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第6話 元S級ハンター、2つの力を見せつける

朝のランキングで、ハイファンタジー部門で5位に入りました。

投稿3日でベスト5に入ったのは初めてで、一気に目が覚めました。

ブックマーク、評価、また「ゼロスキル」をお読みの皆様ありがとうございます(T-T)

「はあ……」


 オリヴィアはため息を吐く。


 向けていた緑と赤の葉から俺の方に視線を向けた。


「噂には聞いていましたが、初めてお目にかかりました。『ルーン』の属性を2つ持つ方なんて」


 ルーンとはつまり魔法だ。


 そして魔法にはいくつかの属性が存在する。


 代表的なのが『火』『水』『風』『土』『雷』『金』『闇』『光』といったところだろう。


 そして『魔法(ルーン)』を使える者は、この内の1つしか使えないと、オールドブルの神が俺たち人間を作る時に決めたと言われている。


 しかし、何にでも例外というものは存在する。それが神が仕掛けたものであるとしてもだ。


 俺が持っている属性は2つ。即ち『火』『雷』だ。


 グバガラは吸った魔力の属性によって、葉の色を変える。


 火属性は赤。雷属性は緑という風に、色に現れるのである


 恐らく料理ギルドが試験としてグバガラの実を選んだのは、魔力の大きさとどの属性を持っているか、という点を確認しておきたかったからだろう。


 考えたヤツは、なかなか賢い人間だ。少なくとも目の前のちびっこ受付嬢が、考えたものではないことだけはわかった。


「で……ですが、やりすぎです。ギルドの中ぐちゃぐちゃじゃないですか?」


「俺は忠告したぞ。この場でやるのか、とな。天井に穴が空くことも言った」


「う……。で、でも――――」


「むしろ感謝されてもいいはずだ。料理ギルドに入り込もうとしていた賊を捕まえてやったんだからな」


「え?」


 次の瞬間、シャンと鋭い音が鳴った。


 俺が真下の床を一瞬にして切り抜いた音である。


 穴に落ちる前に、俺はふわりと飛んでその場から離れた。


「一体、いつ斬ったの?」


 パメラが息を呑む横で、俺は顎をしゃくった。


「これを見ろ……」


 料理ギルドに突如できた穴の中にいたのは、グバガラの根に絡まった正体不明の男たちだった。


 如何にも荒事担当と言った男たちの手には、(くわ)鶴嘴(つるはし)が握られている。


「な、何なの? この人たち??」


「恐らくギルドの金庫の中身を狙った強盗だろう」


「ご、強盗??」


 パメラは素っ頓狂な声を響かせる。


 古くさいが、確実に金庫に近づく事ができる方法だ。


 数人がかりで穴を掘り、金庫に近づく。


 『土属性』の魔法があれば、物の数分といったところだろう。


 金庫の中は硬い金属に覆われているが、『火属性』魔法でゆっくり溶かせば、穴を開けることは可能だ。しかも無音で実行できる。


「でも、いくら地中だからって、掘る音が聞こえるんじゃない?」


「それに金庫を開け閉めすることは、結構多いんです。上手くいったとしても、職員と出くわしたりしたら」


 オリヴィアは顔を青くし、震え上がるが、俺はその可能性は低いと首を振った。


「それはない。こいつらの仲間が、逐一所内の情報を伝えていたからな。おそらく魔法を使う際にも、何かパフォーマンスをして、注意を引きつけるつもりだったのだろう。たとえば急に怒鳴り散らすとかな」


 その時だった。


「うおおおおおおおおおおおお!!」


 突然、怒声がはちゃめちゃになったギルドに響く。


 同時に悲鳴が上がった。


 1人の男が先ほど談笑していた婦人に、ナイフを突き付けている。


「あんたは、さっき貧乏揺すりをしていた――――」


 それは待合い室で待っていたハンター崩れだった。


 血走った目を俺に向け、刃の腹を婦人の喉元に当てている。婦人は手を伸ばしながら、喚き散らし「助けて!」と哀願した。


「この人が共犯者?」


 オリヴィアは口元に手を当て、驚く。


「パメラが指摘した貧乏揺すりだが、あれはそういうものじゃない。おそらく符帳だ。床を叩き、魔法で音を増幅させることによって、地中にいる仲間にギルドの状況を逐一知らせていたんだろ」


「てめぇのせいでオレたちの計画が水の泡だ! どう責任とってくれるんだ!! ええ!?」


 ナイフを手から離さず、男は胴間声を上げた。


 しかし、俺の態度がその程度の脅しで変わるわけがない。やれやれと首を振った直後、男に優しく忠告してやる。


「俺のせいじゃない。その穴だらけの強盗計画を立てたヤツの責任だ。逆恨みも甚だしい」


「なにぃ……」


「それ以上、罪を重ねるな。今ならまだ縛り首を回避できるぞ」


「うっっせぇ! 捕まってたまるかよ! 豚箱なんて絶対にご免だ! オレは絶対に逃げおおせてやる!! ちょっと来い!!」


 男は婦人の手を引っ張る。人質を取ったまま連れ去るつもりだ。


「ちょ! 逃げられるわよ、ゼレット」


「やれやれ……。俺は賞金稼ぎ(バウンティーハンター)じゃないんだがな」


 ハンターはハンターだが、ハンター違いだ。人間じゃなくて、魔物――それもSランクの魔物を相手にしたいのだが……。


 俺はおもむろに歩き出し、男の方に近づいていった。


「てめぇ! このババアがどうなってもいいのか?」


 男はナイフをさらに婦人の喉元に押し込む。


 小さく皮膚を裂いたらしく、赤い血がナイフを伝った。


「やめて! 近づかないでよ! 私が殺されてもいいの!?」


 婦人が悲鳴を上げるが、そのすべての訴えを無視し、俺はさらに距離を詰めた。


「心配しなくてもお前は殺されない。いや、殺せないんだ。だって――――」



 お前も、仲間だろ?



「「え?」」


 パメラとオリヴィアの声が重なる。


 その瞬間、動いたのだ――婦人が。


 袖の下から携帯用の魔力増幅器(スタッフ)を取り出す。


 指揮棒に似た形の増幅器を、俺の方に向けた。


「なんだい、バレてたのかい?」


 【炎術槍(ファイヤランス)】!


 炎属性系の魔法を呪唱すると、魔力増幅器(スタッフ)の先から炎が逆巻く。


 それも1つではない。


 3つだ。


 もう2つは婦人と一緒に談笑し、俺の真横で様子を窺っていた女たちからだった。


「黒炭になっちまいな!!」


 婦人は叫び、魔力増幅器(スタッフ)の先から炎が飛び出す。


 ――――かに見えた。


 ポシュッ!


 間抜けな音が、グバガラの樹に囲まれたギルドに響く。


 魔力増幅器(スタッフ)から噴出した炎が、いくらかの距離も飛ばないうちに消えてしまう。それも3つ同時にだ。


「やれやれ……」


 皆が呆然とする中、俺は肩を竦めた。


「ここは成熟したグバガラの樹の根本だ。それぐらいの魔力なら、一瞬で吸い取ってしまうぞ。まさかそんなことも知らずに、魔法を起動したのか?」


「ば、バカにしやがって! あんただって、見たところ魔法(ルーン)使いだろ!!」


 婦人は立派に生い茂った魔樹を見ながら、ニヤリと笑い、続ける。


「魔法が使えなければ、恐るるに足らないわよ! あんた、やっちまいな!!」


 俄然勢いづいたのは先ほどの男だ。


 料理ギルドに飾ってあった大きな肉切り包丁を握る。複数人の大人で、大型の鯨を切る時に使うような包丁だ。


 男はそれを軽々と持ち上げると、切っ先を俺の方に向けて構えた。


 体格はあっちの方が上。筋力も向こうが上だ。


 おまけに武器の扱いには、慣れているらしい。構えがそれなりに堂に入っている。一応武芸を囓ってますといった感じではある。


 何より――――。


 男は肉切り包丁を振る。


戦技(スキル)――――」



 【斬館斬り】!



 斬圧がギルドの内壁を切り裂いた。

 幸い建物が崩れることはなかったが、大きな亀裂が壁を走る。


「ほう……。戦技(スキル)使い(マスター)か……」


 『戦技(スキル)』とは、いわば『魔法(ルーン)』の対極の位置にある奇跡である。


 魔法が魔力を体外で放出する一方、戦技は体内で魔力を練り上げ、発露させる。


 つまり魔力によって自己を改造し、己の潜在能力以上の力を引き出す能力(ちから)のことを差し示す。


 そして人間にはどちらかの奇跡しか宿らない。


 つまり『魔法(ルーン)使い』か『戦技(スキル)使い』か。


 いずれかの奇跡使いにしかなり得ないように、この世界は成り立っている。


 『戦技(スキル)』は体内で魔力を消費するため、グバガラの樹の影響を受けない。本人の魔力が尽きない限りは、使いたい放題だ。


「ゼレットさん!」


 オリヴィアの悲鳴じみた声が響き、受付から飛び出そうとする。


 だが、それを制したのはパメラだった。


「大丈夫よ、オリヴィア」


「でも、ゼレットさんは魔法(ルーン)使いじゃ。今、グバガラの樹のせいで魔力を放出できないんですよね? どう考えても不利ですよ」


「大丈夫。心配ないわ。ゼレットはS級ハンターなのよ」


 2人が後ろで話す中、俺は男の前に立ちはだかる。


 1歩も動かない俺を見て、戦技使いの男はニヤリと笑った。


「オレの戦技(スキル)を見て、逃げ出さないのは見上げた根性だ。それともブルッちまって1歩も動けないのかなあ?」


「ふっ――――」


 俺は鼻で笑う。


「何がおかしい」


「今の戦技……。本来なら建物ごと真っ二つにできる戦技だろう。グバガラの樹の影響下にあるとはいえ、鍛錬が足りてないんじゃないか? それに魔力の練り込みも十分とはいえない。そんな未熟者をどう恐がれというのだ」


「貴様!!」


「事実だろ? お前が本物の戦技(スキル)使い(マスター)というなら、最初から料理ギルドを強硬に襲撃していたはずだ。その方がよっぽど楽だし、回りくどくもない。お前は、周りの仲間から自分で思う程、頼りにされていないんだよ」


「ふ、ふざけんな!! 変な黒ローブを着やがって! ぶっ殺――――!!」


 男が大きく振りかぶる。


 が、その時すでに俺は間合いに飛び込んでいた。


 わずかに雷精を帯びながら。


「は、速い!!」


「訂正しろ……」


「はっ?」



 戦技(スキル)――――【陰鋭雷斬(シャドーボルト)】!



挿絵(By みてみん)



 黒ローブから一振りの曲剣を取り出す。

 勢いそのままに俺は、男の巨体に向かって振り抜いた。

 ジャンッ! と雷が轟いたような音が響く。


 その瞬間、斬撃と雷が男に交互に襲いかかった。


「ギャアアアアアアアアアアアアア!!」


 悲鳴がギルドに響く。


 勝負あった。


 俺は曲剣を隠すようにローブの中に、すぐにしまう。チンッと鞘に収まった音が響いた後、立っていた男はついにくずれおちた。


 有り難く思え。一応半殺し程度に力を抑えておいた。

 俺が殺したいのは、魔物であって、人じゃないしな。


 後、お前に1つ言っておくことがある。


「変なローブじゃない。これは俺のお洒落だ……」


 やや曲がったローブの襟を正すのだった。


こうなったら、日間総合ベスト5を目指したいのですが、現在総合では26位です(険しすぎる!!)

ハイファンタジー部門で1位、2位ぐらいとらないと難しそうです。

なので、引き続き更新してもまいりますので、

気に入っていただけましたら、ブックマークと広告下の☆☆☆☆☆の評価をいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

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