第9話 次の配信ミッション「大きな街を目指せ!」
異世界へのゲートをくぐり抜け、あの広大な草原に戻ってきた俺たちは、さっそくドローンを飛ばして配信を開始した。
「はーい、どうもー。配信はじめます。今回は政府の命令で、この世界にある『大きな街』を目指しまーす」
俺はカメラに向かって、気の抜けたピースサインを送った。
隣にいるあかりが、頬を膨らませて俺の脇腹をつつく。
「天城くん! もっとやる気出してくださいよ! 国会中継されたあとなんですから、国民全員が見てるんですよ!?」
「痛いって。わかってるよ、でも憂鬱なんだよ……」
俺の後ろでは、今回からパーティに加わった佐藤が、リュックを背負い直して苦笑いしていた。
「まー、そう言うなよ。仕事は仕事だ。給料分は働こうぜ」
「佐藤くんは大人の対応ですね……」
あかりが感心している。
コメント欄は、新メンバーの登場に早くもざわついていた。
『やる気ない主人公www』
『あかりちゃん今日も可愛い』
『後ろの金髪誰?』
『ヤンキー?』
『新キャラきたー!』
まずは前回助けたエルフの村に立ち寄り、聞き込みを行った。
エルフたちによると、この森を抜けて街道沿いに進むと、人間が住む『王都』があるらしい。
俺たちは礼を言い、さっそくその街道へと足を踏み入れたのだが――。
「……通れないな、これ」
しばらく進むと、俺たちの行く手を巨大な岩山が塞いでいた。
どうやら最近の雨で崖崩れが起き、街道が完全に埋まってしまっているようだ。
馬車一台通れる隙間もない。
「うわぁ……これ、乗り越えるの大変そうですね」
あかりが岩山を見上げて困り顔をする。
だが、俺はニヤリと笑って後ろを振り返った。
「出番だぞ、佐藤」
「へっ、任せとけ。ちょうどいい準備運動だ」
佐藤が前に出る。
彼は巨大な岩の一つに手を触れると、不敵な笑みを浮かべた。
「俺の能力『爆破』は、触れたものを爆弾に変える。だが、ただ壊すだけじゃねえ……」
佐藤が指をパチンと鳴らす。
「発破!」
ドォォォォォン!!
腹に響くような爆発音が轟いた。
だが、岩はバラバラに飛び散るのではなく、まるで計算されたかのように内側に崩れ落ち、綺麗に道を開いたのだ。
余計な破片は飛び散らず、土砂だけが道の脇に積み上がる。
芸術的なまでの『発破作業』だった。
「おおっ! すげえ!」
俺は思わず拍手した。
ただの爆発じゃない。爆風の方向や威力を完璧にコントロールしている。
「たぶん、ちょうどいいくらいに発破できると思ったんだよな。どうだ?」
「完璧だ! 佐藤と来てよかったよ! これなら土木工事も請け負えるな!」
コメント欄も一気にお祭り騒ぎだ。
『すげえええええ!』
『職人芸www』
『日本の土木技術(異能)が異世界へ』
『佐藤くん有能すぎワロタ』
『ただのヤンキーじゃなかった』
『これがプロの仕事か』
その後も、俺たちは街道を進みながら、凸凹になった地面を俺のナノスウォームで平らに均し、倒木を佐藤が爆破して撤去していった。
冒険というより、完全に道路整備事業である。
『もはや建設会社の配信』
『インフラ整備RTAはじまた』
『このパーティ、バランス良すぎだろ』
視聴者からのツッコミを浴びながら進むこと数時間。
日が傾き、空が茜色に染まる頃。
「あ! 天城くん、見てください!」
あかりが指差した先に、巨大な石造りの城壁が見えてきた。
夕日に照らされたその威容は、まさにファンタジーRPGに出てくる『王都』そのものだった。
「やっと着いたか……」
俺は額の汗を拭い、ドローンを城門の方へ向けた。
門の前には、鎧を着た衛兵たちが槍を持って立っているのが見える。
『うおおおおお!』
『でけえ!』
『これぞ異世界!』
『いよいよ人間との接触か!?』
「よし、それじゃあ……異世界の人間と、ファーストコンタクトといきますか」
俺は少しだけ緊張しながら、ナノに『翻訳モード』の準備を頼んだ。
月給二十五万円の仕事は、ここからが本番だ。
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