すこしだけ
全てを覆いつくすような 息を呑む桃色の嵐
美しい花のじれったい幕引きを
隣で見ている 麗しい人
緑の黒髪の上に
ふわりと乗った花びら
幻想的だと眺めていたら
目に入ったなんて言いながら
ぶんぶんと犬のように頭を振り出した
ったくもう
綺麗なのはいいけれど こっちにまで飛んでこないで欲しいよねなんて
百年の恋も冷めるような 雰囲気ぶち壊しの発言に
僕は笑うしかない
分かっていたんだ 君はそんな人なんだって
全てが 僕の思い通りにはならないし
全ての 僕の好みどおりに立ち回ってくれるわけでもない
全くの 僕の機嫌を損ねない人というわけでもなし
それなのに
どうしてこんなに
何でもないよ
不思議そうに向けられた視線に 曖昧に首を振る
忌々しいほど満開に咲き誇る花が また散った
動きにあわせて 僕の頭からも花びらが零れていく
なんだか可愛いなんて 固まる僕をよそに抱きしめる君
ああ なんだ
君は確かにここにいる
落ち込む僕にも 怒る僕にも 悩む僕にも我関せずで
勝手に歌って 勝手に笑って 勝手に走る自由な君
温かい体温があって 鼓動を刻んでいる
もう何でもいいや
素直な君なんて気持ち悪いし
自己完結してしまった僕に
どういう意味だと怒ったように
君はだらしない笑顔の僕をその目に映す
鋭くて脆くて よごれている部分もあって
思い通りにならないから君が好き
一人きりで生きている君が好き
それでも皆を愛している君が好き
綺麗なばかりじゃない僕ですが
それでも少しでも君の心を動かせられたなら
ずっと傍にいてもいいですか
そんなたった一つの大事な願いを
繋げた右手に込めて きゅっと握り締めた小さな左手
驚いたようにはにかむように
花と同じくらい 頬を染めた君の横顔に
これは少しくらい期待してもいいのかな なんて
自惚れてしまう僕です
すこしだけ 本当にすこしだけ調子に乗ってみるので
生意気なんていわないで
どうか覚悟をしておいてください




