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「だな。妻を殺された男が復讐を果たすも、後は人として壊れていくだけの筈だったが、子供によって救われる。そこで終われば、物語ならそれなりのハッピーエンドかもしれない。だがそれは俺の物語じゃないからな。話はそこで終わらない」
「ああ、復讐は復讐を呼ぶ展開か」
「その通りだ。素晴らしい読みだな。だが、その復讐者は予想外だと思うぜ」
「マフィアではないと?」
「俺もマフィアの奴らが来ると睨んでいたんだが、スペンサーの死に様を見聞きしたせいで幹部連中が怖気づいたそうだ」
「マフィアにしては弱腰だな」
「確かにそう言えなくもないが、幹部連中がメンツより自分の命の方が大事だと考える気持ちも分からなくもない。大事なものが増えると人は死にたくない思いも増える。そういうもんだろ?」
「かもしれないな」
「だが、そうは言っても、やってきた復讐者は大事なものを多く持つ者だった。マフィアの幹部なんかよりもよっぽど多くを持つ者、お貴族様さ」
「そいつは面倒だな」
「ああ。権力者ってのは自分よりも権力がある者が出て来ない限り退かないからな。スペンサーとかいう男の下っ端だった男。サブリナを殺した男だ。名前は確かソロモンだったか。そいつがタイロンとかいう子爵家の三男坊だったらしいんだ」
「それはそれは」
「子爵は馬鹿息子のソロモンに家督を継がせる気は無かったが、かなり可愛がっていたみたいでな。最新型の強化杖をマフィアの下っ端如きが持っていた理由もそれだ。そんな可愛がっていた息子が殺された。しかも仇を討てるだけの権力も持っている。止まる訳がないよな」
「だろうな」
「子爵は息子が死んだことを聞くと、直ぐにどうしてそうなったか調べたようだ。目撃者の多くは口を噤んでいたが、中には話しちまう奴もいる。それでクラウスの名を突き止めた。だが問題があった。クラウスは血縁に貴族が居る」
「しかも子爵よりも大きな権力を持つ辺境伯様か。子爵は迷っただろうな」
「ああ。この領地を治めるオーウェンの親父さんは未だに現役で、その権力は絶大だ。娘には甘いが他には厳しい辺境伯様でな。しかも子爵より貴族としての格が一枚も二枚も上だからな。逆らえば子爵といえど潰される可能性がある」
「ふむ」
「普通に考えれば、お家取り潰しは他の何も天秤にかけられない筈だ」
「だが、子爵は調査を強行した?」
「理由は分からんがな。そしてそれは、ある意味では英断だった。目的が復讐であるにせよ、自身のやりたいことを実行するという意味でな。なぜならオーウェンの親父さんは子爵に対して圧力をかけるなどの行為を何もしなかったからだ」
「なぜだ?」
「オーウェンの親父さんは、娘であるカロリーナや息子には甘かったが、孫に関してはそうでもなかった」
「孫には愛情が薄い?」
「いや、そういうんじゃない。カロリーナはウィルに嫁いだ。ウィルが家長であるのだから、子供のことはウィルが決めるべき。そんな考え方を持っていたみたいだ」
「へえ」
「もしカロリーナが助けてくれと頼んだら、それはそれで直ぐ動いてくれただろう。だが、なるべくウィルたちで対処するのが理想的だと考えたんだろうな。まあそんな訳でオーウェンの親父さんは静観だった」
「なるほど」
「俺たちはといえば、そのことを知らなかったんだが、セスがクラウスのことを嗅ぎまわっている連中が居ることを伝えてくれたことで襲撃があるかもしれないと心構えはあったんだ」
「ふむ」




