つめる。

仕方無しに笑う。

決意を秘めた瞳で見返す。


「逃げるか」

「ええ」


君と共に。

貴方と共に。

同じ思いを抱えて、一瞬のうちに走り出す。


すぐに追っ手はやって来るだろう。

どちらの死体も転がっていない事に気づいて。

闇に葬ろうと執行人が迫ってくる。


それでもこの時間だけは。

逃げきれるとはどちらも思っていないけれど。

今まで触れ合えなかったぶん、この時だけでも共に。



永遠よりも尊い、確かな時間を。




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