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第95話 元S級ハンター、子どもができる

☆コミカライズ掲載日決定!☆

是非後書きまで見ていってね。

 料理ギルドの計らいもあって、俺とパメラはハネムーンを楽しんだ。


 場所はヴァナハイア王国と、以前王族がリヴァイアサンの被害にあったというワスプ王国の間にあるワイア島だ。


 ここはヴァナハイア王国とワスプ王国が共同で作ったリゾート地で、ハネムーンにおいても1、2を争う人気候補地だ。


 特にデラックスタイプは、高額にもかかわらず予約は2年待ちという超人気のプランでだという。


 何でもそのプランの中にのみ存在するパワースポット体験というものがあり、そのスポットに行くと生涯夫婦円満でいられるそうだ。


 予約が2年待ちではあったが、料理ギルドのコネでそのプランが申し込めることになった。


 俺はスタンダードでも良かったのだが、パメラがこういうのが好きなのだ。


 エルフの森にいた時から、こういうパワースポットだのスピリチュアルだのが好きで、幼い頃森の中を連れ回された覚えがある(どれも取るに足らない噂だったが)。精霊と契約できたのも、それがおかげかもしれない。


 俺としては山でのんびりとしたいところだったが、特にこだわりがあるわけでもなく、パメラがそれでいいならと決めた。


 ただ行ってみると結構楽しいものだ。


 ヴァナハイア王国の文化と、ワスプ王国の文化が見事に融合したリゾート地は意外と目を引くものばかりで、十分楽しめるものだった。


 食べ物もおいしかったし、リルの腹の上ほどではないが、ベッドもふかふかで快適だ。


 リヴァイアサンの時にはできなかった海でも遊ぶこともできた。


 ちなみにだが……。


「ししょー!」


 サーフボードの上で、逆立ちしながらかき氷を食べ、尻尾を振ったのはプリムだった。


 今回は俺とパメラのハネムーンではあるのだが、長期間あの馬鹿弟子を1人宿に残しておくのは、かなりのリスクと考えた。


 となればだ……。


「わぁう!」


 氷で作ったサーフボードに乗っていたのは、神獣アイスドウルフ――リルだった。


 こっちは麦わら帽子に、サングラスという出で立ちでリゾートを満喫していた。


 俺とパメラ、さらにプリムが旅行に行って、相棒を1人残していくような残酷なことはできない。


 周りからは「大事なハネムーン」なのにと言う声があったのだが、結局連れていくことにした。


 ただパメラが反対しなかったのは意外だった。


『いいじゃない? プリムさんもリルもいたら、退屈しなくて済むでしょ』


 訂正。


 冷静になって考えてみると、ちょっと怒ってたような気もする。


 あとで、大きな埋め合わせは必要かもしれないな。


 ただ例のパワースポットだけは、カップルのみが参加できるということで、プリムとリルとはそこで別れた。


 心配といえば、心配なのだが、半日程度ぐらいなら、問題があったとしても被害額的には少なくて済むだろう。


 パワースポットはリゾート地から少し離れたところにある離島だ。地元では「神の島」と呼ばれているそうだが、如何にも胡散臭そうだった。


 小舟に乗り、向かった先は断崖絶壁の孤島。


 その絶望的な急斜面に息を飲む(まあ、プリムとリルであれば問題ないのだが)。


 どうやって上陸するのかと思ったら、絶壁に穴が空いていて、そこから中に入るらしい。


 小舟に乗って、洞窟の中を進むのは俺も初体験だ。


 洞窟の中は真っ暗ではなく、所々穴が空いているため、外の光が差し込んでいる。それが水面で乱反射し、光の帯が天井の方でユラユラと揺れていた。


 神秘的な光景に、俺たちは息を飲む。


「オーロラみたいね」


 パメラは呟いたが、俺も妻も実物のオーロラを見たことがない。


 オーロラは北の方で見られる現象で、氷と光の精霊による争いが引き起こしたものだという学者はいるが、真偽は定かではなかった。


 洞穴を抜けると、そこは砂浜だった。


 綺麗な砂浜だったが、さして他に何もない。


 船頭を除けば、俺とパメラだけだ。


「わぁ……」


 パメラは息を飲んだ。


 俺もぐるりと頭を巡らす。


 砂浜は周囲を全面崖に囲まれていた。砂浜がある場所だけが丸くくりぬかれ、まるで輪菓子(ドーナツ)――――いや、結婚指輪(エンゲージリング)のようだった。


 なるほど。確かに、ここなら人気が出そうだな。


「ゼレット……」


 ビーチサンダルを脱ぎ、素足で砂浜の感触を楽しんでいたパメラがこちらを向く。


 リゾートで買ったサテン生地のロングワンピースが、洞窟の中を通ってきた涼風に靡いていた。


 お洒落にうるさい俺の目から見ても、なかなかの相性だ。


「ん? どうした?」


 同じく現地で買った麻生地の上着を着た俺は振り返る。


 そこには太陽のように微笑んでいたパメラの姿があった。


「来て! 良かったね」


 被った麦わら帽子の端を下に引っ張り、ちょっと気恥ずかしそうな表情を浮かべる。そんな妻を見ながら、俺も「そうだな」と応じるのだった。


 特にトラブルもなく、ハネムーンは無事終わった。


 ハネムーン休暇が終了し、俺はギルドに顔を出す。


「どうでした、ハネムーンは?」


 オリヴィアはいつも通り蜜柑木箱の上に立って、和やかに接客する。


 いつも通りの笑顔に、何か俺の心を見透かすような視線があった。


「ああ。楽しかったよ。ありがとう。パメ――――妻も喜んでいたよ」


「そうですか?」


「これ、お土産だ」


 お洒落なデザインが施された紙袋を渡す。


 中にはチョコレートが入った箱が入っていた。


「わぁ! ワイア島のチョコレート。これ人気があって、なかなかこっちでは手に入らないんですよ」


「色々手配してくれた礼だ。少ないかもしれないが……」


「気を遣わなくてもいいのに。でも、おいしくいただきますね」


「ああ。それと――――」


「あれ? そういえば、パメラさんは来てないんですか? ああ。そうか。随分と宿屋を開けていたから、仕事が溜まってるんですね」


「それもある。――――で、そのことなんだが……」


「ん?」


 俺は1度息を吸い込み、告白した。


「子どもができた……」


 …………。


 …………。


 …………!



「えええええええええええええええ!!」



 オリヴィアの絶叫が響き渡る。


「ちょっと! ちょっと! 何事よぉ! 来客中なんだから、静かにしてオリヴィアちゃん」


 2階の応接室からドタドタと料理ギルドのギルマスが下りてくる。


「あら? ゼレットくぅん! もうハネムーンから帰ってきたの? 楽しかった?」


「それどころじゃないですよ、ギルドマスター?」


「??」


 俺は先ほどの台詞を繰り返すことになる。


「ま~~~~~~~ぁ! おめでとう、ゼレットくぅん! パパになるのね~~」


「おめでとうございます!」


 オリヴィアはパチパチと手を叩く。


 そこに周りで働いていたギルド職員や、ギルドの会員たちまで加わり、大きな拍手の渦に包まれた。


 個人的には大げさだと思うのだが、子どもを生むとはそういうことなのだろう。


 かくいう俺も俺で少し舞い上がっていた。


「パパになるんだから、これから頑張らないとね、ゼレットくぅん」


「ああ。そこで依頼なんだが――――」


 話を切り出そうとしたところで、オリヴィアも、ギルマスも怪訝な表情を浮かべる。


 ん? なんだ? この反応は?


「もしかして、ゼレットくぅん! 働くつもり?」


「は? そりゃそうだろ。これから子どもが生まれるんだから、色々と物入りになるだろうし」


 そもそも宿の狭い部屋で子育ては難しい。店子もいるし、迷惑をかけることも考慮して、どこかに家を建てるか、借りようとも考えている。


 ひとまず一応俺が相続していることになっている師匠の屋敷に移り住もうと考えているが――――。


「そうじゃないでしょ」


「お仕事することも大事かと思いますが、出産や育児も大変です」


「それに『エストローナ』の経営を身重の奥さんに任せるつもり?」


「あっ……」


 確かに……。


 言われてみれば、オリヴィアとギルドマスターの言うことは的を射ていた。


 宿のこともあるが、確かに出産と育児は大変だ。加えて『エストローナ』のことも加われば、パメラの負担は大きくなる。


「だが、その間の収入が……」


「大丈夫ですよ、ゼレットさん」


「だったら、育休を取ればいいのよ」


 ……育休??


☆コミカライズ掲載日決定☆

コミックノヴァサイト 7月30日 17時

ニコニコ漫画     8月1日  11時


以上になります。奥村浅葱先生に描いていただいた大迫力のスカイサーモンを是非ご覧ください。

またその際は、お気に入りなど入れていただけると嬉しいです。

次回の更新ですが、コミックノヴァにて掲載される7月30日の予定です。

8月1日にも更新するので、お楽しみに。よろしくお願いします。

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