ふにゃふにゃな話
ひだまり童話館『ふにゃふにゃな話』に参加しています。
今日は木枯らしが吹いて寒い。
木の葉がクルクルと飛ばされているのを見るのは楽しいけれど、早く暖かい寝床を探さないといけない。
『あっ、あの倉庫はどうかな?』
住んでいる町の外れにある倉庫、あそこなら風から身を守れる。
風さえなければ、ぬくぬくの毛皮があるからへっちゃらさ!
『ここは、俺の寝床だ!』
意地悪なボス猫が倉庫に居座っている。
『隅っこでいいから、寝させて下さい』
下手に出て頼んでみたけど、あいつはケチだ。
『さっさと出て行かないと、痛い目にあわすぞ!』
乱暴者には逆らわないのが僕だ。それに、春生まれだから、まだ中猫。ボス猫には敵わない。
この日は、とことんついていなかった。
二番目の候補の木のウロには、親子猫がいて、満杯だ。
『ふみゃみゃ!』
子猫には優しくしてあげたいから、譲る。母猫の迫力に負けたとも言うけどさ。
三番目の候補は、こんな日には風除けにはならないけど、ポツポツ落ちてきた雨からは身を守れる。
公園の小山の中に埋められた土管の中で、風にさらされてブルブルと震える。
少し、雨に濡れたのが良くなかったのかも?
『もしかして、死んじゃうのかな?』
生まれた時は四匹いた兄弟猫も、一匹、一匹とバラバラになった。
どこかで元気に生きていて欲しいとは思うけど、自由猫の一生は短い。
僕は、まだ一歳にもなっていないけど、このまま冷たくなるのかも?
半分、諦めていた。いや、諦めていなかったから、僕は精一杯の力を出して『助けて!』と鳴き続けた。
これが良かった。公園を通りかかった女の人に、僕は保護された。
「こんな寒い中で……お家に来る?」
人間に抱き上げられたのは、子猫の時以来だ。
あの時は、子どもで、ちょっと乱暴な抱き上げ方だったので、暴れて逃げた。
でも、この日の僕は弱っていた。自由猫としての誇りとかいっていられない。
『温かい所に連れて行って!』
抱き上げられて、コートの中に入れてもらった。
温かくて、うとうとしちゃった。
その日から、僕は女の人の飼い猫になった。
お外には行けないけど、温かで身体がふにゃふにゃに蕩けてしまう。
「猫が液体だとは知らなかったわ」
とろとろ、ふにゃふにゃだけど、液体ではない。でも、そんなのどうでも良い。
温かいは正義なのだ!
おしまい