わたしの話4
みんなで話しているとリビングの飾りと化している家の電話が鳴った。
「私でるから春ちゃんは2人にご飯あげといてよ。」
「私らのことペットみたいに言わないでよー」
美麻の言葉を聞き流しつつ電話にでた。
「はい…はい…叔父の同僚の方ですか?」
電話口で喋ってる人の言っている意味が分からなかった。音は聞こえるけど言葉が頭で理解できなかった。
「直美どうした?誰から電話?」
ぼーっと突っ立って何も喋らない私に春ちゃんが尋ねた。
「宗ちゃんの同僚って人から電話だけど…何言ってるのかわかんない…」
「直美電話代わって」
すぐに春ちゃんが電話を代わり詳しい内容を聞いていた。電話を切ってすぐに美麻と恵吾に家に帰るように言った。タクシーが到着した後病院に行くように伝えていた。
この辺の記憶は今でも曖昧だ。
あとで美麻達に教えてもらった。
気づいたら病院で、ぼんやりしていた。
―なんで病院にいるんだっけ??
そんな事を考えながら、ただボーッとしていた。
霊安室に呼ばれ、寝ている宗ちゃんを見た。
なんでこんなとこで寝てるのか訳が分からずそっと触れてみた。
―宗ちゃんはいつも寝起きが悪いから。
ちゃんと起こさないと。
「宗ちゃん、仕事中に寝ちゃったの?みんな困ってるよ!早く起きてよ!ねぇ!私が春ちゃんのご飯一人じめしちゃうよ!」
体を揺さぶっても目覚めなかった。
「20歳になったら一緒にお酒飲もうって言ってたのに…誕生日まだだよ!ねぇ起きてよ!!」
春ちゃんは私を後ろから抱きしめて
「宗太はもう起きないよ。今まで頑張って生きてきたし…これからはゆっくり寝かせてあげよう。」
なんでこんなことになったのか…
昨日は普通に話してたし
今度また久々に遊園地行こうって言ってたのに。
私は頭の中でぐるぐると宗ちゃんと話していた内容を繰り返してた。
お通夜、葬式全て春ちゃんが仕切ってくれた。
私は喪主だったが何一つできなかった。
まだ頭の中真っ白で、体に力が入らない。
美麻、洋子さん、恵吾が来てくれた。
「直美…少しでもご飯食べておいで…美麻一緒に連れてってあげて…」
洋子さんは美麻に私を連れて行くように言ったが私は手を払い
「宗ちゃんの側にずっといたいの」
とその場から離れなかったそうだ。
宗ちゃんは子供をかばい交通事故にあい、子供は軽傷で済んだと聞いている。
「勇敢だった。」「警察官としての誇りだ。」
と人が話してる言葉がふと耳に入った。
―勇敢じゃなくてもいいから生きていて欲しかった。他に方法はなかったの?なんで子供を助けたの?
私たちのことは考えなかったの?
宗ちゃんの事を責めるような言葉しか頭に浮かばなかった。
もうすぐ私の20歳の誕生日だった。