わたしの話8
私と美麻両方が休みの日
2人とも昼まで寝ていた。
ダラダラ過ごしていると急にチャイムがなった。
美麻が全く出る気がなさそうなので私が出た。
「何その格好。もしかして今まで寝てたの?」
そこには恵吾が両手に荷物を抱えて立っていた。
「ご飯作りにきた。上がるねー」
そう言いながら家に上がり込んできた。
「おっ恵吾やっと来た!」
「2人の休みと被る時がなかったからね。」
「…美麻が呼んだの?」
「サプラーイズ!恵吾の作ったご飯食べたくて…」
「座って待っててよ。すぐ作るから。」
私と美麻はテレビを見ながら出来上がるのを待った。
「直美、美麻出来たよ。」
「うわー!美味しそう。直美早く食べよう。」
出来上がった料理を見て、私は驚き固まってしまった。
「これって…」
「春ちゃんみたいに上手じゃないけど春ちゃんのレシピだよ。」
私の目の前にはオムライスが並んでいた。
「前に春ちゃんから教えてもらってたんだ。食べて見てよ。」
恵吾は私を席に着かせた。
「直美にも料理教えたいって言ってたけどあの子はきっと作らないからって。宗太さんに似て料理苦手だって言ってたよ。」
私はオムライスを直視できなかった。
宗ちゃんと春ちゃんとの日々を思い出してしまうから。
「春ちゃんがいなくなってから来れなかった俺が言うのもなんだけど…宗太さん、春ちゃんと暮らした思い出は楽しい思い出だったでしょ?春ちゃんがいなくなった理由は分からないけど思い出まで悲しい記憶にしてほしくないんだ。今結果がどうであれ、あの2人は直美の事すごく大事に育ててたことは間違い無いんだから。」
「すごく大事にされてた事もわかってるからこそ悲しい…」
私は恵吾の言葉に涙が溢れた。
「直美…俺たちが仲良くなった時覚えてる?高校一年生くらいの時…」
なぜ恵吾と一緒にいるようになったかはあまり詳しく覚えてなかった。
「いつのまにか一緒にいるようになった気がするけど…」
「やっぱり覚えてないのか。俺はその時、直美と美麻に助けられたのに…」
「私も助けたの?…美味しいお弁当分けてもらった事しか覚えてないわ。」
オムライスを頬張りながら美麻が言った。
「俺が男の人が好きなことが高一の時、仲良かったやつにバレたんだ。それからずっと虐められてた。
初めは陰口、それから暴力も振るわれた。
気持ち悪いって言われることもあった。段々と皆がいる教室で罵られるようになってきた。
男が好きって皆んなにバラされて。」
喋りながらテーブルに置いた恵吾の手は震えていた。
「虐めてたやつの1人が言ったんだ。
『俺の事好きだから一緒にいたのか?やめてくれよ。他のやつも狙われるぞ!』
それを聞いてた直美が笑いながら
『藤江君にも好みってもんがあるんじゃない?あなたには好みがないの?え?もしかして全女性がターゲットなの?そんな性癖でも別にいいけど理性はちゃんと持っててね。』
『何でお前にそんな事言われなきゃいけないんだ。』
『男が好きだから男全員狙われるって発想もってるあなたは女が好きだから女全員狙ってますって言ってるようなもんじゃない。重要なのはどんな人が好きかって事よりその人の事考えられるか、欲望を抑えることができるかって事だと思うの。あっごめん女好きのあなたには理解出来ないか。』
『なんだと…このやろう。』
そいつは拳を振り上げていた。
『反論出来なかったら殴るの?そう言う考えの人間なんだ。へぇ。』
その後美麻が『何?何?乱闘なの?混ざっていいの?』って言いながら肩ブンブン回してた。
そっから何もされなくなって、一緒にお弁当食べようって誘ってくれて…」
「そんなことあったっけ?」と美麻と二人顔を見合わせた。
「直美の元々の性格もあると思うけど考えかたとかって育ちが影響してると思うんだ。だから直美の中にも宗太さんや春ちゃんがいるんだよ。」
「…その考え方いいね。つまり私の性格はママの影響ってことで。恵吾オムライスおかわりっ」
「直美に食べてもらいたかったのに。何で美麻がそんな食べるんだよ。」
「私も食べようかな。」
私が食べ始めると恵吾と美麻は笑っていた。
「ゆっくり食べて。直美の分もおかわりあるから。」
久しぶりにオムライスを食べながら宗ちゃんと春ちゃんがいた頃の事を思い出していた。