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夢見幾夜 京の周り  作者: 古月 うい
神は何にも祈れない
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琵琶引きの娘、桜巫女伝説

琵琶引きの娘は目を閉じたまま琵琶をかき鳴らし、泉に一つの物語を語ってくれました。


「昔々、まだ各地で王が争っていた頃、その国々の一つに武国(たけのくに)というところがありました。


武国は元々山奥にあり首都も盆地に置いていたため大変に不利な国でした。


しかし、その国には泉がありました。初代の武国の王はその泉神からのでお告げを受けたそうです。


もし我を祀るなら勝利を授けよう、と。


武王はその通りにいたしました。すると、次々と戦に勝利する。


三回目の戦に勝ったとき、その泉を大々的に祀ることにしました。


そしてできたのが御泉水之社(おいずみのやしろ)でございます。


そこは泉の中に建っておりしかし泉に足をつけたものは濡れた心地がしなかったそうです。


中央に柳と桜が咲き、交互の代にそれは見事に咲いたそうです。


巫女は武王の一族から選ばれました。泉の中には先見の鏡があり巫女はその鏡を見て未来をお告げ致したそうです。


何代もそうして過ぎていきました。


やがて武国は島の三十二の国を支配し、十の国を従えるようになりました。


その頃になるともう泉に対する信仰は薄れておりました。


そして最後の巫女がおりました。彼女が反乱を起こし,武国の首都は巨大な泉と化しました。


反乱を起こした理由は好いたお人を殺されたためだとも当時の武王に求婚されたためとも言われております。


やがてその国は属国の中で一番大きかった国と合併され、その国が島を統一いたしました。




百年が経ちますと、霊泉(れいせん)家という神職の家系が出てきました。


そこには定期的に5年に1歳ほどしか年を取らない女性が生まれました。


彼女たちは御泉水之社に使えておりました。


何百年もそんな時代が過ぎました。


巫女たちは力に体が耐えられず早死にするものも多く、霊泉の時代に10人ほどいたといわれております。


ある巫女は鏡を沈めました。


ある巫女は神社を閉ざしました。


そうしてだんだんとその泉に対する信仰がなくなってきたころ、同じく霊泉家は人数不足で壊滅の危機にさらされておりました。


そこで白羽の矢が立ったのは当時の御泉水之社の巫女であった菊子でありました。彼女は美しい桜色の瞳の持ち主でした。


霊泉家は彼女を勇泉天皇に入内させたのです。そうすれば確実に血筋を残すことができると考えたのです。


彼女は目論見通り皇后となりました。側室であった名家の姫ともよい関係を築き、東宮と姫宮をお産みになられました。


彼女は勇泉天皇より桜巫女という名を賜りました。それ以降、御泉水之社は桜神社と呼ばれるようになりました。


彼女が皇后になるのを見届けた霊泉家の皆は自らばらばらになり、霊泉家は事実上桜巫女たる菊子ただ一人となりました。


彼女は国の神祇官を一人で務めておりました。


やがて勇泉天皇が天寿を全うし崩御なされました。しかし彼女は若く美しいままでした。


やがて世間はそんな彼女を気味悪がり、側室の姫が皇太后となりました。


ある反乱でした。


きっかけは何でもよかったのです。桜巫女は退位させられました。


そして彼女の故郷とも言える桜神社に幽閉されたのです。


しばらくたち、それすら忘れかけられていたころ、皇族に桜色の瞳をした皇女が生まれました。


彼女もまた、ほとんど成長いたしませんでした。


気味悪がった人々は、彼女を桜神社に差し出しました。


すると、中からはあの当時と変わらない美しさの桜巫女が出てきました。


そして彼女は桜色の瞳の皇女が生まれた場合は渡せと言い残して去っていきました。



それから六百年たったでしょうか。


そのとき、外は敵があふれておりました。みなを殺す敵がやってくるのです。


桜巫女は大結界を張り、皆を守りました。


しかし夕菊は自分が最後の桜巫女であると知っておりました。


彼女には弟子がいました。


名門の家の妾腹の姫です。名をシエといいました。


彼女は師匠が崩壊するのを見てしまい、桜神社を本拠地として敵に総攻撃を仕掛けました。


その日のことは語り草になりましょう。


まずシエが敵陣に向かって長いやりで敵を切りつける。


そして浄化士の沙雪が泉神さまに祈りをささげると敵が消滅する。


見落とされた敵がシエに牙を向けると上から参謀役のローザが弓を射る。


その三人はとても美しく、次々と敵を倒していきました。


ほかの人々も敵が入ってこられないように結界ぎりぎりで矢を射る、射る。


またあるものは中に入って剣で、槍で敵を切りつける。


囲まれてもう逃げられぬとなった。相手の数が多かった。


すわや負けると思われたとき、シエが切りつけ敵を切って捨てる、切って捨てる。


それを見た皆は勇。いざ、いざ敵を倒そう!と


戦いは3日三晩続いたそうです。


そしてそれは見事成功し、敵はいなくなりました。


その時にできた王朝が、今の華王朝であります。」


朗々としたよい声で、少女は言い切りそばの小屋に行き今日の仕事に向かっていった。


「琵琶法師…」


珍しい女の子の琵琶法師だ。見たところ14,5歳に見えるけれど、どうして一人なのだろう。


まあ愚問か。盲目なのだから。


明日も来てくれるのかしら…

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