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2-10


「そして話は戻ってシェリーだ。この国の金を持つ上流階級の連中はパーティーをよくする。そこで悪意のあるなしに関係なく『子供はまだできないのか?』と聞かれたりしただろうことは簡単に予想できる」


「それは、どの国でも似たようなものだろうな」


「それに、当時、オーウェンは不思議なことに結婚もせず、もちろん跡継ぎも作っていなかった。だから奴が爵位を継いだ後は血縁のあるキースが養子となり、嫡子になると噂されていた。だが、そのキースにも子供が居ないとなると」


「きついな」


「しかも、そんな時だ。シェリーは出会ってしまったんだ。クラウスとサブリナ、そしてその間にできた二人の子供たちにな」


「自分との間に子供ができなかったのにサブリナとはできた。きっと自分は子供ができない体なんだと明確に思ってしまった。想像でしかないけどな」


「おそらく正解だろうな。少なくとも、シェリーのストレスが大きかったことは確実だろう」


「そうだな」


「だがな……そんなシェリー以上の不幸にクラウスは見舞われたんだ」


「え?」


「クラウスとシェリーの再会から数日後の話だ。ある日、クラウスとサブリナは子供たちをケイトリンと俺に任せて領都に行った」


「辺境伯領の主都的な場所か」


「そうだ。そこで偶然キースに会ったそうだ。もともと仲の良い兄弟だったからな。互いにそれなりに幸せな日々を送ると過去に何かあったとしても仲直りできるんだろう」


「そうか」


「そもそも喧嘩したって訳でもないしな。まあともかくキースが自宅に誘い、二人は快くそれを受けた。だが、その選択が不幸を呼んでしまった」


「おいおい」

 

「何時の話かまでは知らないが、シェリーが参加したとある富裕層の家のパーティーで、クラウスが戦争で活躍した話で大いに盛り上がったそうだ」


「厄介ごとの匂いしかしないな」


「シェリーがクラウスと結婚していたことは余り知られていなかったが、シェリーの旦那であるキースがクラウスの兄であることは周知だった」


「ふむ」


「どんな男かだとか、どれほど活躍したかだとか、色々と聞かれてシェリーが注目される。それを面白く思わなかった他の富裕層の女が、自分の知っているスペンサーとかいう男の方が凄いと話し始めた」


「だが否定された?」


「ご明察。その女を嫌う別の女がクラウスの方が凄いに決まっていると煽り、嘲笑した」


「スペンサーとかいう男と知り合いの女は憤慨するだろうな」


「その通り。女はスペンサーという男に後日泣きついた」


「よくあることではあるが、面倒なことだ」


「全くだよ。で、そのスペンサーってのは、それなりに軍で活躍したそうだが、問題を起こして退役させられて裏稼業の人間、マフィアになった」


「見えて来たよ。そいつは女から話を聞いて自分が侮られたと感じたといったところか」


「ああ、マフィアってのはメンツを大事にするからな、侮るんなら思い知らせてやろうとでも思ったんだろう」


「面倒極まりないな」


「ああ。それに自分の能力に自信があり過ぎる奴は、どんだけ凄いと評判の相手でも実物を見ない限り自分の方が能力が上だと思いがちだろ? そういった類の男だったのかもしれんな」


「まあ、そういう奴もよくいるな」


「ある日、スペンサーは手下を連れてキースの屋敷に訪れた。その日がクラウスとサブリナがキースに誘われ日だったんだ。スペンサーたちが屋敷に訪れたタイミングでキースたちも屋敷に来た」


「最悪のタイミングだな」


「全くだ。スペンサーの手下がクラウスの顔を知っていたらしくてな、それをスペンサーに告げた」


「顔が売れているというのも難点だな」


「それも運が悪かったと言えるな。スペンサーはクラウスに近付き喧嘩を売った。クラウスは聞き流した。それを自分の上司が舐められたと感じたスペンサーの手下が暴走して強化杖で魔法をぶっ放しやがったんだ」


「糞野郎だな」


「ああ、本当に糞野郎だ。そいつは年々改良されている強化杖の最新型を持っていたそうだから、それも暴走した要因だろうな。強い武器を持っているだけで自分が強いと勘違いする馬鹿はいるからな」


「糞馬鹿野郎ってことだな」


「全くだ。放たれたのは強化杖から放たれるものとしてはオーソドックスな石弾だったそうだが、最新型の強化杖から放たれるだけあってただの石弾じゃなかった。ショットガンみたいに石弾が拡散されて放たれたんだ」


「拡散攻撃……」


「元々そいつは魔法の素質が高かった訳じゃなかったようで威力はそれ程ではなかった。まあ、だからこそクラウスは油断して反応が遅れ、攻撃を受けちまったんだがな。ただ、持ち前の魔法防御力の高さから少し手傷を負った程度で済んだ」


「そいつは良かった…… ん? クラウスが軽傷ってことは、まさか」


「クラウスにダメージを与えたことで気を良くした暴走馬鹿は続けて二発目も撃った。その石弾はクラウスだけでなくキースとサブリナにも向かった」


「おいおい」


「それを見たクラウスは怒り、暴走馬鹿の両手足を魔法で砕き、取りあえず戦闘不能にすると、サブリナに急いで駆け寄った」


「まさか……」

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