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ナノマシンで魔法チートな俺、政府に放り込まれてダンジョン配信することになりました  作者: 塩野さち


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第15話 土地が欲しいなら、貴族になればいいじゃない

 不法侵入してしまった畑のど真ん中。

 俺たちは、涙目になっている農民の少女に頭を下げた。


「いやあ、本当にすまん。暗くてわからなかったんだ」


「い、いえ……あの、怒ってないですから……」


 少女は巨大な車と、俺たちの身なりに怯えている。

 俺は懐から、前回の報酬である金貨を一枚取り出し、彼女の手に握らせた。


「これ、迷惑料と場所代だ。とっといてくれ」


「えっ!? こ、こんな大金!?」


「いいからいいから。じゃ、行くぞ二人とも」


 俺たちは呆然とする少女を残し、さっさと車に乗り込んだ。

 トラブルは金で解決する。これが大人の(そして公務員の)やり方だ。


 車を走らせながら、佐藤が後部座席でポツリと言った。


「なあ天城。俺たち、昨日から大事なこと忘れてねえか?」


「ん? 歯磨きか?」


「ちげーよ。……配信だ」


 キキーッ!!

 俺は思わずブレーキを踏んだ。あかりが前の座席にぶつかる。


「痛っ! ……あ! そういえば、日本を出てから一度も配信してません!」


「やっべぇぇぇ! インセンティブが! ていうか生存報告してないから大騒ぎになってるんじゃ!?」


 俺は慌ててドローンを起動し、配信を開始した。




『生きてたか!』

『三日間音信不通とかマジで死んだかと思った』

『政府が捜索隊出す寸前だったぞ』

『心配させんなバカ!』


 画面には怒涛のコメントが流れた。

 俺たちは平謝りしながら、これまでの経緯――車中泊をしていたこと、畑に不法侵入してしまったこと――を説明した。


「……でさ、思ったんだけど。やっぱり勝手に野営するのは良くないよな」


 俺は運転しながら視聴者に問いかけた。


「俺たちも拠点というか、自由に使える土地が欲しいんだけど……この世界で土地を手に入れるにはどうしたらいいと思う?」


 すると、コメント欄に長文が流れてきた。


『歴史オタクの俺がマジレスすると』

『この世界観は中世ヨーロッパ風の封建社会っぽい』

『基本、土地は全て「王様」か「貴族」のもの』

『平民が勝手に土地を所有するのは難しい』

『金で買うか、手っ取り早いのは「貴族」になっちまうことだな』

『勲章もらって領地ゲットが王道』


「……なるほど、貴族か」


 俺はニヤリと笑った。

 貴族。悪くない響きだ。

 自分の領地を持ち、誰にも文句を言われずに引きこもれる場所。


「なあ、さっき王様、なんか欲しがってたよな?」


 俺の言葉に、佐藤が察して苦笑いを浮かべた。


「……お前、まさかあの『ホログラム地図』をネタにする気か?」


「ご名答。あれがあれば国家予算レベルの価値があるんだろ? だったら、土地の一つや二つ、安いもんだ」


「うわぁ、悪代官みたいな顔してますよ天城くん……」


 あかりが引いているが、俺の決意は固まった。

 ナノマシンの残量は気になるが、一生安泰な土地が手に入るなら安い投資だ。


「よし、Uターンだ! 王都へ戻るぞ!」


 俺はハンドルを大きく切った。

 黒鉄のタイヤが土煙を上げ、来た道を猛スピードで戻っていく。




 一時間後。王都の城、謁見の間。

 再び王様の前に現れた俺を見て、王様は目を丸くしていた。


「なんじゃ、帰ったのではなかったのか?」


「いやあ王様。俺も考え直しましてね」


 俺は揉み手をしながら、商人のような猫なで声を出した。


「あの『国家予算級』のホログラム地図……特別に出してもいいかなー、なんて思いまして」


「ま、真か!? おお、やってくれるか!」


 王様が玉座から身を乗り出す。

 俺は人差し指を立ててチッチッチと振った。


「ただし! 条件があります」


「条件? 金貨か?」


「いえ、金はいりません。代わりに……俺たちに『土地』をください。それも、温泉が出たり、景色が良かったりする、最高に快適な領地を」


「土地……とな? 貴族になりたいと申すか?」


「形はどうでもいいです。とにかく、俺たちが自由にできる場所をくれれば、この国の都市計画、全力でサポートしますよ」


 王様は少し考え込んだが、すぐに笑顔で頷いた。


「よかろう! 国の発展のためじゃ、安いものよ! 準男爵の位と、王都近郊の未開拓地を与えよう!」


「交渉成立ですね!」


 俺はガッツポーズをした。

 佐藤とあかりも、顔を見合わせてハイタッチしている。

 こうして俺たちは、異世界に来て数日足らずで、あっさりと『準男爵』という地位と領地を手に入れてしまったのである。


 その様子を一部始終見ていた視聴者たちは、画面の向こうでドン引きしていた。


『うっわ……』

『主人公の顔じゃねえよ』

『越後屋、お主も悪よのう……』

『完全に悪代官』

『政治的取引が汚すぎるwww』

『これが日本の公務員か』

『魔王誕生の瞬間である』


 コメント欄が『悪代官』の文字で埋め尽くされていることになど気づかず、俺は「これで安眠できるぞ!」と、邪悪な笑みを浮かべるのだった。


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