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ナノマシンで魔法チートな俺、政府に放り込まれてダンジョン配信することになりました  作者: 塩野さち


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第14話 王様への請求書と、快適な車中泊

 愛車『黒鉄くろがね』を駆って王都へ到着した俺たちは、息つく暇もなく城へと呼び出された。

 謁見の間。

 ふかふかの玉座に座った国王が、身を乗り出して言った。


「おお、待っておったぞ英雄! 実はの、我が国でも大規模な都市計画を行うことになったのじゃ。ついては、あの『光の地図』とやらをもう一度出してくれんか?」


 王様の目はキラキラしていた。

 前回見せたホログラム地図がよほど気に入ったらしい。あれがあれば、どこに街道を通し、どこに砦を築くか、机上で完璧にシミュレーションできるからだ。


 だが、俺はすまなそうな顔を作って首を横に振った。


「いやあ、王様。あれを出すのって、ものすごく『国家予算』がかかるんですよねえ」


「なぬ? 予算とな? 金貨十万枚とかか?」


「はい。特殊なナノマシンを大量消費するんです。ざっと見積もって……金貨十万枚ってところですかね」


「じゅ、十万枚!?」


 王様が玉座から転げ落ちそうになった。

 金貨十万枚といえば、この国の年間予算に匹敵する額なのかな?


「ぐぬぬ……。さすがにそれは……」


「ですよねえ。俺も心苦しいんですが」


 王様は悔しそうに唸り、結局、地図の話は一旦保留となった。




 城からの帰り道。石畳の回廊を歩きながら、佐藤が呆れたように言った。


「おい天城。さすがに吹っかけすぎじゃねえか? タダで出してやればいいのに」


「そっ、そうですよぉ。王様、泣きそうでしたよ?」


 あかりも心配そうに俺を見る。

 俺は肩をすくめた。


「いや、さすがにあれを連発したら、またナノマシンの残量が減るんだよ。俺たちの命綱だぞ? ホイホイ使ってられるか」


 実際、前回のホログラム展開でナノマシンのエネルギーはかなり消耗した。日本で補充してきたとはいえ、無駄遣いはできない。


「まー、それならしゃあないか」


「うん、命には代えられないですね」


 二人はあっさりと納得した。


 その後、俺たちは城下町にある『冒険者ギルド』という新設された施設へ向かった。

 ここ最近、王都で設立されたばかりの組織らしい。


「へえ、個人の揉め事を解決する組織、か」


 受付の看板を読んで、俺は感心した。

 これまでは、例えばドラゴン族のコボルドが人間の店で肉を盗んだとする。すると「ドラゴン族は敵だ!」となり、すぐに軍隊が出動して戦争になっていた。

 だが、ギルドが出来てからは違う。

 「悪いのは肉を盗んだコボルド個人」という考え方になり、ギルドに所属する冒険者がそのコボルドを捕まえて終わり。

 つまり、警察や便利屋のようなシステムが出来上がっていたのだ。


「戦争回避のための知恵ってわけか。異世界も少しずつ進歩してるんだな」


「いいことだぜ。俺らがいちいち仲裁に入る必要もなくなるしな」


 佐藤も満足げだ。

 ギルドへの挨拶を済ませた俺たちは、今日の宿を探すことにしたが――。


「……くっさ」


 俺は鼻をつまんだ。

 夕方になり、風向きが変わったせいか、街全体に生ゴミと汚水が混ざったような強烈な臭いが漂い始めたのだ。

 この世界には上下水道がない。つまり、そういうことだ。


「うっ……これはキツイですね……」


「俺、この臭いの中で飯食うの無理だわ」


 あかりと佐藤も顔をしかめている。

 俺は即決した。


「よし、外へ出よう。俺たちには『動く家』があるんだからな」


 俺たちは王都の宿には泊まらず、再び『黒鉄』に乗って城門を出た。

 街から数キロ離れた、空気の綺麗な草原に車を停める。


「ふー、生き返るわー」


 満天の星空の下、俺たちは車のサイドオーニング(日よけ)を展開し、キャンプ用のテーブルと椅子を広げた。

 ナノが制御する『黒鉄』のバッテリーから電源を引き、電気ポットでお湯を沸かす。

 夕食は日本から持ち込んだカップ麺だ。


「ズズッ……うめえ。やっぱ外で食うラーメンは最高だな」


「車の中のベッドもふかふかだし、王都の宿より百倍マシですね!」


 俺たちは文明の利器に感謝しつつ、快適な夜を過ごした。




 翌朝。

 コンコン、という控えめな音で目が覚めた。

 車の窓が叩かれている。


「……んあ?」


 俺は眠い目をこすりながら、運転席の窓を開けた。

 そこに立っていたのは、粗末な服を着た、現地の農民らしき少女だった。


「あ、あのぅ……」


 少女は巨大な黒い車にビビりながらも、おずおずと声をかけてきた。


「こ、ここで何をしているのですか……? ここは、ウチの畑なんですけど……」


「……あ」


 よく見ると、俺たちが車を停めていたのは草原ではなく、休耕中の畑のど真ん中だった。

 どうやら昨夜は暗くて気づかなかったらしい。


「やっべ……不法侵入じゃん」


 俺たちの優雅なキャンプは、地元の地権者からのクレームという、極めて現実的な朝を迎えることになった。


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