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四人の日常  作者: 曽良紫堂
エンジとお仕事
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「だいじょうぶ……お姉ちゃんだから……」


「燕尼、かえっ――」

「エンジおねーちゃん!」

「エンジ姉さん!」


 嬉しそうに仁王立ちしているエンジを見た燕の喋りを遮って、飛燕と庵が喜びの声を上げた。

 既に先程までの母との言い争いなど頭からスッポリ抜け落ちた二人は、一目散にエンジへと駆けていき、小さな姉に向かって飛び込む。


「「お帰りなさい~~!!」」

「ぐえっ」

「グフッ」


 顔をグシャグシャにして泣きながら飛び込んできた二人を避けられるほど俊敏に動けないエンジは、そのままタックルを喰らい廊下に押し倒され潰れた蛙のような声を出したが、危機を察知したミカちゃんが身を呈して身体を後頭部へと差し込みクッションとなった事で頭を打つことはなかった。


 双子はエンジのそんな状況にも気付かず、嬉し泣きをしながら抱き締め、エンジもそんな二人の頭を順番に撫でてやる。


「大丈夫ですか、エンジ?」

「だいじょうぶ……」


 廊下には後ろから付いてきていた杏里沙と金丹がおり、声を掛けつつ近付いて来ていた。


「そうは見えませんけど、とりあえず怪我はしてないみたいですね。頭を少し上げてください」

「うん……」

「ウニュ」


 杏里沙は心なしかぐったりとしたエンジとグズグズと泣いている双子を見てうっすらとため息を吐くと、エンジの下敷きになっているミカちゃんを救出して小さくお礼を言った。

 縫いぐるみの身体は綿が片寄ってしまっていたが、ゆっくりと震える腕を上げ、丸い手で器用にサムズアップをするとガックリと意識を失った振りをする。杏里沙は芸達者なミカちゃんに苦笑しつつその身体を揉みほぐして綿の位置を整えていった。








「飛燕、庵。二人とも言うことがあるわよね?」

「うぅ~ごべんなざい~」

「うぅ~もうじまぜん~」


 エンジが押し倒されてから暫くののち、使用人と式神達によって復旧され綺麗に片付けられた大広間にて、散々暴れまわった双子は正座で大泣きしながら反省させられていた。



 エンジが押し倒されたのち、二人を宥めるのは不可能だなと察した杏里沙がミカちゃんを救出していると、燕が近くまでやって来て、泣きじゃくりながらエンジに甘える双子の姿に頭を抱えたが、

「燕尼には悪いけど、落ち着いたなら良しとしますか」

 と溢すと、杏里沙に挨拶をし金丹には指示を出す。

 金丹を通じて通達されたその指示を受け集まってきた使用人と式神達は、てきぱきと双子が荒らした家中の場所を片付けていき、十数分もすればほぼ元通りになっていた。


 その頃には双子も少し落ち着きを取り戻しており、エンジを解放すると共に、燕のお説教が開始される運びとなったのだった。


「エンジも大変だったね。あんなに抱きつかれてちゃってさ」

「だいじょうぶ……お姉ちゃんだから……」

「かなり強く抱きつかれていたけれど、痛いところはないかしら?」

「だいじょうぶ……お姉ちゃんだから……」

「今二人は見てませんから、見栄を張らないで良いんですよ?」

「……ちょっと脇が痛い……ぐすっ」


 お説教をされてべそをかいている双子を遠目に有夏がエンジに同情し、愛梨亜は身体の心配をする。


 大広間の片付けが行われている最中に離れにやって来た愛梨亜と有夏は、遠い目で双子に揉みくちゃにされながらも頭を撫で続けるエンジを目撃してしまった。

 そうやってエンジが姉としての器を見せている以上、助けに入るのも憚られたので杏里沙と共に見守るしかなったのだ。


 何を聞かれても棒読みで同じ返答しかすることが無くなっていたエンジに、杏里沙が気を抜いて良いのだと促すと、左手で両脇を順々に擦りながらちょっとだけ涙目で痛みを訴える。


「やっぱり痛かったのね……」

「加減してるようには見えませんでしたからね……」

「は~いエンジ、ちょっとだけ手どけてね~。治しちゃうからさ」

「……はい」


 愛梨亜と杏里沙が自然な動きでさりげなくエンジの前に立ち双子から見えないよう壁となると、その間に有夏が膝を付いて治療を始めた。

 片手でエンジの動かない右手を支えると、もう片方の手で患部に触れる。すると、触れた手が光を帯びていき、エンジの痛みはみるみる内に引いていった。


 有夏の治療中、愛梨亜と杏里沙は会話続けながらチラリと横目で双子の方を伺う。向こうでは未だお説教が続いており、此方を気にする様子はない。

 自分達のせいで大好きな姉が身体を痛めたと知られると、余計に落ち込ませる上にエンジの頑張りも台無しになってしまうので気付かれずに済んで助かったと言えた。



「何度も言うけど、二人の事は私もお父さんもとっっっっっても大事に思ってるの。もちろん(ウチ)にいる皆もね」

「……うん」

「……はい」

「だからどうでもいいなんて事は絶対にないのよ。蓮堂や祓い屋の事は私とお父さんのお互いが伝えたと思ってうっかりしてたのよ……ごめんね?」


 お説教の方は佳境に入ったようで、燕が熱の入った身振り手振りで双子の事をいかに大切に思っているかを伝えている。双子の方も意気消沈してはいるものの、母の言葉に嘘はないのだと悟ったようだった。

 次いで燕が自分達の失敗を恥ずかしがるように謝ると、飛燕と庵は手で涙を拭いながらクスリと笑う。


「二人には話してない事もあるけどね、それは意地悪で隠している訳じゃなくて、聞く必要のない事だから話さないの。そう言う事の大半は知ってるだけでも碌な目にあわないから」

「そんな事があるの?」

「聞いた事がないよ?」

「あるのよ、ホント困ったことにね。だから、これからも二人には聞かせる事はまずないと思うわ」

「お姉ちゃん達には?」

「姉さん達には教えたりしてないの?」

「燕尼はねぇ……何と言うか……」


 そう言葉を濁しエンジ達の方を見る燕の顔はとても複雑そうであり、続く言葉は出てこない。

 有夏の治療を受けていて聞いていなかったエンジは、母の目線の意味を汲むことが出来ず不思議そうに首を傾げる。


「燕おばさま。言っても良いのよ? エンジも聞かされてないけど、いつも勝手に関係したトラブルに巻き込まれてるって」 

「愛梨亜……そんなにはっきり言わなくても……」

「良いんですよ、おばさま。事実ですから。ね、エンジ?」

「うん。……ごめんね?」


 愛梨亜の言葉で話の次第を知ったエンジは、それを肯定し一言謝る。

 曖昧な笑みを浮かべ、その場の全員を見回しながら発されたその謝罪には、幾つもの意味が含まれていたのだった。

短い上に話もあんまり進んでないですが、そんなもんだと思って下さい。


また続きが書けたら出します。

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