「頑張ったね」
書いてみたらミスみたいになってどうかなと思ったけど、まあいいかという精神
なんでこうなったのだろうか。私は駅に向かう道すがら、ずっとそればかりを考えていた。
最近の流行りに乗って投資で資産を作ろうと証券会社に紹介された証券を買って、リスク分散の為に不動産屋に紹介された物件も多額のローンを組んで買った。
順調に利益が出ていたことに満足せず将来のためだと、今度は為替に手を出そうかと思っていた矢先、歴史的な経済ショックが起こり手元の証券は全て紙屑と化した。
手痛い損失を出したが、まだ買った物件の家賃収入で賄えると安堵していたところに、保守点検で発覚した不具合によって多額の修繕費が必要になりローンの返済は滞り始める。悪いことは続くもので住民の火事によって私の物件は事故物件となり借り手が減少し、ローンが全く返せなくなった。
毎月の赤字で資産は無くなり、担保にしていた物件は取り上げられ多額のローンだけが残った私に妻は離婚を突き付ける。妻や子供達の事を考えれば離婚届に印を押すしかなかった。
そして今、弁護士に相談するために駅の改札を通る。うつ向いて歩いている私はいつの間にかホームに立って電車を待っていた。あとどのくらいで電車がやって来るのか。電光掲示板を見るとすぐに来るようだ。
待っていると後悔ばかりが頭に浮かんでくる。あのときああしていれば、こうしていればなんて、どうにもならない事を考える自分に嫌気が差していた。
ホームから電車が来る方向をボーッと見ているとヘッドライトが見えた。どんどんとホームへと侵入してくる先頭車両を見ていると、その姿に強烈な引力を感じた。抗わなくてはと思ってもその誘惑はどんどんと強くなっていく。
どんどんと、どんどんと、強く、強くなっていくそれに私の意識は塗り替えられてしまうような、そうでは無いような……。
そのまま強烈な引力に屈した私の足は一歩先に踏み出し、激しい痛みと後悔だけが私を支配し……。
なんでこうなったのだろうか。私は駅に向かう道すがら、ずっとそればかりを考えていた。
最近の流行りに乗って投資で資産を作ろうと証券会社に紹介された証券を買って、リスク分散の為に不動産屋に紹介された物件も多額のローンを組んで買った。
順調に利益が出ていたことに満足せず将来のためだと、今度は為替に手を出そうかと思っていた矢先、歴史的な経済ショックが起こり手元の証券は全て紙屑と化した。
手痛い損失を出したが、まだ買った物件の家賃収入で賄えると安堵していたところに、保守点検で発覚した不具合によって多額の修繕費が必要になりローンの返済は滞り始める。悪いことは続くもので住民の火事によって私の物件は事故物件となり借り手が減少し、ローンが全く返せなくなった。
毎月の赤字で資産は無くなり、担保にしていた物件は取り上げられ多額のローンだけが残った私に妻は離婚を突き付ける。妻や子供達の事を考えれば離婚届に印を押すしかなかった。
そして今、弁護士に相談するために駅の改札を通る。うつ向いて歩いている私はいつの間にかホームに立って電車を待っていた。あとどのくらいで電車がやって来るのか。電光掲示板を見るとすぐに来るようだ。
待っていると後悔ばかりが頭に浮かんでくる。あのときああしていれば、こうしていればなんて、どうにもならない事を考える自分に嫌気が差していた。
ホームから電車が来る方向をボーッと見ているとヘッドライトが見えた。どんどんとホームへと侵入してくる先頭車両を見ていると、その姿に強烈な引力を感じた。抗わなくてはと思ってもその誘惑はどんどんと強くなっていく。
どんどんと、どんどんと、強く、強くなっていくそれに私の意識は塗り替えられてしまうような、そうでは無いような……。
そのまま強烈な引力に屈した私の足は一歩先に踏み出し、激しい痛みと後悔だけが私を支配し……。
なんでこうなったのだろうか。私は駅に向かう道すがら、ずっとそればかりを考えていた。
最近の流行りに乗って投資で資産を作ろうと証券会社に紹介された証券を買って、リスク分散の為に不動産屋に紹介された物件も多額のローンを組んで買った。
順調に利益が出ていたことに満足せず将来のためだと、今度は為替に手を出そうかと思っていた矢先、歴史的な経済ショックが起こり手元の証券は全て紙屑と化した。
手痛い損失を出したが、まだ買った物件の家賃収入で賄えると安堵していたところに、保守点検で発覚した不具合によって多額の修繕費が必要になりローンの返済は滞り始める。悪いことは続くもので住民の火事によって私の物件は事故物件となり借り手が減少し、ローンが全く返せなくなった。
毎月の赤字で資産は無くなり、担保にしていた物件は取り上げられ多額のローンだけが残った私に妻は離婚を突き付ける。妻や子供達の事を考えれば離婚届に印を押すしかなかった。
そして今、弁護士に相談するために駅の改札を通る。うつ向いて歩いている私の視界の端に花の刺繍がちらついた。そして、いつの間にかホームに立って電車を待っていた。あとどのくらいで電車がやって来るのか。電光掲示板を見るとすぐに来るようだ。
待っていると後悔ばかりが頭に浮かんでくる。あのときああしていれば、こうしていればなんて、どうにもならない事を考える自分に嫌気が差していた。
ホームから電車が来る方向をボーッと見ているとヘッドライトが見えた。どんどんとホームへと侵入してくる先頭車両を見ていると、その姿に強烈な引力を感じた。抗わなくてはと思ってもその誘惑はどんどんと強くなっていく。
どんどんと、どんどんと、強く、強くなっていくそれに私の意識は塗り替えられてしまうような、そうでは無いような……。
そのまま強烈な引力に屈した私の足は一歩先に踏み出そうとしたところで、スーツの背中をガッと捕まれた。
ハッとして慌てて足を引っ込めると、電車が警笛を鳴らしながら目の前を通過した。それに安堵しながら後ろを見れば、左手で私の背中を掴んだ少女が立っていた。
「大丈夫?」
そう聞いてきた彼女は和装に派手な花の刺繍が入った羽織を羽織って、こちらを眼帯の付いていない左目でじっと見てきた。
「ああ、ありがとう。お陰で無事だよ」
「そう」
そう一言だけ呟いた彼女は、尚もじっと私を見つめる。その目に見つめられている内に私は彼女に全てを話したくなってきた。
今までの私の全てを。
「そうだ、話を聞いてくれないかい?」
「良いよ」
そう言って頷いた彼女は私の手を引き、ホームのベンチに座った。私もその隣に腰を下ろすと彼女の方は見ずに正面を見て話し始める。
投資に失敗したこと、財産を全て失ったこと、家族と別れたこと。その全てを彼女は言葉を挟まずに聞いてくれて、聞き終わると一言。
「頑張ったね」
それだけを言って手を握ってくれた。
私は涙を堪えきれず、みっともなく涙を流しながら、この胸に残る後悔を吐き出していく。家計は安定していたのに欲をかくんじゃなかった、ダメになったときに早く手放しておけばよかった、本当は家族と別れたくはなかった。
大の男が大泣きしながらそんな事を叫んでも、彼女は何も言わずに優しく手を握り続けてくれた。
やがて自分の胸のつかえを全て吐き出し、落ち着いた私は、そこでベンチに座ってから始めて彼女の方を向きお礼を言った。
「もう大丈夫?」
「全て吐き出してすっきりしたから大丈夫だよ。これでもう行ける」
「そう。行ってらっしゃい」
そう言って彼女は私の手を放した。
もうわかっている。私はあの時一歩を踏み出して死んだのだ。それに気づかず、私はどれくらいあの瞬間を繰り返していたのだろうか。
……そんなことは、もういいか。私は次へ行くのだから。
ベンチから立ち上がると、電車がホームへと入って来る。今度はそれに引力など感じることはなくしっかりと立って待つ。私の前を通過した電車が停車し扉が音を立てて開いた。
「……私を救ってくれて、ありがとう」
最後に振り返り私を救ってくれた彼女に礼を言うと、私は光輝くドアの向こうへと一歩踏み出した。
今度の一歩は痛みも後悔も無く、暖かい光に包まれて私の姿は車両へと消えていった。
こういうこともある。
この話のごく一部は私の実体験です。




