2-13
「セスと別れた後は、クラウスの元に向かうことにした」
「ふむ」
「クラウスは敷地内に居たよ。母屋から少し離れたところにある見晴らしのいい場所、そこにあるサブリナの墓前で祈りを捧げていたんだ。もしかすると復讐をやり遂げたことを報告していたのかもしれない。あるいは謝罪、または懺悔か。本当のところは分からない」
「だろうな」
「俺もクラウスの隣に跪き、祈りを捧げた。クラウスは俺に気付き立ち去ろうとしたが、俺は奴の手首を掴み離さなかった。クラウスは睨んできたが、俺は無視して祈りを続けた」
「……」
「そしてサブリナに捧げる様に『クラウスは無事に復讐をやり遂げた。今後は、君の遺した子供たちと共に平穏な人生を送れるように見守っていてくれ』と言ったんだ。それはクラウスに対して『復讐をしたことは知っている。だけど、子供たちの為にこれからは平穏に生きろ』と伝える言葉でもあった」
「ああ」
「だが俺の言葉ではクラウスの心は晴れなかった。クラウスは俺の手を振り解き『その言葉はありがたく思う』と言ってきた。そして『だが!!』と強い語気で言葉は続けられたが、その先は出なかった。俺も沈黙した」
「誰か来たのか?」
「ああ、ケイトリンに連れられて二人の子供がやって来た。子供たちは父親であるクラウスに駆け寄った。クラウスは『自分は汚れているから近付いてはいけない』と言った。だが、子供たちはそんなことお構いなしでクラウスに近付き抱き着いた」
「子供らしい無邪気さだな」
「そして『お父さんは綺麗だよ』と子供たちは口々に言い、笑顔を見せた。その言葉を聞き、子供たちの笑顔を見たクラウスは涙したよ。子供たちは『お父さんどこか痛いの?』と聞き、クラウスは『どこも痛くないよ』と答えた」
「ああ」
「子供たちは『じゃあ悲しいの? お母さんが天国に行ったから悲しいの?』と聞くとクラウスは言葉に詰まる。すると、子供たちは『悲しまなくていいんだよ、お母さんは天国から私たちを見ているから』と言ったんだ。ありきたりな言葉だろう?」
「そうだな。だが、救われる」
「ああ、本当にそうだ。続けて『私たちが笑っていないとお母さんが悲しむよ』と子供たちが言うと、クラウスは『そうだな』と言い、泣きながら笑った」
「そうか」
「子供たちの言葉が、クラウスにどんな心情の変化を齎したのかは分からない。心を浄化されたのか、覚悟を決めたのか」
「あるいはその両方かもな」
「そうだな。クラウスは自ら子供たちを抱き締め、頬にキスすると感謝を述べ、俺とケイトリンに目を向けて強く頷いた。それを見て、これからのクラウスは大丈夫だろうなと思えたよ」
「それは良い話だな。ところでクラウスは二人に交互に目を向けたのか?」
「うん? ああ、ケイトリンはいつの間にか俺の隣に立っていたんだよ」
「寄り添うように?」
「はあ? なんだ? 気になるのか? そうだよ。そういう時はそういうもんだろ? おいおい、なんだよ? そう訝しげな眼で見るなよ」
「ロリコンめ」
「違ぇから。そういうんじゃないから。それにケイトリンは成人して何年も経ってるし、ロリコンとは違うだろ?」
「おいおい、冗談だ。そうムキになるなよ。恋人がかなりの年下だからってロリコン扱いは馬鹿な奴のすることだって知ってるさ。冗談だよ冗談。揶揄ってるだけだ」
「ちっ。まあ、それはともかくだ。そこで話は終わりって訳じゃないんだ」
「だろうな。こんな森の中にいる理由を聞いていない」




