表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

神の攻撃

 わたしの前歯にズキンと鋭い痛みが走りました。

 神からの攻撃です。

 わたしは人の形をした悪魔です。常に神の攻撃にさらされています。

 いまは恋人と喫茶店でデートしています。

 炭酸の林檎ジュースを飲んでいましたが、耐えがたい歯痛のせいで、これ以上飲むのは不可能です。

「痛い。前歯が痛いよお」と泣きべそをかきました。

「また痛みかい?」と恋人はうんざりしたように言いました。

 コーヒーをひと口飲み、わたしが涙を流しているのを冷たく眺める恋人。

 先日、初体験を迎えようとしていたとき、あそこに死ぬほどの痛みが走り、拒否して以来、彼は冷たいのです。

 神め。この世界には神も仏もいないのか。

 わたしは生まれついての悪魔です。出生にはわたしに罪はありません。どうしようもない。しかしわたしが悪魔であるというだけで、神は執拗に攻撃してくるのです。

 ああっ、いまものすごい耳鳴りが。うるさいうるさいうるさい。

 わたしの両親はふつうの人間です。なぜか悪魔のわたしが誕生しました。理由はわかりません。

 わたしには悪魔的な特殊能力は何もありません。人を呪い殺すとか、指も触れずに物を破壊するとか、できません。

 能力的にはふつうの人と変わりません。むしろ平均より劣っているぐらい。運動神経は鈍いし、偏差値はやや低いです。

 でも悪魔なの。

 あ、あ、あ、神がまた攻撃してきた。

 お腹が痛い。胃が破れるう。

「胃が痛い。助けて。神がわたしを攻撃してくるの」

「またか。悪いけど、きみの中二病にはつきあいきれない。想像の痛みといつまでも遊んでいてくれ」

「想像の痛みなんかじゃないのーっ!」

「とにかく、痛いとばかり言っている女とはもうつきあえない。別れてほしい」

 恋人は伝票を掴み、立ち上がりました。

 ああ、またフラれるのか。

 そのとき、わたしの脳に、ふいに特殊能力を伝える信号が飛び込んできました。

 わたしには『地球人の男性を瞬時にすべて消せる能力』があるとのことです。

 それを受信したとき、感電死しそうな激痛がわたしの全身を苛みました。

 ビクビクと痙攣してしまいました。

 また神の攻撃です。

 神はわたしを殺すことはできないみたいです。

 痛みを感じさせる攻撃しかできないのです。苦痛集中攻撃を受け、わたしは悶絶寸前……。

『ちきゅうじんのおとこほろべ』とわたしが言えば、地球の男は滅亡します。能力発動の代償として、わたしも死にますが、この痛みから逃れられるのなら、死はむしろ歓迎です。

 だけど、わたしは男の人が好きなのです。惚れっぽくて、すぐに恋に落ちてしまうの。

 男の子、大好き! 滅ぼしたくなんてない。

 同時に、神が創造したすべてのものを憎んでいます。

 男がいなくなれば、生殖できなくなり、人類は早晩滅亡します。

 わたしの美貌に嫉妬して、さまざまな嫌がらせをしてきた女たちなんか、絶望させてやりたい。

 人類、滅ぼしてやろうかな?

 でも男が愛おしい……。

 その葛藤を抱え、痛みと戦いながら、わたしは林檎ジュースが入ったコップを見つめていました。

 彼はもう喫茶店内にはいません……。



 とある喫茶店で若く美しい女性が不審死し、同時に地球上からすべての男性が突如として消滅した後のこと……。


 女性同性愛者の斉藤百合が14歳のとき。

 男性がすべて消えて、地球人類は女性だけになった。

 原因は不明。

 ほとんどの女性が嘆き悲しんだが、百合は内心で歓喜した。


 彼女は幸福な一生を過ごした。

 愛する女性13人とつきあった。

 人類の滅亡は確定しているが、どうでもよかった。

 寿命が来て死神が見えたとき、彼女は自分の人生を全肯定していた……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ