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四人の日常  作者: 曽良紫堂
エンジとお仕事
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「……? いかないの?」


 エンジが柊と依頼をこなしてから数日が経ち休日となった。

 途中あった学期末試験を無事に乗り越え勉強の成果が出たエンジの点数に、何かと忙しい合間を縫って教えていた愛梨亜達三人はホッと一息つく。

 試験期間中は部活やバイトを控えるのが校則で決まっていたが、八巻の事もあり四人はそれを無視し四日堂を開いていた。当然、八巻も働く事になり十分な勉強の時間が確保できないため、愛梨亜達がわざわざ彼の実家に許可を取り終電の時間まで勉強の面倒を見ることとなった。

 そうした甲斐もあり、エンジと八巻のテストの成績は最上位に食い込むとまではいかなくとも、学年でも上位の位置を取ることが出来た。

 なお、各教科のトップ3は愛梨亜達三人が同点で独占している。

 休日となったことで柊に言った通り、それまで放課後に毎日開いていた四日堂を休みにして、四人とエンジの肩に引っ付いて人形の振りをしているミカちゃんはテスト結果を携えて、慈円寺の実家に帰省しようとしていた。


 エンジが愛梨亜たちに着せられた前回とは違うデザインのゴスロリ姿で電車に揺られ地元の駅へと着くと、改札の外にエンジの父親である慈円寺(じえんじ)幸庵(こうあん)が待っており、彼女達に気付くとにこやかに手を振って出迎える。


「お帰り、燕尼(えんじ)に愛梨亜ちゃん、有夏ちゃん、杏里沙ちゃんも。皆、元気だったかい?」

「ただいま、とうさま! 元気だった」

「お久しぶり、幸庵おじ様。こっちは変わりないわ」

「いつもより忙しかったけどね」

「お迎えしてくださってありがとうございます、おじさま」


 父親を見つけたエンジが笑顔になり足を引き摺りつつも、ぽてぽてと駆け寄って来るのを幸庵は受け止め抱き締めると、頭を撫でた。

 次いでエンジの後ろから泊まり用の荷物を持った愛梨亜達が近づいて来るのに気付くと、互いに挨拶を交わす。

 側を通りすぎて行く他の客の視線があったが、家族団欒の暖かな空間がそこにはあった。


 挨拶もそこそこにエンジの荷物を受け取った幸庵が、駅近くに停めていた車へと皆を案内する。そのまま四人分の荷物をトランクへと積み込み、幸庵の運転で慈円寺家へと向かうことになった。


「そう言えば、幸庵さん。お迎えは珍しく燕さんじゃないんだね」

「ああ、有夏ちゃん。お母さんはちょっと手が離せなくてね。変わりに僕が来たんだ」

「おばさまが手が離せないなんて、何かあったんですか?」

「いやー、飛燕(ひえん)(いお)がちょっとね……」

「ああ、そう言うことね。これは大変になりそうだわ……」


 進みだした車内で五人が軽い近況報告と談笑をしていると、エンジを挟むように後部座席に座った有夏が幸庵へとちょっとした疑問を問う。その問いに苦笑いをした彼が答えると有夏の逆隣に座った杏里沙が何か深刻な事態なのかと疑った。

 なおも言葉を濁しつつ幸庵が答えると、二人の間に座ったエンジは頭に疑問符を浮かべ、反対に助手席の愛梨亜は全てを察し、この先の困難を憂いた。


 そんな事がありつつも車は順調に進んで行き、慈円寺家の立派な門の前に止まる。


「さ、付いたよ。僕は車を向こうに停めてくるから、皆は荷物を持って先に行ってて」


 幸庵がそう言うと四人は車を降りて積み込んでいた荷物を下ろす。そうして作業をしているのだが、愛梨亜達三人はいつもなら誰かしら出迎えに出てくるはずの使用人や式神らが一向に来ない事に気付く。


「……ねえ、何か家が騒がしくない?」

「いやね、有夏。私には分からないわ」

「……ドタバタ聞こえますね」

「杏里沙も止めてちょうだい。分かりたくないのよ」

「ナンカ……サケビゴエミタイナノ(叫び声みたいなの)キコエナイ(聞こえない)?」

「ミカちゃん、それはきっと幻聴よ。幻聴」


 車から降りるエンジの介助や荷物を引っ張り出している最中、門の奥が騒々しい事に気付いた愛梨亜達三人は若干顔を引き釣らせる。何やら不穏な雰囲気を感じて、ミカちゃんもうっかり人形の振りをするのを忘れていた。

 皆、屋敷から門までは少し距離があるというのに、ここまで聞こえてくる騒音のせいで騒動の大きさを悟ってしまっていた。


『二人とも、もういい加減にしなさい!』

「あ、かあさま」

「……ほったらかしにしたのは不味かったわね」

「これは大変になりそうですね……」

「……まぁ、飛燕も庵も元気そうで何よりってことで」


 唐突に響いてきた母の声にエンジが呑気な反応をする。とうとう落ちた母の雷を聞いて三人はこの後どうやって双子を慰めるか考え、門を越えられないでいると、そもそも何でこんなことになっているのか知らないエンジは何でもないように一人さっさと門を越えていく。


「……? いかないの?」


 ついてこない三人に振り返ると肩に乗ったミカちゃんと共に首を傾げた。


「そうか、エンジは知らないんだっけ」

「双子からすれば、私達が二回も約束をすっぽかしたことになってるのよね……」

「前にこっちに来た日は兎も角として、前回の休日は八巻君のせいで行けなかったのをエンジもわかってるはずですけど……」


 目の前でヒソヒソと話をする三人に、無視されたと勘違いしたエンジの頬が不満で徐々にぷっくりと膨らんでいく。

 それを見た愛梨亜達は慌てて近寄って、機嫌のなおった彼女の手を引いて未だ騒がしい家の中へと入っていった。

最近は回路をいじって失敗して、電池焦がしてトラウマ作ってました。


あと、ミカちゃんの台詞は自分が読み辛かったのでルビを振りました。

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