第4話 ナゾのダンジョン!?
翌日。
なんとか一日遅れの入学式を終え、俺たちは教室にいた。
国立特務能力者育成学園の生徒は、全校合わせても三十人程度しかいない。
だからクラス替えなんてものもなく、俺たちは広い教室にぽつんと集められていた。
適当に空いている席に座ってスマホをいじっていると、恐る恐る近づいてくる気配があった。
「あの……天城くん、隣いいかな?」
昨日の今日で少し肩身が狭そうな、星野あかりだ。
「いいぜ。ここ、自由席だし」
「あ、ありがとう……。昨日は本当にごめんなさい……」
彼女は小さくなって俺の隣に座った。
どうやら昨日の『ネガティブ・ブロードキャスト』事件で、すっかりクラスメイトから「歩く精神汚染兵器」として恐れられているらしい。俺くらいしか話し相手がいないのだろう。
チャイムが鳴り、担任の教師が勢いよく教室に入ってきた。
ジャージ姿に竹刀を持った、熱血体育教師っぽいおねーさんだ。
けっこう美人である。
「よーし、全員席につけ! ホームルームを始めるぞ!」
先生は黒板にデカデカとチョークで文字を書いた。
『ダンジョン配信』。
「さて、さっそくお前らにはダンジョン配信をしてもらう!」
教室中がしんと静まり返った後、俺は思わず大声を上げた。
「はあああああ~っ? なんで俺たちが?」
「ズバリ! 政権支持率回復のためだっ!」
先生が親指を立てて歯を輝かせた瞬間、クラス全員が深く、深くため息をついた。
あまりにも理由がくだらなすぎる。
この世界には、数年前から『ダンジョン』と呼ばれる謎の空間が出現していた。
場所は日本のど真ん中、銀座。
地下鉄の入り口みたいな顔をして突如現れたその穴は、内部が異次元空間に繋がっているらしい。
幸い、中にいるモンスターは現代兵器――銃やミサイルで倒せることがわかっている。
だが、問題は『狭さ』だ。
入り組んだ迷路のようなダンジョン内では、戦車も戦闘機も使えない。歩兵が重火器を持って進むのも限界がある。
そこで白羽の矢が立ったのが、俺たちのような『能力者』というわけだ。
「……というわけで、国民に能力者の活躍をアピールし、内閣の支持率を爆上げするのがお前らの任務だ!」
先生の熱弁に対し、教室の後ろの席からガタッと椅子を引く音がした。
「わりぃ。アホくせ、俺は降りるわ」
立ち上がったのは、金髪でピアスのいかつい男子生徒、佐藤だ。
彼は鞄を肩に担ぐと、不機嫌そうに出口へ向かう。
「やってらんねーよ。俺たちは見世物じゃねえんだ」
佐藤がドアノブに手をかけた、その時だった。
先生がボソッと呟いた。
「月給二十五万円」
ピタリ。
佐藤の足が止まった。
「さらに、動画の再生数に応じてインセンティブも出るぞ。トップ配信者になれば月収百万も夢じゃない」
「くっ……」
佐藤はドアノブを握りしめたまま、プルプルと震えている。
プライドと現金が、彼の中で激しく戦っているようだ。
数秒後。
佐藤は無言で踵を返し、何事もなかったかのように席に戻って座った。
(……チョロい)
俺は心の中でツッコミを入れた。
だが、笑えない。俺も奨学金免除と給料に釣られてここに来た身だ。
『駆、いい機会じゃない』
イヤホンからナノの声が聞こえる。
『ダンジョンの特殊な磁場データは興味深いわ。それに、戦闘訓練の実践としても最適よ』
(へいへい。どうせやるなら、楽して稼がせてもらうとしますか)
こうして、俺たち特務能力者育成学園の一期生による、前代未聞の『ダンジョン配信』が始まることになったのだった。
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