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四人の日常  作者: 曽良紫堂
エンジとお仕事
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「ただいま」


 慈円寺家次女の飛燕と長男の庵は中学一年生で双子の姉弟である。

 背丈は年相応の高さであり、飛燕は明るい性格で庵は姉と比べれば若干内向的なきらいはあるが、双方ともに初対面の者にも物怖じしない社交性がしっかりとある。

 顔つきと言えば男女の双子とはいえ、双方はもちろん長女のエンジとも非常に良く似ており、なんなら諸事情により成長が遅いエンジの方が幼い印象を受ける。

 姉弟三人が並ぶと初めて見る者はその顔つきに身長差も相まって、例外無くエンジを彼女らの妹だと誤解するほどだ。

 学校では同級生からは頼りがいがあると人気者で大人からの印象もいい。


 周囲でも評判の飛燕と庵だが、そんな二人の唯一の欠点とされているのが、とても重度のシスコンでありブラコンであるということだった。

 そのコンプレックスの対象は双子のお互いは当然として、実姉のエンジに愛梨亜たち三人娘も含まれる。


 思春期に有りがちな恋の話で想い人にお互いの名前が上がれば、君には相応しくないなどと独占欲全開で睨み付け、お互いの悪口を耳にした日には相手方に怒鳴り込み、エンジや愛梨亜たちという親愛なる姉たちの事となれば何を置いても最優先になる。

 コンプレックスが発動してしまうと非常に傍若無人になるが、その唯一の地雷にさえに触れなければ、とても人当たりの良く面倒見のいい優等生だというのが非常にタチが悪かった。


 そんな実に厄介な二人の現在はというと…………。





「二人とも、もういい加減にしなさい!」

「どうせ今日もウソなんでしょー! やっちゃえ柴昆(しこん)!」

「この前も帰って来なかったじゃないか! やっちゃって久宝(くぼう)!」


 そこかしこで暴れ回り、嵐が来たのかと見紛うほど大荒れになった離れの大部屋に立て籠る双子に対し、その母親である燕の怒声が響き渡る。

 その怒気は大部屋の外で襖を閉じ、周りを固めている燕の実家の蓮堂(はすどう)家から引き抜かれてきた、祓い屋としても百戦錬磨の使用人達をも震え上がらせる。


 しかし、飛燕と庵と言えば、そんな母の怒りを逆に飲み込むほど強烈な癇癪を起こしていた。

 やり場のない鬱憤で半泣きになりながらも、それを発散するためにもっと暴れてやろうと、双子が無茶をして怪我をしないよう見守るために近くに控えていた式神たちをけしかける。


 動物型の彼等は燕個人の式神で主な仕事はその姿を生かした潜入任務だったりするのだが、今は子供たちの護衛と側仕えも兼ねているために命令権は双子にもしっかりと与えられていた。

 その為、命じられた式神たちが獣の顔を歪ませて「マジかよ……」と言った面持ちをした後、困ったように燕の顔色を伺う。


「どうしたの柴昆! 行ってよ!」

「久宝? 暴れてくれればいいんだよ? 何で行ってくれないの? 久宝なら出来るよね? ねぇ久宝!?」

「飛燕、庵! その子たちを困らせるのはやめなさい!」


 なかなか動こうとしない式神たちに双子がヒステリックに詰め寄り、その身体を掴んで揺さぶるが、彼等は引きつった顔をしながらも首を横にブンブンと振り決して動くことはなかった。

 見かねた燕が双子を咎めるが彼女らは聞く耳を持たない。


「二人とも、その子たちが嫌がってるんだから止めなさい! 大体、今日こそちゃんとエンジ達が来るって言ってるじゃないの!」

「そんなの信じられないよ! 二回も嘘つかれたんだからー!」

「だからっ!! 嘘じゃなくて、二回ともエンジ達に急な事情があって来れなくなったんだって言ってるじゃない!」

「それだけじゃない! お母さんの仕事もそうだ! 今更継がせる気がないなんて……。皆、僕らに重要なことは何一つ教えてくれないじゃないか!!」

「そーだ!そーだ! 皆、嘘と隠し事ばっかりで私たちの事はどうでもいいんだ!」

「それは……」


 言い返され、痛いところを突かれた燕が言葉に詰まる。

 庵から漏れた言葉が、ここまで大暴れすることとなった双子の本心の一番大きな要因だったのだろう。


 実際、祓い屋や蓮堂の仕事をやらせる気がないと伝え忘れていたのは、確かに燕と幸庵の責任であり、その為にと努力してきた二人のショックは大きかった。

 しかも姉のエンジ達が祓い屋として活動しているというのが余計に話をややこしくしている。

 自分たちは認めて貰えないのに姉達は認めて貰えているという状況に、大好きな姉達を誇る気持ちと嫉妬心がごちゃ混ぜとなり、少しずつ積み重なっていた学校での新生活のストレスも相まって二人はもうどうしようも無くなっていた。

 故に今、悪い事だとは分かっていながらも大爆発してしまっていた。

 エンジ達が実家に帰ってこない事や約束を破られた寂しさも嘘ではないが、それは引き金の一つでしかなかったのだった。


 しかしながら、それらの事情を鑑みても双子はいささか暴れすぎではあった。

 情状酌量の余地はあれど、状況は教えた術を悪用しているといってもいい。これ以上暴れるのならば、親としては兎も角として術を教えた師匠としては見過ごすことは出来ない。


 燕は断腸の思いで自分の失敗を棚にあげ、二人を罰する決意を固める。


「……二人の事は大事よ。どうでもよくなんてない。本当よ? でもね、これ以上癇癪を起こして術を使うなら私は師匠として罰を与えなくてはいけないわ」

「……! そっ、そんなの怖くないよっ!」

「ぼっ、僕らは脅しには屈しないよっ!」

「……そう。残念だわ。飛燕っ!庵っ!」


 師匠としての顔を出して凄む燕に、飛燕と庵は腰が引けながらも悪態で返す。

 予想通りの反応に落胆し内心で親として不甲斐なく双子に申し訳ないと思いながらも、仕方なく師匠としての責任を果たそうと燕が動こうとしたその時、ズバンと音がして勢い良く襖が開いた。

 突然響き渡ったその音に驚き、全員が音の出所を見る。


「ただいま」


 襖の向こうに居たのはゴスロリ姿で嬉しそうにニッコニコとしたエンジだった。


続きはまだ書けてないので、書けたら出します。

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