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第二話:方丈の庵にて、時々ドラゴン

鴨長明——今世での名前だが、前世の記憶もはっきりしている。私は小さな庵で一人暮らしをしていた。四畳半ほどの空間に、最低限の家具だけ。——いや、営業マンとやらを毎日死に物狂いでこなしていたような気がする。


「無常だな」

つぶやきながら、彼は湯を沸かしていた。といっても、この世界では魔法で火を起こせるので便利だ。前世より楽になった部分もある。

庵の外で何かが鳴いた。ドラゴンの雛だろう。最近、この辺りによく現れる。害はないが、鳴き声が大きい。

「前世では『ゆく河の流れは絶えずして』なんて書いたが、この世界では『空飛ぶドラゴンは絶えずして』だな」

自分で言って、苦笑いした。

扉を叩く音がした。

「はい」

「鴨長明殿でしょうか」

声の主は若い女性のようだった。扉を開けると、魔法使いの装束を身にまとった少女が立っている。

「はい、そうですが」

「あの...『方丈記リメイク』を拝読させていただきました。感動いたしました」

ああ、また読者か。最近、彼の書いた文章が密かに人気になっていた。現代の感性で中世の無常観を描いた独特の文体が受けているらしい。

「ありがとうございます」

「特に『家を失っても、スライムと友達になれば寂しくない』という部分が...」

「ああ、あれは実体験ですよ」

庵の奥で、青いスライムがぷるぷると震えた。長明のペットである。

「すごいです!本当にスライムと!」

少女の目が輝いた。

「まあ、お茶でも飲んでいきますか」

長明は苦笑いしながら少女を招き入れた。隠者とはいえ、たまには人と話すのも悪くない。

「ところで」少女が遠慮がちに尋ねる。「なぜこんな小さな庵に?」

「大きな家はいりませんからね。それに...」

長明は窓の外を見た。山々が夕陽に染まっている。

「世の中は無常です。でも、だからこそ今この瞬間を大切にしたい。小さな庵でも、心が満たされていれば十分です」

「深いですね...」

「まあ、前世で学んだことですが」

「前世?」

「ああ、すみません。独り言です」

長明は慌てて話題を変えた。転生のことは、まだ秘密にしておこう。

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