第三話:清少納言のドキドキ♡恋愛相談室24時
「清少納言様〜!」
現在、私、清少納言がいる国はバルドゥル王国。この大陸で2番に大きな王国だ。
この国で生まれた私たち転生組3人は皆その頭脳を買われ、王国の元で働いている。私は作家稼業もしながら王族の教育係として、この城に勤めている。
振り返ると、メイド姿の少女が息を切らして駆け寄ってくる。最近、恋愛相談を持ちかけられることが多い。
「どうしたの、ソフィー?」
この子、ソフィーは小さくて可愛い私の同僚。
ソフィーはこの私が認定したうつくしきものリストの筆頭なのだ。たびたび私のエッセイに勝手に出して稼がせてもらってる。メイド姿のドジっ子属性は男受け抜群なのだ。
「実は...」
頬を赤らめるソフィーの仕草も可愛らしい。
「魔法騎士の方からお文をいただいたのですが、どうお返事したらよいか...」
「魔法騎士?あの竜退治で有名な?」
「はい!光源氏様という方で...」
私は思わず噴き出した。
「光源氏って、まさかあの『源氏物語』の?」
「え?」
「あ、いえ、なんでもありません」
どうやらこの世界にも光源氏は存在するらしい。しかも魔法騎士として。
「それで、どんなお文を?」
ソフィーは懐から手紙を取り出した。美しい文字で書かれている。
『夜半の春 君を想ひて 龍を駆く 彼の地抱きて 君へ捧げむ』
「...…なんか壮大ね」
壮大すぎて、なんだか分からないけれど、ドラゴンに乗って征服した国をささげるぜ、といったところだろうか。
前世のままの固定観念では出てこない発想ね。
…勉強になるわ。
「それで、お返事は?」
「相談というのはそのことで…なんとお返事すればいいでしょうか」
私は考え込んだ。この子の恋愛は素直に応援してあげたいけど…
どうにも光源氏という名前がひっかかる。前世で光源氏と言えば、私の宿女である紫式部の源氏物語という小説に出てくる主人公だ。なにを隠そうこの男、大の女たらしで有名である。私の知る限りソフィーの初物を、こんな男に進めていいのだろか。…いやダメだわ。この世界に到底似つかわしくない名前を持つ魔法騎士は、はたしてただ偶然の他人の空似なのだろうか。
……いや、前世でも小説の中の架空の人物な訳で、本物の光源氏なわけないか。いやあ急にこの世界で宿敵の関係者の名前が出て動揺したぜ!
そうだよ、私のお気に入りのソフィーの恋よ。応援しないわけにいかないでしょ。
切り替えた私は前世の知識と、この世界の常識を組み合わせて考える。
「…こう書いたらどう?『空を飛ぶのも素敵ですが、たまには地上でお花見はいかがでしょう』」
「地上で?」
「魔法騎士って、空ばかり飛んでて疲れるんでしょ?たまには普通の夜這、いやデートもいいんじゃない?」
「デート?」
「あ、えーっと、お忍びでお出かけ、ということです」
ソフィーは目を輝かせた。
「なるほど!さすが清少納言様!」
「それに」私は付け加えた。「手料理でも作ってあげなさい。男性は意外と家庭的な女性に弱いものよ」
「手料理...でも私、料理は...」
「大丈夫。私が教えてあげる。『清少納言流・男性の胃袋をつかむレシピ』」
前世の知識と魔法を組み合わせれば、きっと美味しい料理ができるはず。
「本当ですか?」
「任せて。ただし...」
私は人差し指を立てた。
「恋愛成就の暁には、私の『枕草子改訂版』の感想文を書いてもらうからね」
「はい!喜んで!」
藤子は嬉しそうに駆けていった。
私は一人になった廊下で、春の風を感じながらつぶやいた。
「転生しても、女性の悩みは変わらないのね」
でも、それがまた面白い。前世の経験を活かして、この世界の人たちを幸せにできるなら、転生した甲斐もあるというものだ。




