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四人の日常  作者: 曽良紫堂
エンジとお仕事
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「みんな、行ってきます」


 翌日の早朝、愛梨亜達は朝風呂に入るため、別の部屋でぐっすりと寝ているはずのエンジを起こしに行く。

 エンジ達の部屋では一緒に寝ていた飛燕と庵が既に起きていて、二人してニヤニヤとしながらエンジの寝顔を覗き込んでいた。


 有夏が寝起きで顔をショボショボさせているエンジの世話をする傍らで、愛梨亜と杏里沙の二人がかりで飛燕と庵に昨日両親と約束をした教育(・・)を施していく。

 幸いにして庵の方は薄々別に入ったほうが良いと感じてはいたらしく、あっさりと受け入れたのだが、問題は飛燕の方だった。


 やだやだと駄々をこね、(しま)いには泣きべそをかきはじめる彼女に、愛梨亜達はこれは両親が手を焼くのもわかるなと嫌な納得をせざるを得なかった。


 完全にへそを曲げてしまった彼女にどうしたものかと思案していると、右目を固く閉じ、左目は寝ぼけ眼のエンジがやってきて一言「飛燕、めっ」と叱る。

 すると、驚きに目を見開いた飛燕がエンジにごめんなさいと謝りながら泣きついたのだった。






 エンジ達四人が飛燕を強制的に連行した朝風呂からあがると、入れ替わりで庵が風呂に向かう。

 急に一人は寂しかろうと、一旦矛をおさめたとはいえ虎視眈々ともう一度混浴する事を狙っていた飛燕は、彼の後ろを式神の紫昆と久宝が着いて行っており、一緒に入浴するようだと察すると、ズルい!! と内心で叫びを上げ歯噛みする。

 果たして庵と式神のどちらに対してそう思ったのかは飛燕にしかわからないが、その(うらや)みの視線を受けて庵と式神達はぶるりと身を震わせた。

 一連の流れを見ていた愛梨亜達は呆れてため息をつき、エンジはもう一度飛燕に対し「めっ」っと叱りつけ、叱られた彼女はショボくれた犬のように項垂れたのだった。




 庵も風呂からあがり、家族全員で朝食を摂り終えるとエンジ達は帰り支度を始める。


「エンジお姉ちゃんたち、もう行っちゃうのぉ~?」

「もうあっちに行かないで、(うち)から学校に通えば良いんじゃないかな」

「ここからでは遠いですから、そうもいきませんよ」


 それを見た双子が駄々を捏ね始めるが、杏里沙が苦笑いで受け流す。


「大体あっちに帰らなきゃ店(ひら)けないよ? 二人とも来たいんでしょ?」

「うっ……!」

「それはそうだけど……」

「寂しがってくれるのはとても嬉しいのだけれど、私たちにもやることがあるのだから我慢してちょうだい」


 それでも不満そうな双子に有夏が四日堂の事を持ち出すと、双子は痛いところを突かれた様に顔をしかめる。

 エンジが昨日着た嵩張るゴスロリ衣裳を丁寧に衣裳カバンに詰め込みながら愛梨亜が双子へと畳み掛け、ぐうの音も出なくなった双子は、手伝いをやんわりと断られて腕に乗せたミカちゃんと共に暇そうにしていたエンジへと抱き着いた。


「また会える」

「でもぉ……」

「お店で待ってるから」

「そんな事言って姉さん達、向こうに彼氏でもいるからあっちに行きたいんじゃないの……?」


 エンジが左手で交互に頭を撫でながら二人を納得させようと話しかけるも、飛燕はエンジのお腹に顔を擦り付けながら甘え、愚図(ぐず)る。

 庵の方は前に四人が帰省しなかった時に危惧したものの、今の今まで聞くに聞けなかった彼氏の有無を恐る恐る問いかけた。


 すると問われた四人は動きを止め、キョトンとした顔をすると、次の瞬間エンジを除いた三人はクスクスと笑いだす。


「かれし……??」

「エンジ、帰ってきな~。庵、あたしらが彼氏なんて作るわけ無いじゃん。変なこと聞くからエンジが思考の迷路にハマっちゃったよ?」

「知っているとは思いますけど、私たちが一番愛しているのはエンジですからね」

「二人や家の皆には悪いのだけれど、ここだけは譲れないのよ。だから彼氏だなんて論外ね」


 頭を疑問符で一杯にして呆けているエンジと、笑いながら口々に彼氏の存在を否定する有夏達。

 そのあまりにも普段と変わらない反応に、庵と少しだけ不安に思っていた飛燕は安心する。


 呆けていたエンジも、先に支度の終わった杏里沙に肩を叩かれた事で囚われていた思考を取り戻し、そしてゆっくりと庵の方を向く。


「私は愛梨亜と有夏と杏里沙だけでいい」

「う、うん」

「わ、わかったよ。エンジ姉さん」


 どういう思考を辿ったのか余人にはわからないが、それだけ言って何故か自信満々にムフーと息を吐きながら胸を張るエンジに、双子は何故だかわからないが気圧(けお)されてしまい、頷くことしかできなかった。






 そうこうしている内に帰り支度が終わり、使用人や式神達に帰りの挨拶を済ませた四人は、慈円寺家の門前に停められたワゴン車へと乗り込む。

 車種も運転手も行きとは違い、父親の幸庵ではなく式神の金丹が担当する事になり、彼は一流の執事のように一分の隙もないスーツ姿で四人の乗り込んだ車のドアを閉めていく。


 エンジが隣の杏里沙の膝を乗り越えて窓から外を覗くと、見送りには両親とその両親にしっかりと首根っこを掴まれ、じたばたしている飛燕と庵がいた。

 双子が何故捕まえられているかと言えば、四人に付いていこうとして、しれっと車に乗り込もうとしたからで、青筋を立てた燕と苦笑いの幸庵によって確保されたのだった。


「エンジ、体には気をつけてね? 愛梨亜達もよ!」

「皆、お店に行くときはよろしく頼むよ」

「うぅ~やっぱり行かないでぇ~、お姉ちゃんたち~」

「僕らも一緒に連れてってよぉ~」


 燕を皮切りに次々と声をかけてくる家族に、四人は笑顔で言葉を返す。


 そして落ち着いた所を見計らい、金丹が車を発進させるとエンジが窓越しに家族へと挨拶をする。


「みんな、行ってきます」

「行ってらっしゃい」


 見送りに出ていた家族達は各々手を振りながら、そう言ってエンジ達を送り出したのだった。


短いですが、今後もこのくらいの文字数だと思われます。

まぁ、まだ書いてないので何とも言えないんですけどね!

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