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第90話 元S級ハンター、魔王と対峙する

更新遅れてすみません。

 青白い雷光が1万匹のスライムの中で駆け回った。


 激しい音を立てて、今スライムに雷属性の力が注がれる。


 ガンゲルも、集まったハンターたちもそれを見ていることしかできなかった。


 普通、スライムが雷属性を受ければ、そのまま死滅してしまう。


 だが、スライムが集まった状態で雷属性の攻撃を受けると、複数のスライムに伝播するためダメージ自体が半減する。


 1万匹ともなれば、かなり分散されるだろう。


 加えてスライムは奇跡的に学習する。


 ダメージを分散できるなら、このままでいいのではないだろうか……と。


 知能というものがほとんどない魔物は、雷属性の『魔法(ルーン)』を受けて生存本能が刺激されたのか、他のスライムと合体することを望む。


 それはたった1匹だけではなく、すべてのスライムが似た思考となり、ついに群体化が始まった。


 ぬっとまるで大津波のようにせり上がったのは、群体化したスライムである。


 まさに天を衝くような姿に、ハンターたちは逃げ惑った。


 まだ足が動けるものは良い方で、大半がその大きさと見え隠れする死神の鎌の気配におののいていた。


 かくいうガンゲルもその1人である。


「あわ……。あわわわわわわわわわ……」


 顔を真っ青にしながら、鈍い悲鳴を上げる。


 後ろ足を引こうとしたものの、まるで靴裏が地面に貼り付いたように動かず、ガンゲルは体勢を崩して、あっさり尻餅を付いてしまった。


『無様だな、ガンゲル』


 不意に聞き覚えのある声が聞こえて、皮肉にもガンゲルは我に返った。


 辺りを見渡すと、先ほど地面に叩きつけた伝声石(マジックフォン)がすぐ側に落ちていた。


「ゼレット、貴様ぁ!!」


 ガンゲルは伝声石(マジックフォン)に飛びつき、呪詛の言葉を吐き出す。


 伝声石(マジックフォン)がみきみきと音を立てた。


『俺の忠告を無視したお前が悪いんだ』


「黙れ、この魔獣バカ! 一体、どうしてくれるんだ。1万匹のスライムの群体化だぞ。ヴァナハイア王国の軍隊を連れてきたところで、殲滅できるか。いや――――」


 ガンゲルの中で最悪のシナリオが駆け巡る。


 はっきり言って、ガンゲルや他のハンターが束になったところで、この群体化したスライムを倒す事は不可能に近い。


 さらにガンゲルの見立ててでは、ゼレットですらこの事態を打破できないのではないかと考えていた。


 確かにゼレットの【砲剣】は強力極まりない。


 しかし、それはあくまで狙撃力の問題であり、殲滅兵器としてはあまり優秀ではない。


 火属性の『魔法(ルーン)』を使えば、いつか倒せるだろうが、一体何発撃てば倒せるかは、ゼレットでもわからないだろう。


 そもそもゼレットはケチである。


 常に最高級の武器と道具を欲するため金欠であることがほとんどだが、無駄弾を1発も撃たないというのがゼレットのポリシーだ。


 そんな非効率的なことは絶対にしない。


 つまり――このままスライムが放置されている可能性は高く、そうなれば、ここからもっとも近いガンゲルがハンターギルドをやっている街にスライムが襲いかかってくるだろう。


「おい! ゼレット! どうにかしろ! このまま街が全滅するぞ!! いいのか、人死にが出て……」


『良い訳ないだろ。だが、このままではそうなるだろうな』


「じゃあ、なんでスライムに雷属性の『魔法(ルーン)』を与えた。こうなることはわかっていただろう」


『ああ。そうだ。わかっていた。群体化することも、ここの湿地帯に約1万匹のスライムが生まれることもな』


「わかっていただと!!」


 ガンゲルは髪がなくなった頭を抱えた。


「じゃあ、どうするつもりだ! このままでは街が――――」


『静かにしていろ。というか、いい加減そこから逃げたらどうなんだ? 身体を張って仲間の脱出を助けるなんて柄でもないだろう、お前』


「う、うるさい……」


『ししょー。多分、ブ〇は腰が抜けて動けないんだよ』


 馬鹿獣人娘の声が交じる。


『なるほどな。それは災難だったな。まあ、安心しろ』


「何が安心だ! もう黙れ! お前の手を借りずとも、1人で――――」


『誰がお前の臭い手を取るか。お前を助けるのは、お前が嫌いな――――』



 魔物だ……。



「へっ?」


 瞬間、大きな影がガンゲルの頭上を横切っていった。


 空を仰いだガンゲルの瞳に映ったのは、巨大な鳥の異形であった。


 特異な2対の黒羽。


 大蛇が奇声を上げる尾。


 獅子のような鬣がついた顔には、角を生やし、巨大な破城槌のようなクチバシが開くと、何でも飲み込めそうな口内が赤黒く光った。


「ず、ズー……」


 ガンゲルが呟いた言葉は、突然吹いてきた風にかき消された。


 よく見ると、ガンゲルがズーと呼んだ魔物の周りには、分厚い大気の層が確認できる。


 これこそが魔鳥類最強と呼ばれる「ズー」の特徴であった。


 強力な風属性の『魔法(ルーン)』を持ち、小さな街ぐらいなら吹き飛ばすのも造作もない。


 普段は高山の洞穴の中で静かに暮らしている魔物が、こんな人里で確認されたのは、ガンゲルの長いハンター生活においても初めてのことだった。


「なんで? こんな所にズーが……」


 ガンゲルはまたもや呆然と立ち尽くす。


 戦意は感じられず、それはもはや太った案山子にしか見えなかった。


 気が付けば、ガンゲル1人だ。


 他のハンター達はうまく逃げたらしい。


 しかし、どこへ逃げてもそう変わらないだろう。


 巨大スライムに飲み込まれるか、巨大怪鳥についばまれるかの2択なのだから。


 いや、それよりも深刻な事態が起こっていた。


「なんなんだ、これは!」


 呆れを通り超して、怒りがわき上がってくる。


 ズーのランクは「A」だ。


 しかし、ガンゲルはこれほど大きなズーを見たことがない。資料で知る者よりも、一回り、いや二回り大きい。


「まさか固有名を持つ魔物か……」


 種族の中で突出した力を持つ魔物には、固有の名前が与えられている。その場合、ランクは1つ上がる。


「固有名『風の魔王(バズズ)』……。まずいぞ。街どころじゃない。この辺一帯が吹き飛ぶぞ」


 ガンゲルは暴風が吹き荒れる中で、叫ぶのだった。


ちょっとこの後の展開で用意していた話が、

例の熊事件と被ってるところがありまして、一旦お蔵入りということになり、

現在新しい話を書いている所です。

また新作の更新を優先してるところもあって、更新が遅れました。

決してこっちも忘れたわけではないので、引き続きお楽しみいただければ幸いです。


そして、その新作もおかげさまで週間総合1位を達成しました!

読み来ていただいた方ありがとうございます。

どちらも頑張りますので、よろしくお願いします。

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