出会い
今年もやってきた。寒い冬が。人のぬくもりを感じられる季節が…
「寒~い。ねぇ、ねぇってば。」
「ん?寒いことなんていちいち言わなくてもわかってるよ。」
「なんか翔太最近冷たいよ?」
「そうか?愛香がそう思ってるだけだろ?いっつも思い込みだけは激しいからなぁ。」
「ちょっとぉ!思い込みだけってなによぉ!」
「はいはい。わかったわかった。別に怒ってねーよ。しかし今日は一段と寒い~。」
「ほら~。あ、さっきの言葉そのまま返してあげるよ。『んなこといちいち言わなくて
もわかってるよ。』って。」
「そのままじゃねーし。とにかく寒い。カイロ貸してッ。」
「もうッしょうがないなぁ。ハイ。」
「おぅ。さんきう~。」
いつもこんな会話をしながら駅までいっしょに帰ってた。私たちは高校で出会ったから
いっしょに帰れるのは中央坂の駅までなの。本当はもっといっしょにいたいのに…………
-二年前-
私たちは同じクラスになった。偶然にも偶然が重なって席もトナリになった。最初は、
全然何も思わなかったのに、一年の時、勉強合宿で自由時間の班がいっしょになって、初
めてお互いのことをよく知った。それから、同じ歌手が好きなこともわかり、意気投合し
た私たちはそのまま何事もなく、秋を迎えた。でも、気になって気になってしかたがなか
った。こっちを向いてほしい。お願い。一度でもいいから…。あ、目が合った。すごく嬉
しい。あれ、こんな気持ち…なんて言うんだっけ。
このとき、初めて気づいた。私が翔太のことを好きなんだって。でも、ふられたらどう
しよう。不安な日々が続いた。でも、9月10日、翔太が駅にいた。
「あれれ~?どうしたの?いつもなら帰ってるのに。友達でも待ってるの?」
「いや。花櫛さんを待ってた。」
「え…。私?」
「うん。ちょっと話したいことがあるから、家の近くまで送っていってあげるよ。」
「え、あ、うん。ありがとう。」
そして電車が来た。
「あの…話って…?」
もしかして…?
「あぁ。あのさぁ、俺…花櫛さんのこと…好きなんだけど。」
「え…。」
数秒間私の中で時が止まった。
「やっぱ困るよな。いきなり、好きだなんて言われても…。」
「そんなことないよ!」
車内の乗客が一斉に私のほうを向く。
「ご、ごめん。私もね、蔵持くんのこと、好きなんよ…。」
「え…!ほんとに?」
「嘘つかないよッ。」
「え、じゃあ付き合って…?」
「いいに決まってるじゃん。」
「夢みたい。」
「ほっぺつねってあげよか?」
「やめて。」
こうして、私たちは付き合い始めた。
帰りは絶対いっしょに駅まで帰った。駅からは別々の電車に乗る。
はじめは、時々触れる左手を気にして歩いてた。
今では翔太の右のポッケのなかに私の手はある。