2 ざまぁ書いてみた
気づけば、ノートにプロットラインを書きなぐっていた。
もちろん、桜庭をモデルにしたざまぁ物語。あいつにざまぁを食らわせてやる!
筆が走る、走る。まだまだ打ち込める。
そして、練り上げたタイトル。
『そろそろ貴様が滅んでも構わない~桜庭 お前のことだ~』
よし!これで書いてやろう。
そう思ったけれど――
ここで、私の『悪い癖』が出てしまう。
さぁ! プロットを組んでいくぞ!
と言う段階で、細かく色々考えてしまうのだ。
まずドアマット? な展開。
ヒロイン虐げてられているって、それなりの理由なければ虐げる側も、周り全員馬鹿か阿保の団体である。虐げられて、家事・執務・なんなら領地経営もヒロインが全て「幼い頃」から代理で執ってきた。
そんな有能なら、虐げられる以前の問題じゃね?
やり返せるか、その有能さを使って、家を出ろ。
挙句、王太子とか隣国の王族とか高位貴族に「見初められる」
所謂、ヒーロー? 的なポジ。
その王太子たちも、暇なのか?
他に女性が居ない国なのか?
ヒロインも、ヒーローポジがでてきてから性格が変わる系。
あれは本当に、頭の中に疑問符しかない。それまではウジウジしていたのに、急に強気ポジティブになる。転生憑依でも、同じ。性格がブレまくるのは、なぜなのだ?
そしてざまぁの王道『婚約破棄』
婚約破棄の理由が
「君はまるで人形だ」「真実の愛を見つけた」「政略だから」
その後、国が亡ぶ。破滅する。大体そんな感じ。
待て。
どんな脆弱な国なんだよ。
そうでなくてもその後の人生、お先真っ暗になる。
後悔系はまぁ、ありかな? とは思うけれども、浮気するやつはほぼ治らないので、後悔するより先にまた、浮気を重ねて行くだろうなって思ってしまう。
※ここまで、多々良葉・個人の感想。
カルパスをかじりながら、安い缶チューハイ片手にそんな事を考える。
ざまぁに整合性(自分なりの)を考えてしまうと、うだうだと冗長になってゆく。結果、私が書いたものは、どれもこれも非常につまらないものになっていくのだ。
だが!
ざまぁされるのが桜庭なら? と考えると、筆が光の速さで走る。
だって!
細かいこと・難しいことは、要らない。
ただひたすらに、桜庭に制裁をくだせるのだ!
奴は装置でいい。桜庭はざまぁ装置なのだ。
ヨッシャ!
まず、桜庭はドアマットだ!
ぜんぶ詰め込んでやる!
もちろん、虐める義妹だか、義姉だかは、私で結構!
それでなぜか、最後は、桜庭がざまぁされる。
「悲劇のヒロインぶるんじゃないわよ!」
と言って。
ヒロイン(真)私による、ざまぁが展開されるのだ。
私こそ、可哀想な真ヒロイン。虐げられて可哀想だろ! を、これでもか! とウジウジ・グダグダ書いてやる。現実、奴は通話を切りやがったからな! 許すまじ。
ご都合主義?
どんとこい! 関係あるか!
それがざまぁの美学! マナーなんだよ!
(※多々良葉個人の思い込み)
もちろん真ヒロイン(私)は、素敵な王子様とハッピーエンド。
よしよし。
――こうして、カタカタとキーボードをひたすら打ち続け。
深夜2時を回るころに、出来上がった初稿。
これでよかろう。
執筆時間は、脅威の3時間。早い!
あとは校正・推敲だけ……と、原稿を見直していたら、ふと気づいた。
ざまぁされる側のキャラ名が『桜庭』のままだった。
あっぶな!
果たし状みたいに、なるところだった!
ちまちまと、名前を書き直し……。
行ごとに名前の確認をした……はず。
うん、大丈夫。
こうして、出来上がったおよそ五万文字の作品。
早速、桜庭に送り付けてやった。
ボツでも結構。私はちゃんと書いたのだから。
そしてこれ以上書くつもりも、無い!
さて、明日はバイトも休み。
ゆっくりと休日を満喫するのだ!
街中に繰り出して、ネタ探しするのもいいな?
明日から七月。夏本番!
眩しい季節がやってくる!
……まぁ。
バイトと安アパートの往復な日々の私には無縁の、パリピな季節なんだけどもね。
そんなことを想いながら、キシキシと音のなるベッドに潜り込んだ。
夢で桜庭が、私に盛大な「ざまぁ」をしてくる悪夢を見てしまいながら。
だが――
本当の悪夢は、目が覚めてからやってきた。