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第20話 元S級ハンター、挑戦を受ける

レビューいただきました!

ご期待に添えることができるかわかりませんが、

頑張ります!

 公爵家の庭に入ってから10分後。


 俺たちはお城といっても差し支えない巨大な屋敷を、目撃することになる。


 鮮やかな青の屋根に、白亜の壁。城壁といったものはないが、屋敷は東西南北に広がり、一見するだけでその広さが頭の中に思い浮かぶ。


 中はきっと迷宮みたいになっているのだろう。


 考えるだけで、ゾッとする。


 その玄関口で俺たちを歓待したのは、豊かな黒髪を2つに結んだご令嬢だった。


 色鮮やかなドレスでお出迎え、とまではいかない。露出の少ない軽装を身に纏い、側には矢筒が置かれていた。


 まるで今からハイキングにでも、出かけようかというような出で立ちである。


「ようこそお出で下さりました、ゼレット様。わたくし、ラフィナ・ザード・アストワリと申します。以後、お見知りおきを……」


 少女は情熱的な赤いドレス――ではなく、しっかりした絹地のパンツの裾を掴み、まるで社交界でダンスを誘うが如く、俺に頭を下げた。


 威圧するわけでも、その知性を見せびらかすこともない。


 明るい青の瞳は子どものように純真に輝き、その白い肌もまた眩い。まだまだあどけなさは残る小顔に、やや正対するような大きな胸は軽装に身を包んでいてもはっきりとわかった。


「どうかされましたか?」


「あ……。いや――――」


 俺は反射的に目をそらす。


 驚いた。この俺が、見惚れてしまうとはな。


 スタイル、漂ってくる気品は、どれも一級品だ。しかも、俺の見立ててではまだ彼女は原石に近い。たぶん、これからさらに綺麗になるだろう。


「失礼した。ゼレット・ヴィンターだ。こっちは、弟子のプリム。飼い狼のリルだ」


「よろしくね、お姉さん!」

『ワァウ!』


 プリムとリルは気さくに挨拶する。


 師匠であり、飼い主でもある俺がちょっと緊張しているのに、相変わらず能天気なヤツらである。


「ご無沙汰してます、ラフィナ様」


「久しぶりですね、オリヴィア。ギルドの皆様はお元気ですか?」


 ラフィナは自ら手を差しだし、オリヴィアの手を取る。こんな時でも、貴族くささはない。旧知の友達に出会ったかのように、自然な笑顔をパッと開いた。


 どうやら、ラフィナ嬢は俺が知る貴族とは少し違うようだ。


「さて、早速屋敷にご案内するところですが、少しわたくしの戯れに付き合っていただけないでしょうか?」


「戯れ?」


 俺は怪訝な表情を浮かべると、ラフィナ嬢は側付きから差し出された弓を取る。


「本日、ゼレット様と少しお話をさせていただいた後、ささやかではありますが、パーティーを催したいと考えております」


「ラフィナ様、私は何も……」


「はい。だから、今言いました。ただわたくしの思いつきで決まったので、肝心の食材をご用意できておりません。これから獲りに参るのですが、是非ゼレット様にもご同行いただけないかと」


 ラフィナは俺に挑戦的な視線を向ける。


 さっきまでの淑女然とした顔はすっかりなりをひそめていた。巧妙に隠していたのだろう。おそらくこれが、ラフィナ本来の素顔なのだ。


 おそらく、これは試験である。


 俺の実力を試すためのな。その点数を付けたがる理由はわからないが、彼女なりに何か目的でもあるのだろう。


 例えば、俺がSランクの魔物を狩るに値するか否か、とか。


 少々自分の願望が過ぎる予見だが、当たらずとも遠からずといったところだろう。


「気が乗りませんか、ゼレット様。そうですね。所詮は子どもの遊びです。では、こうしましょう。実は、この広大な庭にも数は少ないですが、魔物が棲みついております」


「ええ?? 公爵家のお庭に、魔物が? 本当ですか、ラフィナ様」


「本当だ」


 肯定したのは俺である。すかさずリルの耳を指差した。


 頻りに耳が動いている。こういう時、リルは魔物の居場所を察知している証拠なのだ。どうせ雑魚だろうが、近くにいることは間違いないようである。


「その中で、わたくしが獲ってくる魔物よりギルドランクが高い魔物を捕まえてくることができれば――――」



 Sランクの魔物の討伐依頼を、わたくしが出すというのは如何でしょうか?



「――――乗った!」


「即答ですね」


 ラフィナは微笑む。


「当たり前だ」


「そう言われて引き下がったら、ゼレットさんじゃないですからね」


 オリヴィアもまた苦笑を浮かべる。


「では、あなたが負けた場合、わたくしの言うことを何でも聞いてくれますか?」


「な、なんでも? ラフィナ様、それはいくらなんでも……」


「かまわん」


「ちょ! ゼレットさん?」


 オリヴィアは俺を止めようとするが、すでにラフィナが薄く笑った後でだった。


「男に二言はございませんね?」


「もちろんだ。お嬢さまも後で無理でしたなんていうなよ」


「心得ております」


「じゃあ、ボクもやる!!」


 はいはい、とプリムも手を上げた。


「構いません。遊びは大勢でやる方が楽しいですから」


「えっと……。じゃあ、わたしはここで待つことにします」


『ふぁ~』


 オリヴィアは待機することを決める一方、リルは大きな欠伸をする。そのままペタリとお腹を付けてしまった。思ったよりも不慣れな馬車移動がきつかったようだ。


「制限時間は2時間ほど。ランクが同点だった場合は如何なさいますか?」


「その時はお嬢さまの勝ちでいい。こっちはプロだからな。ちょうどいいハンデだろう」


 一瞬、ラフィナは酷薄な笑みを浮かべたことに、俺は気付かなかった。


「わかりました。では――――」



 狩猟開始!!


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