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ナノマシンで魔法チートな俺、政府に放り込まれてダンジョン配信することになりました  作者: 塩野さち


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第12話 異世界初の国境線、そして帰宅

「うーん……地面に棒で描くだけだと、わかりにくいな」


 森と平地の境界にある空き地。

 俺たちは、女騎士団長とドラゴン娘(名前はリュウと判明)を前に、腕組みをしていた。

 『国境』の概念を教えるには、まずお互いの領土を可視化する『地図』が必要だ。だが――。


「地図を持ってきてくれって頼んだよな?」


 俺がジト目で問うと、女騎士団長はキリッとした顔で答えた。


「我々にそのような概念はない! 目に見える範囲が我々の土地だ!」


「原始的すぎるだろ……」


 仕方がないので、ドラゴン娘のリュウに描かせてみることにした。

 リュウは「まかせて!」と木の枝を握り、地面に豪快に線を引いた。


「ここが、おうち!」


 彼女が描いたのは、歪んだジャガイモのような丸と、ミミズのような線だった。


「……リュウ、これは?」


「ドラゴンのお城!」


「……芸術的すぎて俺には理解不能だ」


 これでは交渉にならない。

 あかりが、近くにいた記録係の兵士に「あの、もっと正確に描けませんか……?」と声をかけた。

 すると兵士は、あかりの顔を見た瞬間、ガタガタと震えだした。


「ヒッ……! 申し訳ございません聖女様! 私の画力が低いばかりに……! ううっ、どうせ私なんて、絵心のないゴミ虫です……死んでお詫びを……!」


「ち、違います! そんなつもりじゃ……!」


 あかりの『悲しみのオーラ』が漏れ出てしまい、兵士が泣き崩れる。地図係、脱落。

 見かねた佐藤が前に出た。


「あーもう、まどろっこしい! 俺が境界線を引いてやるよ!」


 佐藤が地面に手を触れる。


「発破!」


 ドカァァァン!!


 一直線に土煙が上がり、地面に深い亀裂が刻まれた。


「どうだ、わかりやすいだろ?」


 ドヤ顔の佐藤の頭を、俺はスリッパ(なぜか持っていた)で叩いた。


「馬鹿野郎! これじゃ『国境』じゃなくて『断崖絶壁』だろ! 交渉決裂させる気か!」


「痛ってぇ……よかれと思ってやったのに……」


 もう、誰も頼りにならない。

 俺は深くため息をつき、空を見上げた。


「……仕方ない。ナノ、上空からのスキャンデータはあるか?」


『もちろん。半径五十キロ圏内の地形データ、全て保存済みよ』


「よし、ホログラム展開だ。ド派手にな」


 俺は両手を広げ、ナノマシンを空間に散布した。


「みんな、ちょっと離れててくれ。……『領域展開・三次元立体地図、3D・ホログラフィック・マップだ』!」


 ブウゥン……!


 低い駆動音と共に、空き地の中心に青白い光の粒子が舞い上がった。

 光は瞬く間に収束し、森、川、山、そして城壁の形を精巧に作り上げていく。

 幅十メートルにも及ぶ、巨大な光の地図が空中に浮かび上がった。


「な、なんだこれはぁぁぁ!?」


 女騎士団長が腰を抜かす。

 リュウも目を丸くして、光の山に触れようとする。


「すごい! 山が浮いてる! キラキラしてるー!」


「これが俺たちの世界にある『地図』だ。これを見れば、どこからどこまでが誰の土地か、一発でわかるだろ?」


 コメント欄も大盛りあがりだ。


『うおおお! SFきたー!』

『ファンタジー世界にオーバーテクノロジーwww』

『文明の利器すげえ』

『これもう神の御業だろ』

『騎士団長の顔www』




 この『光の地図』の効果は劇的だった。

 噂を聞きつけた人間の国王と、ドラゴン族の族長(リュウの本当の父親)が慌てて現場に駆けつけ、このホログラムを囲んで話し合いを始めたのだ。


「ふむ……この川を境界とするのはどうだ?」

「いや、こっちの森は譲れん。代わりに平地の果樹園を提供しよう」


 視覚的な情報は、感情的な対立を驚くほど冷静な議論に変えた。

 俺たちは、ただそれを暖かく(そして少し退屈そうに)見守るだけだった。


 そして、十日後。


 ついにこの異世界で初めての『国境条約』が締結された。

 人間とドラゴン族は不可侵条約を結び、無益な争いは終わりを告げたのだ。


「……やっと終わったか」


 調印式を見届けた俺は、大きく伸びをした。

 達成感はある。だが、それ以上に深刻な問題が発生していた。


『駆、そろそろ限界よ』


 ナノからの警告だ。

 俺たちの体内で共生している医療用ナノマシンは、定期的なメンテナンスと補充が必要だ。

 カプセルの予備も底をつきかけている。これ以上この世界に留まると、能力が使えなくなるどころか、俺たちの生命維持に関わる。


「ああ、わかってる」


 俺は佐藤とあかりを呼んだ。


「二人とも、そろそろ引き上げ時だ。ナノマシンの残量がヤバい」


「マジか。そりゃあ帰らねえとな」


「ですね……アタシもそろそろ、日本のお風呂が恋しいです」


 俺たちは国王と族長、そして泣いてすがるリュウに別れを告げた。


「いやぁ! 行っちゃやだぁ!」


「いやぁじゃないって。……また来るから、いい子にしてるんだぞ」


 俺はリュウの頭を撫でて、ダンジョンの入り口へと向かった。

 大冒険とインフラ整備と外交交渉を終え、俺たちはようやく、愛すべき東京・中野のアパートへ帰ることにしたのだった。


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