第42話 オープニング
第二部開幕です!
再びアストワリ家に、多くの人の姿があった。
その数は前回――リヴァイアサンの卵で作ったスフレオムレツの時を超えている。
相変わらず人種は多様で、テーブルに座ってられないらしく、皆が立って談笑し、前回の感想や、今回出てくる料理について話を咲かせていた。
いずれにせよ、待ち遠しくてたまらないといった様子だ。
それもそのはず。
今回出てくる料理は幻の料理といわれるほど、貴重な食材を使った料理だからである。
魔物食が貴族の間で流行をはじめて、3年の月日が経過しようとしているが、その料理――いや、その料理に使われる食材は誰も入手できないと言われていた。
おかげで、料理ギルドに依頼されたのは、かなりの初期でありながら、ずっと依頼リストの片隅に残り続けていたのである。
そんな曰く付き――いや、魔物食を愛するものたちにとって、待ちに待った料理に、皆が心を弾ませるのは致し方ないことだろう。
そんな逸る気持ちに冷水を浴びせるが如く、場内は暗転した。
前回が野外だったのに対して、今回屋敷内にある大ホールで行われたのは、今日の野外がやや肌寒かったからだ。
そして、今日の料理はそんな寒い日にぴったりな料理であった。
場内が暗転しても、集まった参加者のボルテージは下がらない。
むしろ期待するような声を上げて、前を見る。
魔法の光源に当たったラフィナが、煌びやかなラメが入った青のドレスを着て現れた。挨拶もそこそこに食事会の開幕を告げ、そして参加者たちの期待に応えるように、宣言していた料理を早速出してくる。
銀蓋を載せた皿を持った給仕たちが次々と場内に入ってくると、それぞれのテーブルへと置いて行った。
それまで立って待っていた参加者たちは、慌てて自分の席に戻ると、目の前に置かれた皿をうっとりと眺める。
参加していた子どもの1人が、ほんの少し銀蓋を上げた。
途端、失神しそうなほど濃厚な香りが場内を包む。
たまらず開けようとした子どもの手の甲に、そっと手を置いたのはラフィナだった。
女神のような微笑を浮かべた貴族令嬢は、子どもを見て叱り付けるわけではなく、軽くウィンクをして、「1」「2」「3」と一緒にカウントアップを始める。
「10!!」
と告げられた時、一斉に銀蓋が開かれ、白い湯気がふわりと浮き上がった。
「これが幻といわれた料理ですわ」
瞬間、参加者がその料理に酔いしれるのであった。
たくさんのアイディアありがとうございます! 参考にさせていただきますね。
夜にも投稿予定です。よろしくお願いします。