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2-11


「そこでクラウスが目にしたのは、愛するサブリナの命の灯火が消えゆく姿だった。サブリナは魔法の素質が高かったエルヴィンの血を受け継いでいなかったんだ。だから魔法防御力も低かった」


「そんな……」


「暴走馬鹿の強化杖の威力が魔法の素質が高い者が使った場合より低かったとしても、魔法の素質が高くない相手には必殺の威力を有する。つまり、サブリナの命を奪う威力があったってことだ」


「……」


「そして、目の前でサブリナの命の灯火が消えた時、クラウスの魔力は暴走するかのように高まり、周囲の全てを皆殺しにしかねない程に殺意が膨れ上がった」


「……」


「だが、危険を察知したキースが負傷しながらも渾身の力で瞬時に動いた。キースの一撃がクラウスの不意を突き、彼を気絶させたんだ」


「……」


「そして、その瞬間を狙っていたとしか思えない様なタイミングで、街の衛兵が現場に駆け付けて来た。すると、スペンサーたちは暴走した手下一人を置いて逃走した」


「衛兵もタイミングを見てたんだろうな……だが、もっと早く来ていればと思わずにはいられないな」


「ああ、全くだよ…… そう思わずにはいられない。過去を変えることはできないってのにな」


「そうだな」


「ちなみに負傷したスペンサーの手下は、衛兵が治療したんだが失血死した」


「自業自得だ。同情はできないな」


「ただ、誰が殺したって話にはなった。まあ、目撃者は誰もが口を噤んだけどな。キースの家は高級住宅街とういうか、権力者たちの家が集中する場所だ。そして、権力者たち、いわゆる富裕層や政界の連中だな。彼らは辺境伯の下に居るからこそ利益享受できる」


「だから辺境伯の関係者であるキースに、不利益が生じる様な真似はしない?」


「そうだ。とはいえ、人が二人死んでるからな」


「衛兵も『分からない』じゃ帰れない」


「ああ。だが、キースが機転を利かせて、スペンサーの暴走した手下が他の手下と争って死に、その争いの流れ弾を受けてサブリナが死んだということにした」


「それで通じたのか?」


「キースが辺境伯の縁者であることは有名だ。衛兵はそれで納得し、事件終了だ」


「そうか」


「その事件の数日後、シェリーがクラウスを訪ねて来た」


「ほう」


「二人きりで話したようだ」


「どんな会話がされたんだ?」


「それは二人しか知らない」


「そうか」


「クラウスがシェリーを傷付ける何かを言ったのかもしれないし、逆にサブリナが殺されてしまう要因となったのは自分かもしれないとシェリーが言ったのかもしれない。ともかく、それは更なる不幸を呼ぶ要因のひとつとなった」


「まさか」


「数日後、シェリーは自殺してしまったんだ……」


「!?」


「クラウスとの会話が原因か、子供ができなかったことが原因か、もしかしたら他にも原因は有ったかもしれないし、それらの積み重ねかもしれない。だが遺書はなく、どうして自殺したかは本人にしか分からない」


「……」


「ただ、クラウスと会って直ぐの自殺だからな。クラウスに原因があると誰でも思うだろう。だが、キースはクラウスを責めることはしなかった。一発ぶん殴ったそうだがな」


「それで許したということか」


「ああ、恐らくな。きっとクラウスが自分自身を責めているのが分かったんだろう。それに兄貴って立場がそうさせたのかもな」


「ああ、そういう面もあるのか」


「実際のとこは分からないけどな。ただ、クラウスの心がズタズタになっているのは彼を知る者が見れば明らかだった。もう立ち直れないんじゃないかと思う程な」


「知らない俺でも予想は付く」


「だが、クラウスは無理矢理に心を復活させたんだ。復讐を糧にな」


「ああ、そうなったか」


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