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この痛みはなんですか?


うるさいくらいの鼓動

心音が聞こえないくらいの静寂


そのどちらでもない

静かな力強い躍動

逸る気持ち



何かを焦っている

不安で

何かを期待しているときの焦燥感にも似ている


甘く疼くような

この胸の気持ちが

ちょっと痛いくらいで

壊れてしまいそうなくらいに繊細で

どうにかしないとすぐに終ってしまいそうで

ほんの少し愛しくて

けれどなにもできなくて



誰かと笑いあいたい

これ以上ないくらいの微笑を乗せ

手を取ってくるくる回りながら


けど そんなことはできない私

素直じゃなくて

返す言葉は一辺倒

いつもいつも 顰め面

美しくも 優しくもない私に

唯一話しかけてくれたのは

あなただったのに


あなたって誰?

思わず自分に問いかける

まだ見ぬ これから出逢う誰か?

それとも 通り過ぎた他人たち?



とうにあの鼓動は消えていた

すうっと引く汗


何かを忘れている

大切な記憶 そして気持ち


格好よくなりたい

芯からの強さとしなやかさを手に入れたい

そう願っていたけれど


ずっと何かを見逃したまま

無意味な時間を無節操に食い散らかし

娯楽に溺れ

麻薬のように常習し

人の気持ちを踏みつけながら

のうのうと生きてきた今までを

リセットできるものなら

過去に飛べるものなら



ふと後ろを振り返り

楽しかったはずなのに

何にも覚えていない事に気がついた

ふと手を見ると

貰ってきたはずなのに

何にも持っていないことに気がついた


知らず知らず表情は消え

目の光も濁っている事に気がついた

いつからこうなったんだろう

醜くなってしまった自分に苦笑しながら


何もかも率直で

でも包含してくれて

察してくれる

支えてくれる

そんな人に似合う存在になりたい

いいや そんな人に

むしろなれたらいい



素直になれずに

照れてばかり

自分の体面を気にして

人との接触を避けていた

何に対しても臆病な自分の頬を打ち

姿勢を正す


するとあの鼓動はまたやってきた

不思議な高揚感と躍動は

きっとこれから何かを起こそうという

自分に対する期待と

まだ見えぬ未来へと吹いていく

一陣の希望の追い風に

励まされているのだろう


ようやく動いてきた

錆付いていた頭と心を労わりながら

これからはたっぷり働いてもらうからと

意地悪い笑みを浮かべて

長い事使わなくなっていた鉛筆を手に取った


頼れるのは一人ではなく

背負うのは自分だけ

そんな当たり前の事をかみ締めて

これからの目標を書き出しながら

動き出す事への不安を希望で塗りつぶして

私はゆっくり目を閉じた




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