表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/40

29 ざまぁはやっぱり甘くない

『今年の芥川河賞・直木気賞、共に該当者なし。これは、28年ぶりのことだそうです』


『寂しいですねぇ。紙の書籍離れが言われる昨今、こういった歴史ある文学賞を取ったものは、業界でも注目作品になるのですが……。ただ最終候補まで残った4作品はどれも素晴らしく、甲乙つけがたいくらい拮抗していて該当なしとなったようですね』


 テレビに映るのは、見覚えのある朝のワイドショー。


 アナウンサーとコメンテーターの、軽妙なやり取りが流れる。


『なんでも、ざまぁと呼ばれる精度の差だったとか』


『それは大きなポイントですよね。ざまぁの流れはカタルシスを引き上げてくれる要素ですし』


『やはりざまぁの見せ場が一番肝心ですよね』


『そうなんです。ざまぁなんです』


 ざまぁ!!!


「いやぁあっ!」


 ガバっと身体を起こす。


「ゆっ……夢か……」


 夢に決まっている。夢に……。


 気づけば陽はとっくにあがっているようで。私は机に突っ伏して寝てしまったせいか、身体のあちこちが痛い。


「あっ! 食堂!」


 昨日に引き続き、今日も大寝坊だ。慌てて立ち上がるがそこで新たな気づき。

 机の上に書き上げた作品の紙はなく、代わりにペラペラのメモ書きが2枚残されていた。


ー多々良葉さん


 昨夜は遅くまでお疲れ様でした。

 初稿、確かに頂きました。


 ルークさんには事情を話してあります。

 本日の仕事は夕刻からでOKとのこと。


 ゆっくりお休みください


   桜庭ー


 それを読み、大きなため息を吐いた。


「よかったぁ……」


 桜庭あんた、やるときはやるじゃない。編集者魂、みせてもらったよ……。


 椅子にポスっと腰を落としなおし、残るもう1枚の紙を手にする。

 それを読んでみると


ー多々良葉さん


 リリィと王子の恋愛モノで、ハッピーエンドはよかったです。

 ざまぁも組み込まれており、そこに至る過程もわかりやすい。

 赤いリボンと言うアイテムも印象に残り易く、キーとしても〇


但し


・ドアマット成分が足りなくて、リリィに共感できない

・魔法のリボンの効力の意味が解らない。説明不足

・王子の存在が浮く。ただ都合のいい存在になり下がっている

・描写不足。挿絵が無い場合、一定の描写は必要

・ざまぁ感・スカっと感が皆無


 などなど、延々と紙いっぱいに「ざまぁが~」と書いていやがった。


 お前は、ざまぁ評論家か! ざまぁ研究家か!


 ざまぁ・ざまぁとうっせぇわ!


 私にしてみたらあれで


『問題は無し!!!』


 なんだよ! 


……いや、あるか……。


 桜庭が指摘しているところはどれも、覚えがある項目だった。


『ぬるめでいいか』


 なんて思ったけど、流れまでぬるめで良いわけが無いじゃないか。


 そして最後の行には


・これならもっと端的に纏めた方が良い。


 とまで書いてあった。


『それだとあらすじと変わらないじゃないか!』

 

 一瞬、キィッ! となったわたくし・タタラバ。


 でもまたしても、その通りだなと思い直す。


 何が足りない? 何が出来ていない? 何が……。


 その「何が」を書いてくれているのだろうが、具体的に「どうすればいいわけ?」と言うのが無く、それを聞いたところで「それを書くのが、多々良葉さんのお仕事ですよぉ~?」って言われるだけだ。


 はい。その通りでございます。


 だから嫌なんだよ! ざまぁ書けないってば……。


 じゃあ、それ以外なら書けるの? という話だが、そのことは「売れない」時点でお察しだ。


 特に「ざまぁ」が苦手という話であり、ホラーなら? 推理ものなら? 歴史ものなら? となっても、結局同じであろう。

 

 早い話、私には「才能が無い」のか「モノを書く・見る力が無い」のか、どちらもなのか。だ。


 段々と凹んでくる。


 分かって居た事が、知らない世界に転移してきてまで重くのしかかってくる。


 桜庭による、タタラバ(私)へのざまぁの一環なのか!?

 とさえ思えてくるのだから、重症である。


 筆を置くか。いやもういっそのこと、筆を折るか。


 そんなことを考えていたら


「タタラバさぁ~ん! 起きてたんですかぁ?」


 呑気な桜庭の声が、開き放たれた部屋の扉のほうから聞こえて来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ