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短編小説

どうか私を連れ去って。

作者: 雨宮雨霧

青春時代。

あの頃はとても楽しかったね。

君の写真にそう話しかける。

どれだけ泣いても笑っても。

あの頃はもう二度と戻ってこない。


久しぶりに夢を見た。

あの時と変わらない笑顔の君を。

元気かな。

メールを打つ手。

走らせては止まってしまう。


会社に行かなきゃ。

早く行かなきゃ遅れてしまう。

君の写真に手を合わせる。

「行ってきます。今日もよろしくね。」

そう言い残して。


響き渡る踏切の音。

聞くたびに君の顔が目に浮かんでしまう。

顔を叩いて、前を向く。

君に情けない姿見せることはできないから。

大丈夫。私は生きている。


昼休憩。

君が好きだった甘いココアを自販機で買った。

プルタブを開けて口をつける。

君の温かい手が恋しいな。

それにしても甘いや。


仕事は失敗できない。

失敗して怒られるのもう疲れた。

これ以上頑張っても。

きっと意味はない。

それでも頑張らないといけない。


今日も一日お疲れ様。

家に帰って君の写真に手を合わせる。

生きてるよ、頑張ってるよ。

大丈夫。安心してね。

涙なんて見せないから。


既読のつかないメールたち。

それでも私は送り続ける。

もしかしたら既読になるかもしれない。

もしかしたら返信が来るかもしれない。

そう思うとずっとメールを書いている。


また朝が来る。

憂鬱だけど今日も頑張るよ。


しんどくないよ、楽しいから大丈夫。

大丈夫って無責任な言葉だよね。

君はいつも大丈夫って言っていたな。


今日も響き渡る踏切の音。

動けないまま時間が過ぎる。

君の顔、声、全部そこにある。

なんで、どうして。ここにいるの。

なんでそこに立っているの。


手を引かれた。

「こっちにおいで。」

君の声が聞こえる。

夢じゃない。君はここにいる。

生きている。


「抱きしめたら辛いの全部吹っ飛んじゃうからね。」

笑顔で君は言う。

抱きしめられた瞬間、何もかもが吹っ飛んでいった。

これからはずっと一緒に居られるよね?

君に問う。


「おつかれさま。ずっと一緒に居ようね。」

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