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第52話 元S級ハンター、幻の魔物の居所を突き止める

 ◆◇◆◇ パメラ 視点 ◇◆◇◆



「リル! リル!! しっかりして!」


 私はリルの毛を掴み、言葉をかけるけど、無反応だった。


 ゼレットの声にしか反応しないのか。それともスターダストオークスに操られていて、私の声が届かないのか、わからない。


 ともかくリルは時折立ち止まっては走り出し、走っては止まってを繰り返す。明らかに今までのリルにはなかった行動だ。


「こうなったら……!」


 私は覚悟を決める。


「キュール! 付いてきてる?」


『きゅるる!』


 ポンと私の前にキュールは現れた。良かった。私の声に応えてくれた。おそらくキュールはスターダストオークスの支配化にはない。


 精霊だから……? まあ、そういう考察はゼレットに任せよう。


「リルを止めて! 何かおかしいの!」


『きゅるる!』


 勇ましい声を上げて、キュールはリルの背中から飛び出した。


 近くにあった樹木に取り付くと、枝葉を伸ばしてリルを通せんぼする。


『きゅぅぅぅうるぅぅうう!』


 行かせないぞ、とばかりにキュールは猛る。


 けれど、リルも負けていない。枝葉の間を軽くすり抜ける。リルを追いかけようと、キュールはさらに枝葉を伸ばしたが、どうやらリルの方が1枚上手のようだ。


 さすがはリル……。神獣ってだけじゃなくて、ゼレットと一緒に修羅場をくぐり抜けているだけはある。


 経験値の低い私とキュールじゃ止められない。


「うにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!!」


 と今度は後ろから猛烈な勢いで、リルと私たちを追跡する影があった。


「プリムさん!」


 砂埃を巻き上げながら、追いかけてくる騎士団の皆さんや魔物を追い越し、さらに加速する。


 その目は爛々と輝き、口元に相変わらず涎を垂らしていた。まさに飢えた狼ならぬ、飢えた猫だわ。


「お肉、待てぇえぇえぇえぇえぇえ!!」


 操られても言ってることが、普段と変わらないところに安心感を覚える私は変だろうか。


 プリムさんは猛烈な勢いで迫ってくる。リルも全速力というわけじゃないと思うけど、必死に走っているように見えた。


 だが、プリムさんの方が早い。


「キュール!! 目標変更! プリムさんを止めて」


『きゅ! きゅるる!!』


 キュールは近くの枝葉を操作する。


 私たちの背後にバリケードを作った。


 すごい! キュールってこんなこともできるんだ。


 けど――――。


「お肉ぅぅぅぅうううううう!!」


 プリムさんは、何重にも撒いた枝葉のバリケードをものともしない。体当たりで簡単に壊してしまうと、私たちに迫った。


「キャアアアアアアアアアア!!」


 ゼレット!!


 私は心の中で叫ぶ。


 その時、リルが大きく傾いた。馬のように後ろ肢を跳ね上げ、迫ってきたプリムさんを突き飛ばした。


 あれよという間に、再びプリムさんは後方へと吹き飛ばされる。


 1発の砲弾となって、さらに後ろにいた魔物や騎士団の皆さんにヒットした。思わず「お見事!」と私は手を叩く。


 同時に気付いた。


「もしかして、リルは私を守ってくれたの。リルは最初から操られてない?」


『ワァウ??』


 何を言ってるの? リルは首を傾げる。


 どうやら私の心配は杞憂だったらしい。


 そうだ。リルはゼレットの友達だ。


 私はゼレットを信じると言った。だから、ゼレットが信じるリルも信じてあげなくちゃいけなかったんだ。


「ごめんね、リル」


 私はモフモフの毛を撫でる。顎の辺りを掻いてやると、「あー、そこそこ」という感じでリルは目を細めた。


 すると、ピクピクと耳を動かす。


 その動きに違和感を覚えた私は思い出す。そう言えば、リルは立ち止まる時、頻りに耳を動かしていたような気がする。


 何かの音を聞いているような……。


 スターダストオークスの足音? それとも背後に迫る魔物や騎士団の? それとも……。


「そうか。リル――あなた、ゼレットの声を聞いているのね?」


『ワァウ!』


 そうだ、とばかりにリルは反応する。


 なるほど。リルを誘導していたのは――――。



 ◆◇◆◇ ゼレット 視点 ◇◆◇◆



「よし。いいぞ、リル。そのまま東に走れ」


 俺は広いエトワフの森林の中にある小高い丘の上にいた。


 コートを脱ぎ、その中に隠れるように腹ばいになり、砲剣の遠眼鏡で森を行くリルを誘導している。


 基本的に影の中にいれば、スターダストオークスに見つかることはない。いや、反応そのものできないはずだ。


 音を拾うこともできないから、俺とリルが声でやりとりをしていることにも気付かない。一方でリルは鼻もよく利くが、耳もいい。


 集中すれば、このエトワフの森全体の音を聞き分けることも可能だ。そんなスーパー神獣が、俺の言葉を聞き逃すはずがない。


 獲物の特性を理解してしまえば、どうということはない。


 そして、いよいよ俺はスターダストオークスの本体に(ヽヽヽ)照準を向けようとしていた。


「悪いな、スターダストオークス……」



 チェックメイトだ……。



 ついにリルとパメラは、スターダストオークスの本体がいる場所に辿り着く。


 その瞬間、リルたちを追いかけていた魔物たちが一斉にその動きを止めるのだった。


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