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25 案外なんとかなるもんだ

 その日の午後過ぎに、道具屋のロイスさんが発注していた『ブツ』をルーメン亭に納入してくれた。


「こんな感じになったんだが、一度試してもらえるか?」


 その場の皆が息を呑む中、ロイスさんは被せていた布をバッサァ! と取る。


 出てきたのはそう。元居た(?)世界でよく見かけるたこ焼きの鉄板と、そして。


「パンダちゃんですぅ! 可愛さ満点なのです!」


 威厳がありすぎる、無駄に重厚な真鍮製のパンダ型かき氷機。


 目や耳、帽子までついていて、どこに力を入れたんだ!? と、突っ込みたかったがグッと押さえた。見栄えは悪くないし、子供がみたらきっと喜ぶような気もするし。


 ちなみに桜庭は子供ではない。なのに喜んでいるあたり、お察しだ。


「かき氷機? のほうは、構造的にはこれで氷は削れるはずだ。一応、ここに持ってくる前に試したからな。それより問題は、タコサン? 焼のほうなんだ」


 ロイスさんは、たこ焼きの鉄板の方を撫でながら言う。


「こっちは試そうにも、何を作るのかがわからなかったからな。言われた通りに作ったが……。一度、使ってみてもらえないか?」


 そう言われ「わかりました」と返答した後、冷蔵室(大型冷蔵庫?)的なものの中に入れて置いた、材料を取り出す。


 余談ではあるが、この異世界(?)には、電気と言うものが無い。その代わりに「魔道具」と言うものが存在しているらしい。魔法でどうのと言うのとは違い、鉱石的なもので動かしているそうだ。仕組みはわからないので割愛。わからないものはわからない。 まぁ……。大正時代? あたりにあった氷箱的な物の大型版と言うか、あれに似ているっちゃー似ている。


 一度、鉄板を軽く水拭きしてから、火を鉄板全体に十分に入れる。その後に薄く生地を流し込み、それは勿体ないが丸めずにそのまま廃棄。


 さて。2度目。ここからが本番だ。生地を十分に入れた後、焼けたころを見計らって千枚通し的なものを鉄串で作ってもらっていたので、くるっと回していく。


「ほお! なんだべさー! 初めて見るだべや! すんげ調理法だわさ!」


 ベルンさんが、感嘆の声をあげる。


「これは……見てても面白いな」


 ルークさんも、腕組をしながらも楽しそうに、私の手をじっと見ていた。


 そろそろ出来上がる頃、桜庭が皿を持ってきて


「ソースは私がかけまぁす! 初恋の味ですぅ~」


 と、宣言した。そう。ソースもウスターソース的なものにリンゴとハチミツを入れて、とろみを少し付けたものを用意していたのだ。桜庭の初恋の味とやらは、カレーの事らしいが、言わずもがなスルー推奨である。


 皿に取った丸い球体。タコ焼きにソースが掛かり香ばしさがあたりに漂う。


「熱いので気を付けて食べてくださいね」


 そう注意したのだが、ロイスさんがひとつ取ったと同時に口にいれてしまい「アッチイ! アチ!」と叫んでいる。「燃えてるんだろうかぁ~」と、何食わぬ顔で続ける桜庭。


 どうやら桜庭はテレビっ子だったんだろう。


 いちいち反応が、テレビなんだよ。誰にも伝わらないのに。


 ……はっ! しまった!


 ……私には伝わっているじゃないか。迂闊だ。ちょっと悔しい。


「これは! うまい!」


 ヴィンセントさんが、昨日のバーベキューでタコ苦手克服したせいか、それとも小刻みに切った『海の悪魔』の姿が変わったからか「ふぅふぅ」としたあと、食しての感想を言ってくれた。


「あぁ、うまいな」


 ノールさんも、気に入ってくれたみたいで何度も頷き食べてくれている。


「なるほろっ。ほーなるふぁけふぁ(なるほど。こうなるわけか)」


 口の中が、燃えてるんだろうか~になっているロイスさん。


 味のほうは大好評である。


「ほれはふぁのひみだな。ほうひつふぁ おれもへつふぁいにくるぜ」


 最後の「くるぜ」だけ聞き取れた。多分「これは楽しみだな。当日は俺も手伝いにくるぜ」と言いたかったのだろう。


 最初はどうなるかと思った夏至祭案。やってみると案外どうにかなるもので。


 かき氷のほうも、ベルンさんが作ってくれた苺蜜が絶品だった。ここで意外な才能を発揮したのが桜庭。


「盛り付けは任せてくださぁい!」


 そう宣言した桜庭が取り出したのは──なんと、手作りのスプーンだった。

 木べらを削って形を整えたらしく、アイスを買うと付いてくるアレと同じ形状。

 だが桜庭製には、持ち手には小さな穴が開いていて、そこに端布を通して蝶々結び。

 ……どうして、そんな小道具まで完璧に用意してあるの。

 本気すぎる。


 そのスプーンを氷の頂に滑らせるように挿し、脇に数種類のカットフルーツを添えていた。彩りの配置にまで気を配っていて、果物同士の重なりすら整えている。


「完成ですぅ~! カワイイは外せませんよね!」


 確かに。見た目も可愛くて、所謂「映える」仕様になっていた。


「これはこれで、いい感じだな」


 ルークさんが、何気に嬉しそうだ。


「当日が楽しみになって来たなぁ」


「あぁ」


 ヴィンセントさんとノールさんも、同じように、ニコニコしてくれていた。


 みんなで一緒に過ごすお祭り。


 どんな日になるのか。今からとても楽しみだ。


「あとわぁ~、タタラバさんの「ざまぁ短編」を即売するだけですねぇ~! 楽しみですぅ~」


 おい!!


 桜庭!


 今なんて言った!?!


 そんな話


 『聞いてないよ!!!』

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