第8話 異世界バズって学園大混乱!?
翌日。
学園の理事長室に、怒号が響き渡った。
「お前ら何してくれとんじゃあぁぁぁッ!!」
白髪頭の理事長が、机をバンバンと叩いている。顔が真っ赤だ。
その横では、担任の女熱血教師が、机の上に積み上がった書類の塔に埋もれていた。
「書類が……文科省への報告書と、防衛省への始末書と、マスコミ対応のQ&Aが……あああ、終わらないぃぃぃ!」
先生の目は完全に死んでいた。
俺とあかりは、並んで直立不動で怒られていた。
「『ダンジョン配信しろ』とは言った! だが誰が『異世界との戦争を生中継しろ』と言った! 国際問題だぞ国際問題!」
「いや、でも理事長。支持率は爆上がりですよ?」
俺が口を挟むと、理事長はさらにヒートアップした。
「上がりすぎなんじゃ! 世界中のメディアから『あの少年は何者だ』『日本は異世界を植民地にする気か』って問い合わせが殺到しておるわ!」
あかりがおずおずとタブレットを見せる。
「あのぉ……コメント欄も地獄です……」
『主人公、戦争犯罪人乙』
『いや英雄だろ』
『エルフちゃんはよ』
『特定した。こいつ住所ここだぞ』
『燃やせ燃やせ』
称賛と批判とスパムが入り乱れ、完全に炎上状態だった。
「……俺、悪くないよな?」
俺がボソッと言うと、理事長と先生は同時に叫んだ。
「「お前が元凶だ!!」」
三時間のお説教の末、ようやく解放された俺たちは、疲れた体を癒やすために街へ繰り出していた。
向かった先は、学園近くの高級焼肉店。
昨日の配信で得たインセンティブが、速攻で振り込まれていたからだ。
「やっぱ、ストレス発散には肉だよなー」
「ですね、天城くん! 今日は食べまくりましょう!」
店に入り、店員に案内された席へ向かう途中。
俺たちは『ある人物』を見つけた。
ボックス席で一人、真剣な眼差しでトングを握り、網の上のカルビを育てている金髪の男。
クラスメイトの佐藤だ。
彼は「一人焼肉」の最中だった。
「あ」
俺が声を上げると、佐藤がビクッとしてこちらを見た。
気まずい沈黙が流れる。
「……オッス」
俺が片手を上げる。
「……オッス、オッス」
佐藤はトングを持ったまま、ぎこちなく答えた。
「あ、どうもー」
あかりがぺこりと頭を下げる。
佐藤は顔を少し赤くして、視線を泳がせた。
「……奇遇だな。お前らもか」
「ああ。せっかくだし、一緒に食うか?」
「……ふん、まあ、席を移動するのも面倒だしな。いいだろう」
佐藤は素っ気ないふりをしているが、あからさまにホッとした表情を見せた。寂しかったらしい。
網を囲み、特上カルビが焼ける音を聞きながら、俺たちは昨日の配信について話した。
「すげえな、お前。あの雷撃魔法、どうやったんだ?」
「企業秘密。佐藤の能力は何なんだ?」
「俺か? 俺は『爆破』だ。触れたものを爆弾に変える。……まあ、地味だけどな」
「いや、十分派手だろ!」
肉をつつき合ううちに、なんだかんだで話は盛り上がった。
佐藤は見た目は怖いが、話してみると意外と常識人で、面倒見が良いタイプらしい。
「よし決めた。次のダンジョン配信、佐藤も来いよ。三人ならバランス良さそうだ」
「へっ、俺という火力を求めてるってわけか? ……まあ、二十五万の給料分くらいは働いてやるよ」
佐藤はニヤリと笑い、コーラを一気に飲み干した。
これで、前衛(俺)、中距離爆撃(佐藤)、精神攻撃&通訳のパーティ結成だ。
その時。
店内の壁に掛かっていたテレビから、ニュース速報のチャイムが流れた。
画面には、国会議事堂の中継映像が映し出されている。
官房長官が、神妙な面持ちでマイクの前に立っていた。
『えー、昨日のダンジョン配信における事態を受け、政府としましては……』
俺たちの箸が止まる。
『異世界の存在が確認された今、我が国はかの地との国交樹立、および資源調査を積極的に行う必要があると認識し――』
店内の客たちがざわめき始める。
『つきましては、特務能力者育成学園の生徒を正式な『調査団』として任命し、再度、彼の地へ派遣することを決定いたしました』
テレビの中の官房長官が、カメラ目線でキリッと言い放った。
「……は?」
俺は口を開けたまま、焼けた肉をタレの皿に落とした。
『繰り返します。天城駆くんを中心とするチームは、直ちに準備にかかるように――』
「名指しかよッ!!」
俺の悲痛な叫びが、焼肉屋に響き渡った。
ナノが頭の中でクスクスと笑う。
『おめでとう、駆。これで正真正銘、異世界への出張決定ね』
「ふざけんな! 俺の平穏な日常を返せぇぇぇ!!」
こうして、ただの大学生だったはずの俺は、国家公務員として異世界へ飛ばされることが確定してしまったのである。
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